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2018/06/20

建設業者が赤字工事を請け負ってはいけないその理由と対策

はじめに

東京オリンピックの開催に向けてホテルやマンションなどの建設ラッシュが進む最中でさえ、建設業界では赤字工事を請け負ってしまう会社が多く見受けられます。
そもそも建設業者は競争が激化していることもあり、請け負う以前から赤字になると分かっている工事までもあえて請け負うことを平気でします。
業界全体としての独特な風潮があることは確かですが、建設業者として会社を経営するのであればこれまで通りに赤字工事を請け負っていると、今後の業界で生き残れない可能性が濃厚になってしまいます。

この記事では建設業者が赤字工事を請け負ってはいけない理由や具体的な対策について解説します。建設業者として生き抜くためにはこれまでの低利益での仕事の受注を取り止め、経営方針を改善していく必要があります。
経営者としての意識改革を図るためにも、この記事を読んで対策を講じてみてはいかがでしょうか。

 

1赤字工事とは

赤字工事を請け負わないための対策を考える前に、まずは赤字工事の概要について解説します。
建設業者が赤字工事を請け負うのには退っ引きならない事情が一枚噛んでいるのですが、建設業者を営む経営者は良くも悪くもワンマンな方が多いです。
そのため主観的に物事をとらえその本質を客観的に見極められないという方も中にはいるかもしれません。
この章では赤字工事を結果的に請け負ってしまう建設業者の共通項から確認していきましょう。

 

1ー1 売上高至上主義な風潮がある

建設業者として長らく働く方であれば常識ではありますが、公共工事を請け負うためには「経営事項審査」の点数が非常に重要視されます。
そもそも公共工事の入札に参加したい場合には、その発注機関より客観的事項および主観的事項について審査を受け、その結果に応じてランク分けしてもらわなければなりません。
その客観的事項にあたるのが「経営事項審査」であり、内訳としては「工事種類別年間平均完成工事高」、「経営状況」、「経営規模」などがあります。

この「経営事項審査」で高得点をマークするためには会社としての売上高が最重要視されており、たとえ黒字経営であっても売上高が下がれば「経営事項審査」での点数も連動して下がってしまうことが実情なのです。
そして「経営事項審査」の点数に応じたランク分けの順位を重要視する傾向は建設業者だけでなく、金融機関でも同様です。そうした経緯もあり建設業界の経営者たちは売上高のみを意識しがちになっています。

 

 

1ー2 赤字工事はなぜ起こりうるか

ここで赤字工事が起こりうる仕組みについて簡単にですが説明しておきます。
建設業者が工事を請け負った際には「労務費」、「材料費」、「外注費」、「現場諸経費」がその都度発生することになります。

理想的なモデルとしてはこれらの費用が工事の受注金額で賄えて、ひいては受注金額から工事費用を差し引いた際に粗利益が残ることで初めて黒字工事が行えます。

 

「労務費」の一部のみを賄えるだけでもまだマシな部類の赤字工事であるとされ、酷い場合には従業員に支払うべき「労務費」さえ捻出できなくなってしまいます。

そもそも建設業者が赤字工事を請け負うのは、その会社から次の仕事を貰うためだと言われています。
しかし実際には赤字工事から次の仕事に活きる瞬間などほぼないに等しく、たとえ仕事を貰えたとしても赤字工事をさらに請け負う羽目にもなりかねません。
安請け合いしてしまうと取引先である会社から体良く使われてしまうため、なるべくならば赤字工事は請け負うべきではありません。

 

1ー3 利益重視の会社が少ない

建設業者が売上高を重要視することは前述した通りですが、利益追求型の精神を有する経営者はかなり少ないのが現状です。
建設業者に限らず工事を伴う業者であれば、その工事ごとに見積書を作成するのが一般的です。

この見積書を正確に作成することでその工事にかかる費用が分かり、結果として原価総額や利益率といった数値を管理しやすくなります。

ただし建設業者の多くが工事の原価を積み上げるための積算を軽視する傾向にあり、受注決定後に作成する「実行予算書」の作成をずさんに行ってしまいがちです。

 

この「実行予算書」のよくある問題として作成するタイミングが遅い、工事が終わるまで作成しないといったものが見られます。
この「実行予算書」の作成が遅れることの何が問題かと言うと、「実行予算書」を早期に作成しておくことでその工事の利益額および利益率が意識されるようになり、工事に必要な資材の仕入れ値を交渉したり諸経費の削減に努めることができます。

「実行予算書」を作成するのは基本的に工事担当者ではありますが、営業担当者が受注金額をろくに交渉せず全て現場に委ねてしまうことで赤字工事がより多く発生しやすくなります。
そして工事担当者が正確な金額で「実行予算書」を作成し提出したとしても、経営者が赤字工事として計上することを嫌い数値上では黒字になる虚偽の「実行予算書」を作成させる場合まであります。
工事を請け負う際の基本的なルールが整備されていないために、赤字工事の数が無為に増加する羽目になるのです。

 

1ー4 粉飾決算が横行している

建設業者でなくとも経営不振を隠すために会社の数値を書き換えることはしばしばありますが、建設業界には特に粉飾決算が横行しています。
会社の決算が赤字になってしまえば「経営事項審査」でもマイナスの評価が下され公共工事での入札ランクが落とされるだけでなく、金融機関から必要な時に融資を受けられない可能性まで出てきます。
粉飾決算で黒字化しておけばそうした問題を回避できるのですが、虚偽の黒字経営のせいで本来ならば不要な税金まで納めなければなりません。

ただ金融機関も建設業者が粉飾決算をしているかどうかをある程度見極めることができるとされています。
そのポイントとして挙げられるのが「売掛金」および「未成工事支出金」です。
これらの数値を利用して建設業者は「売掛金」として利益を当期に多く乗せたり、工事にかかった原価を「未成工事支出金」として次期に後回しすることをします。
しかしこのままでは次期の原価が増額され赤字が深刻化してしまうため、利益を確保するために次期もまた同様の手順で粉飾決算を行います。
あるいは未だ売上金が貰えていない工事についても売上計上してしまい、「売掛未回収金」としていつまでも貸借対照表上に不自然な数値を残す業者もあります。

 

そうした不自然な数値の書き換えを続ければ歪みが出るもので、これらの数値が売上高とのバランスが取れていない、数値が数年間同じであるといった問題点が生じるようになります。
こうした歪みがないかを金融機関は逐一確認しており、粉飾決算を行えばいつまでも赤字を隠し通せるというものではありません。

 

1ー5 社内コミュニケーションが不足している

建設業者の経営者がワンマンであることから経営者と従業員の双方がコミュニケーション不足であることは想像に難くないですが、工事担当者と営業担当者といった従業員同士でもコミュニケーションが不足していることを皆さんはご存知でしょうか。
お互いの不満が溜まりろくに情報共有がなされないために連携が取れず、結果として経営状況が改善されない要因になりうるのです。
社内コミュニケーションが円滑に行えないことで赤字工事が増殖していると言っても過言ではありません。
経営者であればこうした自社が抱える人間不信の問題を真摯に受け止め、経営体制をきちんと整えるための改善策を考えるべきです。

こうした数多くの問題を抱えたまま何の対策も講じないために、建設業者は赤字工事ばかりを請け負い経営を圧迫する流れになってしまうのです。
こうした問題点の深刻化を避けるためにも赤字工事を請け負うべきではないのですが、こうした問題点は実際の工事でどのように反映されるのでしょうか。
次章では実際の事例を材料に建設業者の問題点についてより理解を深めていきます。

 

2実際の事例

この章では赤字工事の実際にあった事例を題材にして、赤字工事になってしまうポイントを解説します。
今回は海水で劣化した牡蠣工場の鉄製スラブ下の柱の補強工事を参考例とします。それではさっそく見ていきましょう。

 

2ー1 工事の概要

鉄製スラブ下の柱の補強工事ということで、当該担当者は鉄製スラブ下の古い柱の間に新たな柱を立てることで補強する方法を採用します。
ただし作業できるのは干潮の時のみで1日の作業時間は平均5〜6時間と短く、さらに海水に晒された資材は潮の影響で劣化が進みその現場で全て廃棄することになりました。
そして柱の型枠を作成しても生コン打ちが予定通りにいかず、結果として工事は多くの赤字を生みました。

これが赤字工事の概要です。これだけでもその問題点は分かりますが、総じて言えばスケジュールの組み方が甘かったというのが最大の問題であると考えられます

 

2ー2 問題点を改善するには

牡蠣工場の鉄製スラブ下の柱の補強が当工事の課題であったため、潮の満ち引きの影響で作業時間がかなり限られることは事前に調べておけば分かったことです。
そして生コン工場の予約を事前に押さえておかなければ作業がそこでいったん停滞し、時間を思うように使えず労務費がかさむことも想定しうる問題です。

海水がある場所での工事が初めてであれば潮の影響による資材の劣化までは想定できなかったかもしれませんが、潮の影響がある建物は普通の場所よりも劣化が早いことは事前に調べられた可能性があります。

 

これだけ見ると施工管理者の問題が際立ちますが、綿密に計画を立てていれば赤字を少しでも抑える余地はあったように思えます。
綿密な工事計画を立てて、その上で工事を進めなければ思わぬ出費がかさみ赤字が膨らんでしまいます。
これはあくまで一例ですが、赤字工事を増やさないためにも各現場における最適な工事計画を事前に立てることの重要性をきちんと理解する必要があるでしょう。

3黒字に転換するには

建設業者が抱える問題を大まかに挙げたところで、この章では記事の総まとめとしての黒字化に向けた対策について紹介していきます。
上記の問題を考慮した上で、具体的にどのような対策を講じることができるのでしょうか。

 

3ー1 利益重視の経営方針に切り換える

建設業者は公共工事の入札ランクや金融機関からの融資の観点から売上高ばかりにこだわってしまうことは前述した通りです。
しかし売上高を粉飾決算で黒字にしたところで、会社としての経営状態が改善されることはまずありません。

そのためまずは利益重視の経営方針へと転換することが大切です。その一環として例えば「実行予算書」を着手前に綿密に練ったり、営業担当者が受注金額の交渉に取り組むだけでも利益率がかなり変わってきます。
利益重視の姿勢で考えれば明らかに赤字工事になることが分かる仕事については引き受けないというのも一つの方法ではあります。
赤字工事と分かっていて引き受ければ余分な労務費や材料費などがかさみ、さらに売上としての赤字が深刻化するばかりです。
利益が出ないと端から分かっている場合には仕事を断ることも時には重要かもしれません。

 

3ー2 経費削減の方法を変える

金融機関からの融資との兼ね合いで経費削減に奔走する会社ももちろんあるでしょうが、経費削減を掲げてむやみやたらと節約するのはデメリットでさえ生じてきます。
例えばコピー用紙の節約と称して裏紙印刷をしていれば、会議の時に必要な資料でさえ読みづらく内容を読み違えることもないとは言い切れません。
あるいは電気代の節約と称してこまめに消灯すると、その時間帯に仕事をしたい従業員の業務を妨げることにもなりかねません。

目的が明確化された経費削減であれば良いですが、経費削減のためだけのそうした取り組みでは数値改善されないことも考えられます。
会社としての利益目標を従業員に周知徹底した上でなければ、トップダウン方式の経費削減は従業員のモチベーションを低下させてしまう恐れがあります。

 

3ー3 飲み会を会社の経費で開催する

経営状態が悪い会社では土台無理な対策にも思えるでしょうが、社内コミュニケーションの不足を補う対策として有用なのが経費による飲み会の開催です。
ただしこの飲み会で会社や日頃の不満を愚痴り合うだけではコミュニケーション不足が解消される訳もないので、経営者ならびに従業員の親睦を深めるための会話だけに限定するとよりコミュニケーションを活性化させやすくなります。社内のコミュニケーションが円滑化されれば各部署での連携も図れるようになり、従業員が働きやすい環境整備にも役立ちます。
そうなれば自然とモチベーションを維持しやすくなり結果として仕事の能率も改善されることが期待できます。

 

3ー4 医療費を経費で落とす

こう書くと全ての医療費を経費で落とさなければいけないかと思われるかもしれませんが、ここで言いたいのは定期的な健康診断やインフルエンザの予防接種といった、最低限の医療費は会社で出すべきではないかということです。
特にインフルエンザは毎年のように猛威を振るうため、予防接種を受けさせないまま仕事に臨めば現場の人間の大半がダウンする事態だって起こりうるのです。
そうなればその期間中は仕事の進捗がなくなり結果として仕事の能率が悪くなります。
多少なりと経費をかけることでリスク回避できる可能性があることは念頭に置いておくといいでしょう。

 

 

まとめ

建設業者が赤字工事を請け負うことが常態化していますが、赤字工事を請け負うばかりでは会社としての利益につながることはまずありません。
利益の黒字化を図るために綿密な改善計画を立て従業員と連携をとることで、経営状態を改善し本当の意味で売り上げを作ることができます。

ワンマン経営で粉飾決算ばかりを続けていることに思い当たる節があれば、まずは社内事情にきちんと目を向けることから始めてみることをおすすめします。

資金調達の方法はさまざまですが、企業のおかれているフェーズや時期的なタイミング、業種、企業の規模など、多くの条件が最適な方法を選べるか否かに関わってきます。 

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