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2019/09/02

消費税増税により建設業はどう変わる?経過措置の恩恵を受けるには

はじめに

今年の10月1日には消費税が8%から10%に引き上げられる予定であり、増税まであと1ヶ月を切りました。今回は増税による負担を緩和するための対策として「軽減税率」が一部適用されることになっていますが、建設業については適用外となっています。そうなると消費税の実質負担額が増えるだけに思えますが、建設業もまた方法次第で税負担を緩和できる可能性があることを皆さんはご存知でしょうか。

この記事ではそんな増税による建設業への影響と、経過措置の恩恵を受けるための方法について解説します。会社の節税対策を検討している経営者の方は、この記事に目を通して節税対策として役立ててみてはいかがでしょうか。また消費税の増税に関するテーマを扱った記事として、以下の記事もおすすめです。時間がある時に目を通してみるといいでしょう。

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1.消費税増税による建設業への影響とは

今年の10月1日には消費税の増税が予定されていますが、消費税の増税が起こるとどのような影響が出るか考えたことはあるでしょうか。

顧客ありきの商売をしている方にとって特に注意したいのが、消費税が増税されることで多くの消費者が買い控えをするだろうことが想定されています。例えば今まであれば8%の消費税が課税されていたため、電卓でも使わない限りはいくら税金が含まれるのかなかなか分かりにくい状態になっていました。しかし今回は10%に増税されることもあり、税金がいくら含まれるかが暗算でも分かるようになってしまいます。

例えば1万円の買い物をすれば消費税として1,000円課税されるといった具合に、概算で消費税分を把握できてしまうのが非常にまずいのです。また消費税が増税されたからといって給料が増額される訳ではないことから、消費者層の多くが増税前に高い買い物を済ませておきたいという考えを持っていることが容易に想像できます。

そのため9月には多くの商業施設や家電量販店がセールを行うことを予定しており、増税前に少しでも売上を取っておこうという動向がさまざまな業界の各所で確認できます。

建設業が関与する不動産については値段が高額であるため、増税前に慌てて購入しようとする消費者はあまりいないかもしれません。ただ増税後にはやはり買い控えの影響を多分に受けることが予想されるため、建設業であっても増税に関する知識をある程度身につけておく必要はあるでしょう。

2.軽減税率の対象品目とは

ここで増税に伴う「軽減税率」の対象商品についても併せて確認しておきます。

軽減税率が適用されるのは、消費者の生活に深く関与する「食料品(ただし酒類は除く)」と「週2回以上発行される定期購読の新聞紙」となります。

さらに分かりやすく例を挙げると、例えばノンアルコールビールやみりん風調味料は軽減税率の対象品目に該当します。またテイクアウトした食品や出前、さらには果物狩りで収穫した果物の購入費用やホテルなどでの飲料代などは、軽減税率が適用されることになっています。

その一方でレストランやケータリングでの食事、コンビニで販売される新聞紙については軽減税率の対象外として扱われます。

そして8%の税率と10%の税率の商品を同時に購入した場合には、それぞれで適用税率を分けて計算されることになります。これだけ見ると建設業とは何ら関係のない内容であるように思えるかもしれませんが、実はそうではありません。

建設業の方でも特に関連しているのが、請求書の書き方と帳簿のつけ方です。特に請求書については段階的に制度内容が変更されることがすでに決定しており、出来高請求として工事の発注元に請求書を渡すことがある建設業もまた、請求書のどの部分が変更されるかについてはきちんと理解しておかなければなりません。

3.インボイス制度による建設業への悪影響とは

10月1日になるまでは現行の「請求書等保存方式」が採用されているため、通常通りの請求書を発行して渡しておけばまず問題ありません。ただし今年の10月1日以降では「区分請求書等保存方式」が適用され、さらには2023年10月1日からは「適格請求書等保存方式」が適用される予定になっています。この適格請求書等保存方式のことを通称、「インボイス制度」と呼びます。適格請求書のことを「インボイス」と呼び変えているだけとも言えます。

「請求書の書き方が変わることの何が問題なのか」と、インボイス制度のことを軽く考えている方はご存知でしょうか。実はこのインボイス制度に変更されてからは、仕入れや経費に関する消費税分について差し引きできるのは課税事業者のみに限定されてしまうのです。

つまり建設業者の多くが免税事業者であるため、インボイス制度が適用されて以降は、免税事業者と取引先との取引では仕入税額控除が受けられなくなるということです。そしてインボイス発行事業者には「事業者登録番号」が発行されるため、課税事業者であると偽ってインボイスを発行することもできません。

こう書くといよいよ事態の深刻さが見えてくるはずです。インボイス制度の適用後は課税事業者でなければ仕入税額控除が受けられないため、発注元が免税事業者との取引を止め数少ない課税事業者に工事の発注を切り替えることが容易に想像できるということです。

現時点では免税事業者と課税事業者の区別はありませんが、インボイス制度適用後には決定的な優劣がつきます。このことからもインボイス制度適用時まで免税事業者のまま維持し続けることのリスクが、どれほど深刻なものになり得るか理解できたのではないでしょうか。

4.免税事業者のままでいるリスクとは

課税事業者になるためには課税売上高1,000万円以上を達成している必要があり、これに満たない場合には免税事業者として取り扱われることになります。また課税売上高以外にも従業員への給料の支払い総額が1,000万円以上になる場合でも、課税事業者として取り扱われることになっています。

課税事業者でなければインボイスを発行して消費税分を請求できないことになれば、会社にとっては税額控除ができない、費用が増えるのに利益が減るといったデメリットが生じてきます。そしてインボイス制度適用後は課税事業者限定で、その会社名が公表される予定になっています。こうなると免税事業者がかなり不利になってしまうことは言うまでもありません。

消費税の仕入税額控除が受けられないということは取引先にとってもデメリットであるため、免税事業者のまま仕事を減らさないでおこうと思えば、もはや受注金額を引き下げるより他に方法がありません。

5.インボイス発行事業者になるためには

税率の高いEU諸国では零細企業であっても免税を放棄し、仕事量の維持を選択する会社が多く見られます。それだけ税負担額による仕事量への影響力は大きいということです。

仮に免税事業者から課税事業者に変わる場合には、「消費税課税事業者選択届出書」を提出しなければなりません。

そしてその上で2021年10月1日から開催されるという「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出し、インボイス発行事業者としての登録を済ませておく必要があります。

6.請求書の記載項目はどう変わるか

ここまでインボイス制度に伴う免税事業者への悪影響について解説してきましたが、ここで請求書の記載項目がどのように変わっていくかについても軽く触れておきましょう。

現行の請求書等保存方式から区分請求書等保存方式に変わる場合では、以下の項目を請求書に記載しておく必要があります。

①発行者の氏名または名称

②取引年月日

③取引内容

④請求する金額

⑤受領者

⑥軽減税率の対象品目である旨

⑦税率ごとの合計金額

区分請求書に変わった時点で⑥と⑦を追記する必要があるとされますが、建設業では書く機会がほぼないかもしれません。

また区分請求書からインボイスに変更された後では、さらに以下の内容が追加されます。

・税率ごとに区分して合計した課税資産の譲渡等の対価の額(税込または税抜)および適用税率

・税率ごとに区分して合計した消費税額等(消費税額および地方消費税額の合計額)

ここまで見ると請求書の書き方自体は建設業とあまり関係ないように思えるかもしれません。ただ増税に際して請求書の書き方が段階的に変更されることについては、知識として持っておくに越したことはありません。

7.経過措置の恩恵を受けるには

ここまで消費税増税に伴う変更点やその影響について解説してきましたが、ここまでの内容だけでは増税に伴う経過措置の知識としてはまだ肝心な部分で不足があります。それはインボイス発行事業者以外と取引した場合では、2029年9月30日まで段階的な控除を受けられるということです。

これは免税事業者だけが不利益を被ることのないように実施される経過措置なのですが、具体的には以下の内容で控除税率が下がっていきます。

①2023年10月1日から2026年9月30日まで:仕入税額のうち80%が控除される

②2026年10月1日から2029年9月30日まで:仕入税額のうち50%が控除される

③2029年10月1日以降は控除適用なし

つまり2029年9月30日までの間は仕入税額控除を部分的に受けられるため、課税事業者になるのであればこの期間中に変更をかけることが望ましいでしょう。

8.税率を分けて会計処理するには

10月1日からの増税に伴い軽減税率が適用されるため、今後は適用税率を意識しながら会計処理を行なっていく必要があります。例えば会社で出前を取る場合は軽減税率が適用されますが、レストランなどでの外食をした場合では軽減税率が適用されません。軽減税率の対象品目については少し線引きがややこしい部分もあるので、間違えた税率を適用して計算しないように十分注意しましょう。

またインボイス制度が導入されることで、会社の事務的な負担が増大することはまず間違いありません。インボイス制度導入前からインボイスの記載項目を意識して請求書を作成しておくことで、導入後になって慌てて書式を変更する必要もなくなります。

まとめ

免税事業者のままでいれば消費税の納税義務がない一方で、インボイス制度導入時には仕事量が激減してしまうリスクが高くなります。特に免税事業者の多い建設業ではあえて課税事業者に切り替えることで、仕事量を増やすこともできるかもしれません。

また経過措置期間中は免税事業者でも仕入税額控除が受けられるため、「なるべくギリギリまで免税事業者のままで粘りたい」と考える場合は、この経過期間中を目処にインボイス発行事業者への登録を検討してみることをおすすめします。