債務整理

2019/01/30

中小企業の法務で活躍してきた弁護士・田川さんインタビュー

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今回お話を伺ったのは、1992年の独立以来、顧問先である多数の中小企業の法務(紛争、契約、会社法、債権回収、労働、知的財産、事業再生、事業承継等)に関わる相談に応じてきた弁護士・田川貴浩さん。
中小企業の経営者が抱えやすい初歩的な疑問についてお話していただきました。

―まず初めに自己紹介をお願いいたします。

田川さん

弁護士を26年務めております。中小企業の法務を中心にやってきて、独立して20年経ちました。司法試験に合格したのは24歳で、いわゆる旧試験、つまり法科大学院制度がない時期で、毎年の合格者が500人しかいない時代でした。2年間の司法修習の後、柳田野村法律事務所(現在の柳田国際法律事務所)という上場企業や国際法務を扱う事務所に6年間勤めて、その後独立しました。

田川さんは、独立してからは事務所で扱うテーマや顧問先に特徴があるそうです。

田川さん

現在は、顧問先の中小企業が抱える様々な問題に携わっています。一般的なテーマだと、契約、労務問題、債権回収。専門性のあるところではM&A、事業再生・倒産、事業承継、また特殊なところだと知的所有権です。顧問先に多いのは不動産、IT関係です。

―多種多様な相談を受けていらっしゃいますが、どのように経営していらっしゃるのでしょうか?

田川さん

事務所は弁護士一人でやっていて、事務の方と個人営業でやっています。一人なのでタイミングによっては新たなご依頼や顧問先をお断りすることもありますが、特に規模を大きくしようとは思っていません。一人で全てを見る方が、質の高いサービスが提供できると信じているからです。経験の浅い弁護士にはない幅広い経験と専門性から、経営者に寄り添うサービスを提供しています。

20年以上も中小企業に携わってきてわかった、経営者が悩みやすいポイントについてもアドバイスをいただきました。

中小企業の経営者さんからはどの様な悩みをいただくことが多いでしょうか。

田川さん

先ほど一般的なテーマとして挙げました契約、労務問題、債権回収のトラブル対応は多いですね。あと、今お願いしている顧問弁護士が今一つよくないので、新しく良い弁護士を紹介してくれないかという相談も多いです(笑)。

特に中小企業の経営者さんに向けて、良い弁護士さんを見抜くコツや、ここができると良いですよ、などアドバイスがあれば教えてください。

田川さん

シンプルな方法ですと、一つの契約書のレビューを同時に複数の弁護士に提出してみて見比べるのがよいと思います。訴訟は弁護士ならある程度の経験値はあると思いますが、一つの訴訟を同時に複数の弁護士に依頼できません。

―契約書のレビューを見比べるときに注意するべきポイントは何でしょうか?

田川さん

契約書のレビューは簡単なようで、実はそのやり方も結果も経験値に相当左右されると思います。詳しいヒアリングもせず表面的な手直しするだけだったり、あまりに時間がかかったり。見るべきポイントは、ヒアリングで何をどこまで聞くか、コメントの内容・品質、そしてスピード感などの対応能力ですね。少しヒントを言うと、業界の分析、ビジネスの実態、当事者の立ち位置、他の企業との関係などのヒアリングから入るようでなければダメですね。


「資金調達マスター」をご覧の経営者さんが気になるのは、やはり債務周りなのではないでしょうか?

多くの若手経営者は債務整理の知識が少ない中で、どういう状況で、どんな兆候が出たら相談するべきなのでしょうか。

田川さん

債権者側と債務者側で異なります。債務者側について言えば、まずはなるべく早く相談することです。危機的な状況になる相当前、例えば、裁判所から訴状や仮差押命令が届いた段階では遅くて、対応策も限られてしまいます。公正証書の作成を求められたり、内容証明が来たり、“あれ、これは変だな”“普通とは違うな”と思った時にすぐ相談するべきだと思います。

―そういった兆候が起きた時、弁護士、税理士、社労士、行政書士さんなど、誰に聞けばいいのでしょうか?

田川さん

簡単なようで難しいですね。弁護士が常に必要という訳でもありません。適切な判断ができて、適切な方を紹介するだけの経験と人脈がある専門家、ということになりますね。経営者は、そういう方をいつも懐刀にしておくと良いと思います。

そう話す田川さんご自身も、かなりの人脈を持っていらっしゃるそうです。

田川さん

僕の場合は、税理士や会計士はもちろん、資金調達が必要ならノンバンク・ファクタリング業者・銀行等、事業計画の見直しから必要なら再生コンサルタントなど、必要に応じて必要な専門家をご紹介し、またチームを編成することもあります。私の経験と目線から信頼できる人を紹介するようにしています。そういった経験と人脈を持っている専門家にご相談されるのが一番だと思います。

―可能な限り会社の清算・破産ではなく再生を目指すとおっしゃっていますが、それはなぜでしょうか?

田川さん

一つ目は、わが国では、ほぼ例外なく代表者が会社の借入の個人保証している現状がありますね。そのため、会社の清算・破産では、代表者の自宅など個人財産が全て失われて共倒れになってしまいます。個人の生活や財産をどのように守るかという視点は重要ですね。

―個人の生活のためもあって再生を目指されるのですね。二つ目はどういった理由なのでしょうか?

田川さん
二つ目は信用と心情です。会社は経営者にとって対外的な信用の源です。それに苦労して立ち上げて育ててきた経営者にとって、会社は子供のような心情をもつものですよね。ところが、会社はつぶすのは簡単ですが、再生するのは非常に難しい。でも、どんなに難しいことでも意欲と専門家が手助けがあれば、できないと思ったこともできるものなのです。もちろん戦略的に会社をつぶして箱を入れ替える方が合理的ということもあるので、そのような提案をすることもあります。

経営が苦しくなってくると、焦りから冷静に判断できなくなってしまう方もいらっしゃることでしょう。田川さんは、一人の弁護士だけに相談して破産申立をしてしまうことに疑義を唱えています。

ある一人の弁護士に相談して、破産しか選択肢がないと言われたとき、どうすべきでしょうか。資格や専門知識もないと、専門知識がある方の意見に頼ってしまいがちです。セカンドオピニオンを取るのが良いと言いますが、他の弁護士にも同じことを言われるのではないかと考えてしまうのですが……。

田川さん

弁護士は、人によって考え方や物の見方も様々だし、知識・経験も様々です。たとえば経営や数字に明るくない人が圧倒的に多いです。決算書すら見ず、再生見込があるかの検討すらせずに、やみくもに破産申立を勧める方もいます。
しかし、会社が破産すべきか、再生すべきかの判断には、非常に高度な経営分析が必要となります。数字はもちろん、経営者の姿勢・やる気、経費削減はできないか、売上拡大はできないか、資金調達はできないか、資産売却はできないか、借入のリスケジュールはできないか、マーケットの状況はどうか、M&Aはできないか等、様々な要素を経営者目線で見て判断する、という高度な専門的作業なのです。

―では、田川さんの場合は破産申立の相談についてどのように対応していらっしゃるのでしょうか?

田川さん

私はできる限り、破産させず再生できないか、という観点から常に考えています。弁護士のセカンド、サードオピニオンも必要ですし、弁護士以外の専門家(税理士・会計士、再生コンサルタント等)の意見も聞くべきと思います。

―もし、破産する可能性が現実味をおびてきたとき、セカンド、サードオピニオンを聞いた後はどのポイントで弁護士を見極めればよいですか?

田川さん

そうですね、最初の相談で、再生型と破産・清算型の両方を選択肢として示してくれて、まずは再生の見込みがあるか、から検討してくれる弁護士でなければいけません。その上で、再生の見込みの検討にあたり、財務資料を分析し、事業を再生させるアイデアを豊富にもっているか、再生のために必要な人脈をもっているか、などを確認するのがよいと思います。

また、田川さんは中小企業らしい悩みに丁寧に向き合って、長い付き合いを持つことが得意だそうです。

中小企業の依頼ならではの特徴はありますか?

田川さん

大企業の場合は法務部があります。そこで基本的な法務マターを処理しています。そのため、大企業だと専門的なご相談が多いですね。これに対し、中小企業の場合は法務専門スタッフがいない場合も多く、また経営者も変わらないことが多いので、経営者と直接やり取りすることが多くなります。そのため、経営者の個人的な悩みから聞くことも多いです。そして、その中小企業が関わるあらゆる法務問題、つまり労務、債権回収、契約から、競合を蹴落とす戦略、親族や相続も関わる株主関係等、生起するあらゆる問題を、幅広く、そして裏側まで一つ一つ丁寧にヒアリングしながら全て処理していくことになる。中小企業の経営者との長い付き合いの中で、その企業の抱えるあらゆる問題の面倒を見ていく、ということになります。勉強も処理能力も必要で、とても大変ではありますが、やりがいもあり楽しい仕事です。

顧問弁護士がいても何を頼めばいいのか分からないときはどうしたらいいでしょうか?

田川さん

顧問契約をしたのに使わないのは一番もったいないです。たとえば、まず契約書に判子を押す前に全て見てもらってはどうでしょうか。契約書のチェックを怠ったばかりに数年後に痛い目に遭う、ということはよくあります。

―最後に、資金調達マスターに来ていただく方へメッセージをお願いします。

田川さん

“資金調達=お金を借りる”という考えでは狭いです。出資を募る、M&A、債務の圧縮、事業の見直し、借入のリスケなど様々な方法を複合的に考える必要があります。その辺りに詳しい弁護士に相談すれば、その中で適切な方法を勧めてくれるし、必要に応じてワンストップで適切な人脈も紹介してもらえます。まずは気軽に相談してみてほしいです。

確かな経験と広い人脈を活かせるだけでなく、細やかなフォローもしてくれる田川さんは、実際に依頼をしている若手経営者にとって頼もしい存在なのではないでしょうか。
まずは今回のインタビューから自分の偏見について考え直してみるのもいいかもしれませんね。
もし田川さんの専門性を活かした仕事に関心があれば、資金調達マスターにお問い合わせすることをおすすめします。
無料相談フォームからは、資金調達に関するお悩みへのアドバイスだけでなく、弁護士や税理士、社労士のご紹介も行っておりますので、お気軽にお申し込みください。

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