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2019/05/31

部分完成基準と出来高請求では何が違うのか

 

はじめに

建設業では他の業種と比較して特殊なルールが多くなってきますが、その中でも出来高請求による部分的な報酬の受け取り方はその他の業種ではまず見られません。これは建設業者の請け負う仕事が長期間に及ぶことに起因していますが、実はこの出来高請求と部分完成基準とでは厳密に違いがあることはそれほど重要視されないことが多いです。

この記事ではそんな建設業で慣習的に行われている出来高請求と部分完成基準の違いについて解説します。また出来高請求については「建設業界で一般的な出来高請求とは何か」(https://shikin-master.com/others/894/)に詳しく書かれています。出来高請求とはどういったものであるかを確認したい方はそちらも参考にしてください。

1.建設業で言う出来高と出来形の違いとは

冒頭でも触れたように、建設業界では基本的にかなりの長期間に及ぶ仕事を請け負うことが多くなります。それは工事の完成形である建築物を作り上げるまでにかなりの時間を要するからなのですが、一般的な企業のように仕事が完了した時点で報酬を受け取っていては、下請け業者は収益が全く入らないために工事の途中段階で会社経営が破綻することにもなりかねません。

そんな危機的な状況を免れるため、建設業界では現在着手している建築物の完成した割合に応じて報酬を受け取ることが慣習化されています。これを出来高請求と言います。

ところで皆さんは出来高という言葉の他に、出来形という似た響きの言葉を聞いたことがあるでしょうか。この出来高と出来形では何が違うのかと言うと、出来形が建築物の部分的に完成したもののことを指すのに対し、その出来形を部分報酬に換算したもののことを出来高としています。つまり出来形は建築物について、出来高は報酬について言及した言葉であることが分かるかと思います。

言うなれば建設業者を守るために出来高請求という報酬の受け取り方が慣習化されている訳ですが、これは建設業法で厳密に定められています。

「(第24条の3)

1 元請負人は、請負代金の出来形部分に対する支払又は工事完成後における支払を受けたときは、当該支払の対象となった建設工事を施工した下請負人に対して、当該元請負人が支払を受けた金額の出来形に対する割合及び当該下請負人が施工した出来形部分に相応する下請代金を、当該支払を受けた日から一月以内で、かつ、できる限り短い期間内に支払わなければならない。

2 元請負人は、前払金の支払を受けたときは、下請負人に対して、資材の購入、労働者の募集その他建設工事の着手に必要な費用を前払金として支払うよう適切な配慮をしなければならない。」

建設業界の特殊な事情を考慮して上記のように明言している訳ですが、実のところ建設業者の多くが誤った方法によって部分報酬を受け取っていることはあまり知られていません。もしくはその違いを知っているにもかかわらず、現実的な問題により実施できずあえて誤った方法を適用している会社もあるかもしれません。

それでは建設業界で慣習化されている誤った方法と正しい方法とでは、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。

2.工事進行基準と工事完成基準との違いとは

建設業者として仕事を請け負う会社の人間であっても、工事の出来高報酬を見積もる計算方式として工事進行基準と工事完成基準とがあることを知らない方もいるかもしれません。ここで次に工事進行基準と工事完成基準との違いについて解説していきます。

まず工事進行基準についてですが、「工事契約に関する会計基準、運用指針(以下、会計基準とする)」で明記されています。工事の進捗状況を一定の基準に従い数値化し、その数値に基づき原価を適正に把握することが工事進行基準の主な目的となります。また工事進行基準では工事の進捗状況を数値で把握することで、工事期間中の収益の適正化を図ることにも役立っています。

総工費10億円を超える規模の工事であれば法律上では強制的に工事進行基準が適用されるところではありますが、中小企業では基本的にそれほど大規模な工事を請け負うこともまずありません。

それに対して工事完成基準についてですが、現在着手している建築物の完成した割合に応じて出来高を換算する方法となります。こちらの方法が建設業界で一般的な報酬の請求方法として定着していますが、実のところは会計的には正しい方法ではありません。

本来ならば工事進行基準で原価を把握するところを現場の事情によりその計算方法で対応できないため、結果的に工事完成基準が一般的な計算方法としてまかり通っています。そしてさらに知っておいてほしい情報として、工事進行基準もしくは工事完成基準を元に行った出来高請求による報酬は工事収益そのものではないということです。具体的にはどういうことなのでしょうか。

2-1.出来高請求の本来の扱い方とは

基本的に出来高請求については工事の完成した割合に応じて毎月の締め日に間に合うよう請求するものですが、この出来高請求したお金について多くの建設業者が工事収益としてそのまま計上してしまっています。

しかしこれは間違いで、出来高請求をして受け取ったお金は「未完成工事受入金」であり厳密に言えば工事収益ではないのです。本来であれば工事進行基準もしくは工事完成基準のどちらで出来高請求を行ったにせよ、その報酬として受け取ったお金については未完成工事受入金、前受金としていったん計上しておく必要があります。そしてその着手していた工事が完成した時点で、改めてその段階ごとに受け取ってきた前受金を工事収益として計上し直す必要があるのです。

建設業会計であればそうした部分についてそれほど細かい配慮をしながら会計処理を行う必要はないのですが、建設業会計を使おうとするとその値段が割と高くついてしまうのが難点です。そのため建設業の中小企業では建設業会計ではなく一般企業用の商業簿記を利用し、会計処理を済ませていることが多くなります。ただ商業簿記だから正しい会計処理ができないかと言えばそういう訳でもなく、出来高請求による報酬を前受金としていったん計上しておいてから、工事終了後に工事収益として計上し直すことは十分可能なはずです。

ただしここでも建設業界の慢性的な人手不足が問題としてあるため、会計処理に割く人員が不足しているために現場作業員が会計処理を兼任していたり、あるいは経営者の方が会計処理を一手に引き受けていたりする場合があります。そうした場合であればどうしても全ての工事について割ける時間が限られてしまうため、間違った方法であってもより簡便な方法で会計処理を済ませてしまうのが現状のようです。

2-2.部分完成基準とは何か

ここまで読んできた中でも分かる通り、この記事のタイトルにもなっている部分完成基準についてまだ一度も触れていません。工事進行基準と工事完成基準との違いをある程度把握したところで、次に部分完成基準とは何かということについて解説しておきます。

この部分完成基準については法人税法の基本通達という部分で明記されており、その一部を以下に抜粋します。

「(部分完成基準による収益の帰属時期の特例)

法人が請け負った建設工事等について、次に掲げるような事実がある場合には、その建設工事等の全部が完成しないときにおいても、その事業年度において引き渡した建設工事等の量又は完成した部分に対応する工事収入をその事業年度の益金の額に算入する。

(1)一の契約により同種の建設工事等を多量に請け負ったような場合で、その引渡量に従い工事代金を収入する旨の特約又は慣習がある場合

(2)1個の建設工事等であっても、その建設工事等の一部が完成し、その完成した部分を引き渡した都度その割合に応じて工事代金を収入する旨の特約又は慣習がある場合

但し、法64条第1項の「長期大規模工事の請負に係る収益及び費用の帰属事業年度」の規定の適用があるもの及び同条第2項「長期大規模工事以外の工事の請負に係る収益及び費用の帰属事業年度」の規定の適用を受けるものを除く。」

部分完成基準をきちんと理解するためのポイントとしては、完成した一部分を引き渡して収益を認識するという部分にあります。ただ長期的かつ大規模な工事ともなると引き渡しは行われず、前述した工事進行基準にて出来高換算することになります。

そしてここまで読み進めた方の中にも、部分完成基準は工事進行基準や工事完成基準とはまた別物なのかと疑問に思う方もいるかもしれません。結論から言うと、ここで触れた部分完成基準とは工事完成基準の一形態であるということです。つまり工事進行基準が用いられる現場では、工事完成基準の一形態である部分完成基準を併用する機会はまずありません。また工事進行基準を適用しない工事の場合であっても、着手した事業年度中に建築物の一部引き渡しが行われない場合には部分完成基準は適用できないことをも意味しています。

そしてもう一つ部分完成基準について知っておいてほしいこととして、部分完成基準は建設業者が慣習的に行なっている工事完成基準が該当しないということです。工事完成基準ではその時点での完成部分について毎月の締め日に間に合うよう出来高請求している訳ですが、それに対して部分完成基準では「単位」ごとの引き渡しで工事の収益を認識することになります。つまりその単位については報酬が支払われる時点ですでに完成しているということです。

このように工事における報酬の請求方法にはいくつか方法がありますが、どの方法を用いた場合であってもいったん支払われた報酬についてはまず前受金として会計処理をする必要があります。そしてその工事が完成した時点で全ての前受金を工事収益として改めて会計処理するのが正しい会計処理というものです。

 

まとめ

建設業界では特殊なルールも多く全ての事柄をルール通りに行うことはなかなかに難しいことではあります。しかし本来のルールを知らず無視するよりかは、まずは本来のルールを知り現状できることから徐々に始めていくというのが最も重要かもしれません。

しかし本来のルールに従って会社を経営している場合であっても、思い通りにいかないこともあります。例えば会社の資金調達に関して自力ではどうにもできないということもあるかもしれません。

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