債務整理

2019/03/28

赤字受注を利用して黒字経営するためには

はじめに

会社として利益を上げるためには取引先から仕事を受注する必要があります。会社としてはもちろん利益の出る仕事ばかりを請け負いたいですが、時として赤字受注とも呼ばれる仕事を依頼されることがあります。赤字受注と聞くと会社にとって利益のない損する仕事というイメージを持たれるかもしれませんが、場合によっては赤字受注することによって会社を黒字経営することが可能になるかもしれません。

この記事ではそんな赤字受注を利用して黒字経営するためのポイントについて解説します。赤字受注しても会社にとって利益が出る仕事とは、いったいどのようなものなのでしょうか。

1.赤字受注とは何か

この記事を読んでいる経営者の方の多くが、赤字受注とはどういったものであるかご存知ないかもしれません。この章ではまず赤字受注とは何かから解説していきます。

赤字受注とは会社側が設定している規定の標準原価を下回る状態で仕事を受注することを指します。つまり原価の時点でマイナスになることが事前に予測できるため、営業利益としてもマイナスになるであろうことが予想されるのです。

こうした仕事であれば利益面だけ見ても大抵の会社が断りたいはずなのですが、次の仕事につなげることや仕事の数を少しでも増やすことを考慮して赤字受注する会社は少なくありません。ただこれだけの知識では赤字受注がなぜ黒字経営することにつながるのか理解することができません。

赤字受注することで黒字経営につなげていくためには、まず「限界利益」の考え方についてしっかりと理解する必要があります。次章では限界利益に焦点を当てて詳しく解説していきます。

2.限界利益の算出方法とは

原価の時点ですでにマイナスであることが確定している赤字受注ですが、そんな赤字受注の仕事を受けることでなぜ黒字経営へとつなげることができるのでしょうか。その理由は限界利益を知ることではっきりと分かります。

2-1.限界利益とは何か

そもそも限界利益とはいったい何なのでしょうか。この限界利益とは「売上高ー変動費」の計算式で求めることができます。

またこれと似た計算式で求めることができる数値として営業利益があります。営業利益は「売上高ー(固定費+変動費)」の計算式で求められます。つまり営業利益と限界利益との違いは固定費を差し引くかどうかの違いだけということになります。

これだけ聞いてもいまいちピンと来ない方ももちろんいるでしょう。それでは次にここまでで出てきた各項目について詳しく見ていきましょう。

2-2.固定費とは

まず固定費についてですが、これは売上高にかかわらず毎月固定で発生する費用のことを指します。極端なことを言えば売上がゼロの月でも発生する費用ということです。

この固定費は大まかに3種類に分類することができ、能力費と政策費、それと組織費がそれぞれ存在します。

①能力費

会社が自社商品およびサービスを販売するために必要とされる費用のことを指します。一般的には物的設備に関する費用がこれに該当しており、例えば設備機器の減価償却費や固定資産税、会社の施設にかけている諸般の保険料などです。会社の生産能力を上げるために必要な費用なので能力費と呼ばれています。

②政策費

会社を経営する上でかかりかつ会社側である程度コントロールできる費用のことを政策費と言います。これには広告宣伝費や接待交通費などがあり、会社の経営で必要となる物的な部分以外での費用がこれに該当します。

③組織費

いわゆる人件費のことを固定費の分類上では組織費と呼びます。

固定費の内訳としては上記の3種類がある訳ですが、これらは会社を設立して経営していく以上はどうしてもかかってくる費用となります。毎月の収益にかかわらず金額が変動しないため、固定費の支払いさえ滞るようになってしまうと会社はたちまち倒産してしまいます。

せめて会社を存続させるためには、これらの固定費は最低限確保できていなければならない
ことはここまでの内容だけでも十分理解できるはずです。

2-3.変動費

毎月の売上高とは無関係に一定額必要になるのが固定費ですが、それとは別に売上に伴って発生する費用が存在します。それが限界利益を算出する上で重要となる変動費です。

変動費は売上に伴って発生する費用なのですが、これには材料費や配送費などが該当します。この変動費は売上が増えれば増えるほど増加する傾向があるため、売上高が多い月ほど変動費もそれに伴って高額になってきます。

また変動費に関連して使われるのが「変動費率」です。この変動費率とは「変動費÷売上高」で算出できる数値のことを指しており、変動費が高くなるほど変動費率も比例して高くなります。会社側からすれば変動費率はなるべく低い数値である方が好ましく、変動費について考える際には1%単位で慎重に数値管理をしなければなりません。

限界利益の算出方法自体はそれほど難しい計算式を用いないため、計算方法さえ知っていれば簡単に算出することができます。ただ限界利益を知ることでどのように経営に役立てることができるのかを知らなければ意味はありません。

限界利益の算出方法を確かめたら、次章ではいよいよ赤字受注してなお黒字経営するためのポイントについて確認していきます。

3.赤字受注してなお黒字経営するには

前章で営業利益と限界利益の算出方法について確認しましたが、この二つの計算式では変動費を差し引くかどうかしか違いがありません。ただそんな些細にも思える違いが黒字経営を考える上では非常に重要になってくるのです。

例えば赤字受注は赤字受注でも、ひいては会社にとってプラスになるものというのも実際に存在します。

仮に売値が1個あたり500円、変動費が300円、固定費は800円という商品を製造することになったとしましょう。仕事をとってきた営業側からすれば営業利益が「500ー(800+300)=600円」で赤字の仕事は、会社にとってのマイナスになるように見えるので赤字受注だと思いがちです。

しかし製造を担当する現場側からすると、限界利益の面で「500ー300=200円」となりプラスになる場合には、いくら製造数を増やしたところで限界利益がよりプラスに傾くだけに過ぎません。限界利益がプラスであれば固定費そのものは変動しないため、営業利益上は赤字受注でも会社にとっては実はプラスになる仕事ということになります。

もちろん製造数が3個以下の場合には利益が赤字になる可能性はありますが、商品が3個以上売れた時点で営業利益でも黒字が確定することになります。そう考えれば営業利益の部分では赤字受注であっても、限界利益を考慮すると実は赤字にならない可能性がある仕事というのも現に存在します。

以上のことからも分かるように、限界利益を知ることでその仕事を引き受けるべきかどうかの判断基準を持つことができます。

ただし限界利益が黒字になるからといって必ずしも赤字受注を引き受けていい訳ではありません。その詳しい理由については次章で確認しておきましょう。

 

4.製造業で限界利益が必要な理由とは

会社のためにならない赤字受注と言えば、真っ先に思い浮かぶのが営業利益も赤字かつ限界利益も赤字というものです。こんな分かりやすい仕事であれば断ってしまえばそれで済む話です。しかしこと製造業に関して言えば、機械の稼働率についてもきちんと考慮しておく必要があります。

例えば工場で大型機器を購入した場合であれば、減価償却費というのが毎年のように発生します。高価な設備機器を持っている工事ほどその機器の稼働率を把握しておく必要があり、これは「年間の実稼働時間÷年間の総操業時で算出することができます。

また工場の製造ラインが機械中心で構成される場合であれば、単位時間あたりの機械に関する労務費を「機械賃率」として別途算出する必要があります。

機械賃率=(設備の減価償却費÷年間の実稼働時間)=(設備の減価償却費÷年間の総操業時間×稼働率)

この計算式だけ見るといまいちピンと来ないでしょうが、その機器の年間における実稼働時間を上げれば上げるほど機械賃率が高くなるということになります。機械賃率が上がるということは一個あたりの生産コストが安く抑えられることにもつながります。

ただその年度の稼働率というのは年度終わりにしか分かりません。そのため多くの工場では年度初めに「今季の推定稼働率」をあらかじめ定めておき、各商品の標準原価を算出します。そして年度末になった時点で「今季の実稼働時間」を集計して、推定稼働率との間で誤差が生じた場合には「原価修正」をかけることになります。

つまり限界利益が黒字だからといって赤字受注した場合であっても、機器の操業率が低ければ機械賃率が必然的に低くなり、結果的に赤字になってしまう可能性というのも否めません。

そんなリスクを回避するための指標として限界利益を利用すれば、単純計算だけでも変動費を差し引いた利益を把握することができます。この利益から固定費を差し引いてマイナスにならないよう仕事を選別すれば、ひいては黒字経営につなげることも可能です。その赤字受注が会社のためになるかどうか把握するためにも、限界利益という見方を新たに活用してみることをおすすめします。

 

まとめ

一見すると赤字受注である仕事でも、別の見方をすれば会社にとってプラスだと分かる場合があります。ただそうは言っても営業利益と限界利益ともに赤字になる仕事というのも割と多く、そうした場合にはいくら仕事が少ない状況であろうとキッパリと断らなければなりません。

資金調達マスターでは会社の資金調達に関するさまざまなお悩みを相談できる、専門家による無料相談サービスも用意されています。赤字受注を繰り返して会社の経営状態を深刻なものにしてしまう前に、まずは相談して打開策を探るのも一つの方法です。