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2019/06/26

建設業における部分払いの概要をおさらい

はじめに

一般的な業種であれば仕事を完了した時点で報酬がすぐ受け取れるものですが、建設業では工事の着工から完成までにかなりの時間を要するためその報酬の支払われ方はかなり特殊です。建設業では出来高請求が主となりますが、出来高請求により受け取った報酬が厳密には売上金ではないことを皆さんはご存知でしょうか。

この記事では建設業関係者が忘れがちな、出来高請求に関する知識を改めておさらいしてみました。「出来高請求したお金の処理の仕方は何となく知っている」という方も、知識を整理する意味で一度記事に目を通してみることをおすすめします。

 

1.出来高という概念の意義とは

そもそも建設業では「出来高」と「出来形」という用語がある訳ですが、この用語の区別はそれぞれ以下のようになります。

・出来形:建設途中の建設物における、完成した一部分のことを指す。

・出来高:出来形を金額換算した請負金のことを指す。

つまり工事の出来形に応じて出来高を計算し、工事を管轄する会社へと出来高請求を行うことになります。また類似する用語として「出来高検査」と「出来形検査」とがある訳ですが、これも以下のような意味合いでそれぞれ違いがあります。

・出来形検査:建設物そのものに使用されている寸法や技術に関する検査のこと。

・出来高検査:工事に使用された原材料の原価を把握し、出来形を金額換算する検査のこと。

出来高と出来形との違いについて簡単に確認しましたが、そもそも出来高という概念はなぜ必要なのでしょうか。

建設業では工事の着工から完成までに一年以上を要することも多く、一つの仕事を請け負うと年単位で稼働することになります。そのため一般的な業種のように仕事が完了した時点で報酬を受け取れる制度にすると、遅かれ早かれ請負業者の工事に関する支出をまかなうだけの原資が枯渇してしまうことは目に見えています。つまり建設業を主とする会社の経営をきちんと成り立たせる意味合いで、出来高という概念が必要になってくる訳です。

ここで改めて建設業法第24条3項にある、「下請代金の支払い」の内容を抜粋しておきます。

第24条の3

1 元請負人は、請負代金の出来形部分に対する支払又は工事完成後における支払を受けたときは、当該支払の対象となった建設工事を施工した下請負人に対して、当該元請負人が支払を受けた金額の出来形に対する割合及び当該下請負人が施工した出来形部分に相応する下請代金を、当該支払を受けた日から一月以内で、かつ、できる限り短い期間内に支払わなければならない。

2 元請負人は、前払金の支払を受けたときは、下請負人に対して、資材の購入、労働者の募集その他建設工事の着手に必要な費用を前払金として支払うよう適切な配慮をしなければならない。

法律上の文言からも分かるように、建設業者に対する適切な配慮として報酬の部分払いをすることが定められています。これが記事のタイトルにもなっている建設業における部分払いという訳ですが、出来高請求が建設業者にとって重要であることは言うまでもありません。

2.部分払いの概要

この記事では部分払いと表記していますが、正式には「出来高部分払方式」によって出来高請求するのが建設業者の一般的な報酬の受け取り方となります。出来高という概念については大まかに確認しましたが、この章では次に部分払いが正式にはどのように規定されているのかという部分について解説していきます。

2-1.部分払いの回数

基本的には出来形を出来高に換算した上で部分払いの請求を行う流れになりますが、部分払いそのものにも実は回数制限があります。これは以下の計算式で算出することができます。

部分払請求の上限回数=工期/90(端数は切り捨てとする。)

また工事でかかった収支については会計年度ごとにまとめて計上しているはずですが、各会計年度における部分払いの回数にも実は以下のような制限があります。

各会計年度の部分払請求の上限回数=各会計年度の工期/90(端数は切り捨てとする。)

ただし部分払いを実施し始めた初年度に限り、計算式で算出した数値が4以外になる場合には上限回数にプラス1回加えることができるとも定められています。出来高請求の上限回数についてこういった計算式で算出できるため、予備知識として覚えておくといいでしょう。

2-2.工事進行基準と工事完成基準との違い

部分払いについての話を進めるためにも、ここで今一度「工事進行基準」と「工事完成基準」との違いについておさらいしておきます。正しい会計知識を持っている方であればどちらの方法が正しいかご存知かもしれませんが、改めて明言しておくと工事進行基準が会計上の正しい処理方法となります。

以下で両者の違いについて確認しておきましょう。

・工事進行基準:工事の進捗状況を一定の基準下で数値化し、それに伴う原価を適正に把握する基準のこと。

・工事完成基準:工事の建設物の現状完成している部分の度合いに応じ、その一部分を出来高換算する基準のこと。建設業で慣習的に利用される報酬の算出方法でもある。

工事進行基準が理論的に報酬を計算しているのに対し、工事完成基準は目視で工事の完成度を確認して出来高換算しているに過ぎないことが分かるかと思います。確かに工事完成基準の方が簡便ですが、目視で工事の進捗状況を把握するため確認する人間によって度合いの判断が変動しますし、適正な原価の把握にはつながりません。

総工費10億円超の大規模な工事では工事進行基準の適用が余儀なくされますが、中小企業ではそれほど大規模な工事をそもそも請け負いません。そのため公共事業の下請けなどをする中小企業では、工事完成基準が多用されやすいのかもしれません。

2-3.部分払いの報酬の取り扱い方

工事の進捗状況になる応じた報酬を受け取るためには工事進行基準が必須となりますが、部分払いで受け取った報酬が実は本来の売上金ではないことは意外と知られていません。

実際に出来高請求で受け取った部分払いのお金は「売上金」ではなく、「未成工事受入金」という扱いになります。つまり会計上での処理が違います。部分払いのお金は工事収益そのものではないため、正しい会計処理を行うならば「未成工事受入金」としていったん計上しておき、工事が完成した時点でそれまで計上していた前受金を改めて「売上金」へと振り替えることをしなければなりません。

ただ建設業における多くの会社がこの会計処理を行なっておらず、部分払いのお金を売上金として計上してしまっています。これにも理由があり、建設業の中小企業では建設業会計を利用しておらず、一般の会計ソフトで代用している場合がほとんどです。建設業会計はかなり高額の会計ソフトとなるため、中小企業では購入すること自体がかなりの負担になります。

しかし一般の会計ソフトを利用しているからといって、正しい会計処理が行えない訳ではありません。先程述べた手順で部分払いのお金を計上すればそれで正しい会計処理を行うことができます。

建設工事における部分払いの概要についてざっくりとおさらいしましたが、認識を改めなければならない部分はあったでしょうか。

実際に会計専門の従業員がいない会社ほど、現場作業員が工事の片手間に、あるいは会社の経営者が時間を捻出して会計処理をしているということが多くなってきます。しかし会計処理を正しく行うこと自体はそれほど難しいことではありませんし、未成工事受入金としていったん計上してから完成時点で売上金に振り替える手順そのものは、理解さえしていれば誰でも行えるものです。

ただし会社として請け負っている工事がいつ完成したか、現状進行中の工事でいつ部分払いのお金を受け取ったかなどは、会社側できちんと情報管理をしていなければ把握できないことでもあります。そのため各工事で書類を整理しておく、会計ソフト上でも分かりやすくするためにフォルダ名をどの工事か分かるような名称にするなどの工夫はある程度必要になってきます。

3.中間前金と部分払いとの違いとは

ここまで部分払いについて主におさらいしてきましたが、部分払いと似た性質を持つものとして「中間前金払い」というものがあることをご存知でしょうか。ここで最後に、混同しがちな中間前金払いと部分払いとの違いについて触れておきます。

3-1.出来高検査の有無

中間前金払いと部分払いとでは、実は出来高検査の有無が違います。部分払いの場合では出来高検査を実施して金額換算しなければならないのに対し、中間前金払いの場合では書類審査のみで済ませられるため出来高検査は不要となります。この出来高検査の有無だけでもかなりの違いが生まれます。

3-2.支払い条件

それでは次に支払い条件についても確認しておきましょう。

部分払いの場合では初回請求時に限り、請負代金に対する出来高の割合が30%以上であること(ただし前払金の支出を受けた場合では40%以上でなければならない)という支払い条件があります。

これに対し中間前金払いの場合であれば、以下の支払い条件があります。

(当初40%の前払金を請求した後に)

①工期の1/2を経過している

②工程表により、工期の1/2を経過するまでに実施すべき作業が完了している

③工事の進捗出来高が、請負代金の1/2以上に達している

これだけ見ると、中間前金払いだと支払い条件が多いように感じられるはずです。また参考までに、中間前金払いの流れについても触れておきます。

中間前金払いでは書類審査で出来高検査を免除されるため、認定請求をして工事の契約担当者から認定され、その上で中間前金払い保証手続きを踏んでようやく中間前金払いの請求ができる段取りになります。

手続き自体が複雑であるため中間前金払いに比べれば、部分払いの方がよほど簡便であることが分かるはずです。

 

まとめ

建設業では特殊な報酬の受け取り方が定着していますが、手順の内容と必要性を把握して会計処理について少し工夫するだけで、正しい原価把握と会計処理が行えるようになります。これまで間違った方法で会計処理していたという経営者の方は、これを機に一度その方法を見直してみてはいかがでしょうか。