債務整理

2019/03/28

出来高払いってどういう制度?消費税の増税に関する対応は?

はじめに

建設業では出来高払いという特殊な報酬の支払い方法が採用されていますが、それでもその他の業種と同様に消費税の支払いがあります。ただ消費税の支払いについても少し特殊な部分があり、建設業では仮払いの消費税を支払ったとする課税仕入れの時期というものが存在します。今年の10月には消費税が8%から10%に増税されることもあるので、改めて消費税の支払い方法については確認しておく必要があるでしょう。

この記事では建設業における消費税の支払い方法とともに、出来高払いの支払い方法について解説します。記事の後半では消費税の増税に関する経過措置についても紹介しているので、消費税の増税前後で工事が継続する方はそちらも併せて参考にしてください。

 

1.出来高払いの概要

建設業に関わる方であれば出来高払いについてご存知の方も多いと思いますが、大まかな内容だけひとまず確認しておきます。

建設業ではその他の業種とは違い仕事に着手してから完了するまでにかなりの時間を要し、仕事が完了した後に報酬を全額支払うような形式だと、下請け会社の資金繰りが破綻することにもなりかねません。そのため建設業では工事の完成状況に応じて報酬を部分的に支払う出来高払いが主流となっています。

本来であれば「工事進行基準」による出来高払いが会計的には正しい処理なのですが、これは「工事の進捗度合いを一定の基準で数値化し、さらにそれに見合った原価を適正に把握すること」を目的とするものです。つまり工事の現場の進捗状況において正しい収益がどの程度あるかを認識することで、工事期間中でも正しい損益の数値を把握することに役立てるべきものと言えます。

ただ慢性的に会計を専門とする従業員が不足する建設業界では、「工事完成基準」により出来高払いを実施する会社が多いのが現状です。この工事完成基準とは「現状着手している建造物の完成した部分の度合いによって出来高を換算すること」であり、両者の間には明らかな違いがあります。

工事進行基準の場合では工事の進捗状況を数値化することで適正な原価を把握するのに役立てる一方で、工事完成基準では工事の完成した度合いを視覚的に把握して報酬を請求しているため正しい原価がいくらであるのかを細かく把握することは難しいと言えます。そのため誤った基準によって出来高払いをされている建設会社の多くが適正な原価を把握できておらず、場合によっては工事の収益が赤字になってしまうリスクさえはらんでいます。

また出来高払いで受け取った報酬そのものは工事収益ではなく、実は未完成工事受入金を前払いで受け取っているという事実もあまり周知されていません。そのため建設会社の多くが会計処理を間違っていることになり、厳密には出来高払いで受け取ったお金を前受金として計上しておき、工事が完成した時点で改めて売上金として計上するのが正しい方法となります。

出来高払いについては会計専門の従業員が不足しているために現場の作業員が兼任していることも多く、間違った方法であっても現場ではこの方法がまかり通っているのが現状です。出来高払いについて大まかな内容を確認したところで、次章では建設業における消費税の支払い方法について解説していきます。

 

2.建設業における消費税の支払い方法とは

建設業では仕事の報酬の支払い方法も特殊ですが、消費税の支払いについても少し特殊なものがあります。この章では冒頭でも触れた課税仕入れの時期について解説していきます。

2-1.未成工事支出金

未成工事支出金とは販売を目的とする建築物などに対する支出のうち、未完成でかつ棚卸資産となる前段階の状態のものを指します。未成工事支出金については以下のような取り扱いが求められます。

・棚卸資産である建築物の完成までに引き渡しあるいは役務の提供が完了している部分については、その度に課税仕入れすることができる

・棚卸資産である建築物の完成までに引き渡しあるいは役務の提供が完了している部分も含め、継続適用を要件にする場合に限りまとめて課税仕入れすることもできる

引き渡しあるいは役務の提供が完了している部分についてはその都度課税仕入れすることも可能ですが、建築物が完成した時点でまとめて課税仕入れすることもできます。ただしその場合には継続適用が要件となるため、以降の全ての建築物について完成時にまとめて課税仕入れとすることを徹底しなければなりません。

2-2.建設仮勘定

自社で使用する固定資産の取得にかかった支出について未完成でありかつ本勘定となる前のもののことを建設仮勘定と言います。この建設仮勘定については以下のような取り扱いが求められます。

・設計料などの固定資産の引き渡しあるいは役務の提供が完了している部分については、その度に課税仕入れすることができる

・設計料などの固定資産の引き渡しあるいは役務の提供が完了している部分も含め、建築物の完成引き渡し時にまとめて課税仕入れすることもできる

これは未成工事支出金の場合と同様ですが、引き渡しあるいは役務の提供が完了している部分をその度に課税仕入れすることもできますし、建築物が完成した時点でまとめて課税仕入れとすることもできます。ただし手付金や中間金は建築物が完成しない限り課税仕入れとすることはできないので、その点は注意が必要です。

2-3.出来高検収書

建設業では元請け会社が下請け会社に建設工事を依頼し、工事の出来高に応じて報酬を支払うことがよくあります。その際には出来高検収書に出来高の内容とその金額を記載して発行し、その書類とともに報酬を支払うことになります。こうした出来高払いについては工事の完成にかかわらず、元請け会社は出来高部分の報酬を支払う度に支払いを済ませた金額について課税仕入れとすることができます。

報酬を受け取る側である下請け会社については出来高払いを受ける都度課税売上として計上する必要はなく、工事完成後にまとめて課税売上にすればそれで問題ありません。

建設業では消費税の支払い方法にも若干のクセがありますが、課税仕入れをするタイミングさえ心得ていれば会計的な処理についてはそれほど難しいものではありません。課税仕入れのタイミングについては自社で処理しやすい方法を選択するようにして、仕事を溜め込まないうちにこまめに業務をこなしていくことをおすすめします。

 

 

3.消費税の増税に関する経過措置とは

今年の10月にはいよいよ消費税が8%から10%へと引き上げられることになっていますが、建設会社の中には増税が予定されている10月前後にまたがって工事を受注しているところもあるかと思います。そうした場合には増税前か増税後、どちらの税率を適用するべき恐らく気がかりなはずです。

この記事では国税庁消費税室が発行した「平成 31 年(2019 年)10 月1日以後に行われる資産の譲渡等に 適用される消費税率等に関する経過措置の取扱いQ&A 【具体的事例編】」の内容を引用しながら、建設業における増税前後での対応について最後に紹介しておきます。

3-1.建設工事での適用税率

「平成 31 年(2019 年)10 月1日以後に行われる資産の譲渡等に 適用される消費税率等に関する経過措置の取扱いQ&A 【具体的事例編】」の問3において、建設工事などの適用税率に関する設問があります。この設問では「部分完成基準による資産の譲渡等の時期の特例」が適用される場合を想定し、部分完成基準が適用される建設工事での適用税率について尋ねています。

この場合では部分引き渡しの時期によって税率が変動するのかを問うている訳ですが、答えとしては平成31年9月30日までは税率8%を、平成31年10月1日からは税率10%を適用するようにと回答されています。10月前後で工事がまたがっておりなおかつ部分引き渡しをする場合には、9月末までが旧税率で10月1日以降は新税率で課税するように注意しておけばいいでしょう。

3-2.未成工事支出金として計上した場合の適用税率

また問5では未成工事支出金として平成31年9月30日までに計上した課税仕入れを、平成31年10月1日以降に工事の完成日が属する場合には旧税率である8%で仕入税額控除を計算するかどうかを尋ねています。

この場合の回答としては、税率8%の時期に未成工事支出金としていったん課税仕入れした工事については、平成31年10月1日以降であっても旧税率のまま仕入税額控除の計算をすることになります。ただしこれは継続適用を要件とするためその点だけ注意が必要ではあります。

3-3.建設仮勘定として計上した場合の適用税率

同じく問6では建設仮勘定として平成31年9月30日までに計上した課税仕入れを、平成31年10月1日以降に工事の完成日が属する場合には旧税率を仕入税額控除の計算に適用していいかどうかを尋ねています。

この場合についても問5の回答同様に、税率8%の時期に建設仮勘定として計上した場合であれば、新税率に変わる10月以降であっても仕入税額控除を旧税率である8%のまま計算することになります。

3-4.出来高検収書の仕入税額控除の適用税率

問8では平成31年9月30日までに出来高検収書を発行して工事代金を支払い仕入税額控除の計算をする場合を想定しており、9月の課税期間に係る消費税の申告については変更前ということで8%の税率を適用して計算する予定であることが明言されています。ただし下請け会社から建築物の引き渡しを受けるのは平成31年10月1日以降を予定しているため、工事代金そのものは新税率で計算を済ませてあるとのことです。こうした場合には2%の税率の差をどのように処理するべきかと尋ねる設問です。

この場合では次回の課税期間に係る消費税の申告時に、旧税率を適用して仕入税額控除を計算したという名目で仕入対価の返還を受けたものとしていったん処理してしまいます。それから新税率である10%を適用して改めて仕入税額控除をするようにという回答になっていました。未成工事支出金や建設仮勘定の場合と対応が異なるため、出来高検収書について混同しないよう区別して覚えておきましょう。

 

 

4.それ以外の場合の経過措置とは

上記では国税庁消費税室が発行した資料を元に、消費税の経過措置について具体的に解説しました。ただ前章の内容にも該当しない工事を請け負っている会社というのも少なからずあるはずです。

この章では最後に、それ以外の場合における消費税増税の経過措置について確認しておきます。

4-1.請負工事に関する経過措置の概要

ここで具体例とともに消費税の増税に関する対応を確認する前に、請負工事に関する経過措置について先に確認しておきましょう。

「請負工事等に係る経過措置

平成25年10月1日から平成31年(2019年)3月31日までの間に締結した工事(製造を含みます。)に係る請負契約(一定の要件に該当する測量、設計及びソフトウエアの開発等に係る請負契約を含みます。)に基づき、平成31年(2019年)10月1日以後に課税資産の譲渡等を行う場合における、当該課税資産の譲渡等」

抜粋した内容からも分かる通り、2019年3月31日以前に請け負った工事の場合では、完成後の引き渡し予定日が10月1日以降であっても消費税は8%が適用されることになります。また消費税の適用税率については経過要件を満たしている時点で、旧税率が強制的に適用されます。8%か10%のいずれかを選択できる訳ではないので、その点は注意が必要です。

そして今回の消費税増税に関する経過措置は請負工事についてのみ適用されます。分譲マンションの購入や建売住宅の購入などには適用されないことを念頭に置きましょう。

4-2.後から追加工事が発生した場合

本契約自体は経過期間内に締結されたものの、後から追加工事が発生した場合の適用税率はどうなるのでしょうか。

例えば本工事の契約が2019年3月30日に完了したにもかかわらず、後から追加工事の契約を5月30日に交わしたと想定しましょう。また工事完成後の引き渡し予定日は10月30日に設定されていたとします。

この場合では本契約分の工事についてのみ経過要件を満たしており、追加工事分については要件を満たさないことが分かります。よって本工事分の消費税として8%、追加工事分の消費税として10%が適用されることになります。

4-3.消費税増税前に工事に着工しなかった場合

工事の契約自体は3月31日以前に締結していたとしても、着工時期が増税後の10月1日にあらかじめ設定されている場合の適用税率はどうなるのでしょうか。

例えば工事契約を3月30日、工事着工日が10月30日、完成後の引き渡しが12月20日に予定されていると想定しましょう。この場合の適用税率について知るためには、まず増税の経過措置の要件を改めて確認しておく必要があります。今回の経過措置では請負工事の契約を2019年3月31日までに済ませてあること、また完成後の引き渡し予定日が10月1日以降であることという二つの条件が揃うことで、その請負工事の適用税率は旧税率の8%が適用されることになっています。

つまり着工時期に関する要件がそもそも存在しないため、工事の契約日と引き渡し予定日に関する要件さえ満たしていれば、適用税率は8%になることが分かります。

4-4.請負工事の契約書がない場合

請負工事の契約を交わす際には基本的にその詳細を記した契約書を用意するものですが、仮に請負工事の契約書自体をそもそも渡されていない場合の適用税率はどうなるのでしょうか。

消費税増税の経過措置を受けるためには、工事の契約日と引き渡し予定日の二つの要件さえ満たしていればまず問題ありません。ただし請負工事の内容が経過要件を満たすことを確認するためにも、その内容を証明するような書類が必要になります。契約書のような書類が一切ない場合には要件を満たしていても経過措置が受けられなくなるため、そうした場合には契約内容が分かる書類を自ら作成する必要が出てきます。

4-5.建築後に注文を受けて販売する場合

分譲マンションや建売住宅の購入に関しては増税の経過措置が受けられないことになっていますが、建築後に注文を受けて販売する場合の適用税率はどうなるのでしょうか。

例えば新築の建売住宅(一戸建て)に対して模様替えの依頼を2019年3月3日に受けたとして、住宅の売買契約自体も3月30日に済ませていたとしましょう。また完成後の引き渡し予定日が10月30日に設定されていたとします。

この場合では以下の条件を全て満たすかどうかで、適用税率が旧税率のままであるかどうかが決定されます。

 

①新築である

②すでに建築済みである

③顧客から内外装に関する模様替えなどの注文を請け負っている

④内外装に関する模様替えなどの注文を2019年3月31日までに受けている

⑤新築の建売住宅の売買契約を、2019年3月31日までに済ませている

⑥内外装の模様替えなどをした上で、住宅を売買する

 

つまり完成物をそのまま顧客に売る場合では経過措置対象外となる一方で、顧客からの注文を受け工事を行ってから住宅を販売する場合では消費税の経過措置を受けられることになります。

消費税が増税するにあたり不動産業界が一時的に冷え込むことも予想されており、そうなれば建設業も少なからず影響を受けることになるはずです。増税の余波はなかなかに大きなものですが、今回紹介したような経過措置を受けられる請負工事の契約が自社であれば、支払うべき消費税の金額が多少なりと抑えられることになります

消費税の経過措置についてはインターネットを調べても情報が出てくるので、今回紹介した内容に自社が請け負う案件が該当しない場合には改めて確認しておく必要があるでしょう。

まとめ

出来高払いだけでなく消費税の支払いが特殊な建設業ですが、こうした特徴的な支払い方法のせいで資金繰りがショートしてしまう会社も割と多く見られます。

ただしそうなる前に資金調達マスターの無料相談サービスを利用すれば、会社の財務状況をより健全なものにすることも可能です。これまで利用したことのない方は一度検討してみてもいいかもしれません。

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