借り入れ

2018/07/19

経済用語!棚上げとは?

皆さんは「棚上げ」という言葉をご存知でしょうか。辞書に記載された一般的な意味では「問題を一時的に未処理・未解決のままにしておくこと」、あるいは「需給の調節などのため、一時商品を市場へ出さないこと」というものがあります。ただ経済用語ともなるとその意味はこの限りではありません。

そこで今回の記事では経済用語としての棚上げの意味について解説します。一般的な単語の意味に近しい用法ではありますが、経済という専門の世界での棚上げの意味は多少なりと難解な部分があります。経済用語に詳しくない方も多いとは思いますが、今回はなるべく噛み砕いて解説するので経済用語としての「棚上げ」の概要について一緒に学んでみましょう。

 

 

1章:過払い金に関する「棚上げ」とは

この章ではまず利息計算に関する「棚上げ」の意味について解説していきます。

最近になって借金返済による過払い金は取り戻せるという旨のCMがしきりに放送されるようになりました。というのも消費者金融がかつてグレーゾーン金利であった時代に借金をしていた方、もしくは5年以上の長期間にわたり借金返済していた方であれば返済した金額に過払い金が含まれる可能性があることは近年まであまり知られていませんでした。その過払い金を請求する際にはもちろんいくらの過払い金があったかを算出しなければなりませんが、ここでも「棚上げ」という言葉が深く関与してきます。具体的にはどういうことなのでしょうか。

 

1ー1 過払い金の計算方式は二つある

専門家に調べてもらった上で過払い金請求ができると確認できた際には、実はその金額に5%の利息をつけて請求することが可能です。ただその利息の計算方式が二つあり、「利息充当計算」と「棚上げ計算」のどちらを採用するかによって過払い金の金額は微妙に異なってしまいます。そもそもこれらの計算方式にはどういった違いがあるのでしょうか。

「利息充当計算」では過払い金によって発生する5%の金利をその都度元本に入れず、借入金に充当するという計算方式です。その一方で「棚上げ計算」では過払い金の元本に対して発生した利息を別で計算するもので、棚上げ計算の方が利息充当計算よりも若干ですが金額が安くなる傾向にあります。

そのためアコムなどの貸金業者は棚上げ計算を、借金完済している依頼主は利息充当計算での過払い金の算出をそれぞれ主張することとなります。ただし平成25年に行われた最高裁の判決によれば、借主有利となる利息充当計算での算出方法が正しいという結論が出ています。そのため過払い金が発生する心当たりがある方であれば一度、相談無料の法律事務所に話を聞きに行ってみるという選択肢もいいでしょう。

1ー2 過払い金は完済後の期間でも差が開く

また過払い金に関しては完済日の日数分だけ5%の利息がつきます。過払い金請求できるのは完済日より10年以内というのが法定期間ではありますが、完済日より長らく時間が経過している、あるいは返済期間が長期間に及んだものについては計算方式次第で取り戻せる金額が大きく左右されることは念頭に置く必要があります。

たとえ返済中の場合でも過払い金が発生することはありますし、その金額次第では借金がチャラになることも実際にあります。仮に過払い金がない場合でも、任意整理することで月々の返済額を多少なりと減らすことも可能です。消費者金融からの借金を背負っている方は検討の余地があることを覚えておくといいでしょう。

 

2章:銀行の融資に関する「棚上げ」とは

前章では過払い金に関する棚上げということで、一般の方にも近しい事柄での内容となりました。今回の章では一転して企業経営者が頭を悩ませる銀行の融資に関する「棚上げ」について取り上げます。

一昔前であれば土地や株券といった担保を用意すれば銀行は融資に応じてくれていましたが、近年では銀行側からの信頼度によって融資の金額や利息が決定されています。そのため銀行マンに嫌われない企業体制へと変革できなければ、銀行からの融資に関しては審査落ちが続くことも容易に想像がつきます。そんな融資と棚上げとがいったいどのように結びつくというのでしょうか。

2ー1 銀行からの信頼を得るためには

各銀行によって企業のランク付けに関する基準は微妙に異なりますが、格付けを上げるための条件として通じるのは「経営改善計画書」が正確であるかどうかの一言に尽きます。

この経営改善計画書とは自社資本での経営が困難になった理由を明確化し、具体的な数値を伴った改善計画を記すものとなります。つまり客観的なデータをいかに細かく盛り込むかによって銀行側も融資を開始するか、あるいは継続するかどうかを冷静に検討しやすくなります。この方法であれば債務超過の企業であっても融資を受けられる可能性があることを忘れてはなりません。

2ー2 経営改善計画書の内容とは

ただ数字の扱いに慣れた銀行マンを納得させる経営改善計画書とは、いったいどのような点に着目して作成するべきなのでしょうか。

月次計画を立てている企業であれば毎月の業績やその改善点を分析しているため、何もしていない企業よりも銀行マンを納得させられる経営改善計画書の作成が実践しやすくなります。具体的な話をすると経営改善の根拠を示すため、「会社の成長性」や「融資の返済能力」を客観的な数値で明記することが大切です。それも短期的なものではなく最低3〜5年間の中長期にわたる数値を引用し、財務体制の健全化および強化をいかにして図るかを細かく記載する必要があります。

将来的な資金の流れを数値で示すことで銀行マンも納得しやすい信頼度の高い資料が作成できる訳ですが、資料を作成するだけが全てではありません。融資を受けられた暁には銀行の借入金以外の負債を増やさないこと、営業キャッシュフローを維持もしくは向上することが重要になります。この点で努力することを怠ると再建が難しくなります。

2ー3 企業が再建できなくなる問題点とは

融資を受けてもなお企業の再建を難しくさせる問題点として、以下のようなものが挙げられます。

①税金および社会保険料の滞納

企業を経営する上で支払いが必須である税金および社会保険料は、延滞すると延滞税として14.6%が追加で課せられてしまいます。そのためこれらの支払いを滞納させればさせるほど銀行の借入金以外での負債が膨らみ、結局はキャッシュフローの流れが破綻する結果を生み出します。また税金の滞納が酷いと銀行側が融資を断るもしくは打ち切るという選択をしやすくなるため、資金繰りが厳しい状態でも滞納すべきではありません。

②過剰なリストラや給料の未払い

資金繰りが苦しい状態で真っ先に社内の支払いを滞納させる企業も多いかと思いますが、社員を過剰なまでにリストラしたり給料の未払いをして社員の福利厚生を棚上げした経営をすることは企業にとってもマイナスに響きます。社員のモチベーションを低下させては社内の求心力が弱まり、いくら良質な経営改善計画書を作成したところで実践する前に内部から瓦解することもありうる話です。企業経営を再建したいのであれば社員をおざなりに扱うべきではありません。

③買掛金の棚上げ

企業を経営する方であれば、売掛金の支払いサイトが長いために資金繰りが悪化したという話を聞いたことがあるかと思います。あるいは自身の企業が買掛金の支払いを棚上げしてしまい、結果的に余分な負債を背負ってしまうという場合もあるかもしれません。ただ支払いそのものを棚上げするのではなく延滞分だけを棚上げしてもらい、なるべく負債額を増やさないよう努力することが大切です。また買掛金の滞納は他社との信頼関係を壊しかねないので、なるべくならば信頼関係の盤石な1〜2社のみに留めるべきです。

これらの問題をなるべく回避しつつ銀行の融資をいかに活用できるかで、企業経営の再建が図れるかどうかが問われることになります。

 

 

3章:法人税に関する「棚上げ」とは

この章では経済用語の中でも特に専門性の高い法人税に関する「棚上げ」について解説していきます。内容自体がかなり難解なのですが、なるべく簡単に噛み砕いて解説すると以下のようなものになります。

3ー1 利息棚上げとなる条件とは

前述したように税金を滞納すれば延滞税が別途発生することになりますが、例えば債務者である企業が以下の場合に該当すれば利息棚上げとなることがあります。

①「会社更生法もしくは金融機関等の更生手続きの特例等に関する法律」で定められた法律上の整理手続きが開始される

②借入金の利息が発生した直近6ヶ月の支払いが未収であり、かつそれ以外の利息の支払いが微少もしくは皆無である

③債務者の企業経営が好転しないあるいは天災や交通事故などの急変により、借入金の返済そのものが危ぶまれる

具体例としてはこうした場合に法人税の利息棚上げが適用される可能性が生じる訳ですが、債権者側の企業については未収分の利息はどのように対応すればいいのでしょうか。

3ー2 貸付金の未収分は計上しなくていい

原則では貸付金の利息はその事業年度終了時に未収利息として計上しなければなりません。しかし債務者である企業が上記のような特別な状況に陥っている場合に限り、その事業年度に関しては未収利息の計上を見合わせることが可能です。ただ仮に棚上げしている利息の支払いがこの年度以降にあった場合には、実際に支払いを受けたその事業年度に収益として別途計上する必要があります。

法人税に関しては利息の支払いさえ困難であると判断された場合に、特例的に利息分を棚上げするという支援措置が講じられることがあります。合理的かつ客観的な理由があるかどうかが論点となるため、全ての債務者が利息棚上げされるという話ではないので注意が必要です。

 

4章:融資返済に関する「棚上げ」とは

会社経営する上では金融機関から融資を受けることもあるかと思います。ただ会社の資金繰りを改善するために融資を受けた場合であっても、毎月の元金と利息分の支払いにかえって資金繰りが悪化してしまうこともあるかもしれません。そうした場合にはお金を借りている金融機関に相談してみるのが一番の得策ではありますが、実際に融通をきかせてもらうことはできるのでしょうか。

4ー1 元本棚上げとは何か

元金と利息を合わせて返済するのがきつい場合、「元本棚上げ」という方法で返済を一部猶予してもらうことが可能です。ここで言う元本棚上げとは利息分のみを毎月支払い続け、元金の支払いは一時的に待ってもらう方法のことを指します。

金融機関としても返済分を全く支払わないと言っている訳ではなく、利息分だけは引き続き支払うと言っているため、延滞するよりは印象の悪化を防ぐことができます。

ただし元本棚上げを自分から提案して交渉した場合であっても、金融機関の担当者が交渉に応じてくれないこともあるかもしれません。元本棚上げで金融機関が応じてくれない場合には、例えば以下の条件を代わりに提示してみるのも一つの方法です。

・拘束預金の引き出し

・積立預金の中断

・金利の一部棚上げ など

4ー2 元本棚上げ交渉は難しい

上記でも軽く触れましたが、元本棚上げ交渉はなかなか難しいというのが現状です。ただ金融機関としても不良債権を出したくないという考えはあるので、元本棚上げ交渉を断ることで金融機関側が不利益を被ると分かれば、会社側の要望に応じようとする動きも出てくれるかもしれません。

また金融機関としても会社が倒産されては困るので、法的整備を行ってまで資金回収しようとするとなかなかに時間がかかります。金融機関側に元本棚上げをしてもらうためには、粘り強く交渉しなければならないことはもちろん、金融機関に提出する資料として債権計画書や資金繰り表などを持参することも十分検討した方がいいでしょう。

 

 

5章:会社が有効活用できる資金調達の方法とは

ここまでは経済用語としての「棚上げ」についての具体例をいくつか紹介してきましたが、この章では最後に会社が有効活用できる資金調達の方法について確認しておきましょう。

5ー1 保証付融資を受ける

資金繰りの苦しい時にこそお金を借りてでもなんとか切り抜けたいという頭が働きますが、金融機関が行う融資として一般的なプロパー融資は中小企業にとって少々ハードルの高い方法となります。会社としての実績や実際の数値に基づく実現可能な返済計画が問われますし、無論その借りたお金で会社の利益を上げて無事に返済できる目処が立つのか重視されます。ただお金を借りたいと希望する会社の全てが経営が黒字であるはずもなく、そうした資金繰りの苦しい会社ではプロパー融資ではなく保証付融資を希望することでお金を借りられる可能性が高くなるかもしれません。

ここで言う保証付融資とは信用保証協会が保証人になってくれる融資制度のことを指します。この保証付融資を受けたい場合には信用保証協会と金融機関の両方で審査されることになりますが、プロパー融資の場合よりも審査を通過しやすくなる可能性はあります。また保証付融資の場合では万が一返済が滞ってしまった時でも、信用保証協会があらかじめ金融機関に対して弁済してくれるようになっています。とは言え返済義務がなくなる訳ではなく、先に弁済してもらった信用保証協会に対して改めて返済していく必要が出てきます。

会社としての実績がない、もしくは担保や保証人を立てなければお金を借りられないという場合に適した融資の方法と言えます。

5ー2 ファクタリングを行う

会社同士の取引の場合では主に掛金が利用されますが、取引先によっては売掛金の支払いが遅れることも十分考えられます。ただでさえ掛金の場合は支払いが最低でも1〜2ヶ月は遅れるというのに、取引先の都合のせいで支払いがさらに遅れるとなるとかなり困ったものです。あるいは売掛金の支払いは通常通り行われる予定ではあるものの、それまで会社の資金繰りが保たないという場合もあるかもしれません。

そうした場合には自社が所有している売掛債権を利用し、ファクタリングを行うことで資金調達する方法もいいでしょう。ファクタリングでは利用手数料こそ取られてしまうものの、予定よりも早く売掛金の一部が手に入るためそれだけでも資金繰りが改善できる場合があります。

ファクタリングを行う場合では、2社間ファクタリングか3社間ファクタリングのどちらを選ぶかによって、利用手数料や取引の流れも変わります。またファクタリング会社によっても取り扱う売掛債権の条件などが違うため、検討する場合には事前にファクタリング会社の条件について下調べしておくことをおすすめします。

5ー3 余分な在庫を売却する

案外単純な方法ではありますが、会社にある売れ残った在庫を売却することでもいくらかの資金にはなります。在庫を抱えることで余分な管理維持費用もかかるので、在庫整理の意味も兼ねて売却した方が支出を減らすことにもつながります。

その他にも無駄な支出を省く、手形割引を利用するなどの方法でも会社の資金繰りを改善できる可能性があります。

また最近ではお金を前借りする感覚で、法人向けクレジットカードを利用する会社も増えています。まだ導入していない場合には、これを機に導入することを検討してみてもいいかもしれません。

 

 

まとめ

「棚上げ」の一般的な意味からも想定できる用法が、経済用語としても適用されていることがお分かりいただけたのではないでしょうか。ただ棚上げという言葉一つとっても立場や状況によっては良くも悪くも影響の仕方が変わってきます。

しかし棚上げすることが必ずしも問題解決に直結する訳ではなく、一時的な緩和策でありいずれは問題解決に取り組まなければならないことは覚えておいた方がいいかもしれません。

「棚上げ」は一例に過ぎませんが、資金調達を確実に行うには多くの知識が必要になります。独学も経営の未来を支える大切な学び方ですが、専門家に相談することが正しい知識を身につける何よりの近道です。

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