債務整理

2020/01/06

債務整理の一つである任意整理の基礎知識とは

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はじめに

会社員として働く方の多くが大なり小なり借金をしており、その返済を続けながら生計を立てています。しかし中には借金の返済に必要以上にお金をとられ、生活するのもままならないという方もいるかもしれません。そうした方では債務整理が有効となりますが、債務整理の中でも最も利用者が多いとされるのが今回紹介する任意整理です。
この記事では任意整理の基礎知識として、任意整理の主な進め方やそのメリットデメリットなどを順に解説していきます。任意整理について情報収集を検討したいという方は、ぜひ参考にしてみてください。

1.任意整理の概要

この章ではまず任意整理の概要として、任意整理する上で知っておきたい基礎知識について解説していきます。

1-1.任意整理の利用条件

債務整理の中でも比較的簡単とされる任意整理ですが、実際にするとなるとその利用条件を全て満たしておく必要があります。ここで言うところの利用条件とは、①借金の減額後、3年程度で完済できる見込みがあること、②継続的に収入が得られる見込みがあることが求められます。この条件二つを満たしていれば、任意整理を利用できるとみなされます。

1-2.任意整理は裁判所を通さない

債務整理のその他の方法でもある個人再生や自己破産では、何らかの形で裁判所を通して手続きを行うことになります。つまり裁判所に提出するための書類を用意しなければならないため、それだけ時間や手間がかかってしまいます。
しかしその点任意整理であれば代理人として弁護士や司法書士を立てることはあっても、裁判所を通じて何かを行う必要はありません。裁判所を通さない分手続きが簡単なので、多くの方が債務整理をする時に任意整理を選択するという訳です。

1-3.任意整理では将来かかる利息をカットできる

債務整理の方法の一つである任意整理では、まず法定金利の上限金利(15〜20%)で借金を借りた当初までさかのぼって再計算します。そうして新たに算出された金額をもとに借金を減額するのですが、主には将来かかるであろう利息をカットする場合が多いです。一括返済による元金の減額の成功事例も少数はありますが、基本的にはなかなか難しいのが現状と言えます。
また支払いの延滞による遅延損害金がある場合であれば、遅延損害金の減額あるいは免除をしてもらう場合もあります

1-4.任意整理の主な流れ

任意整理の場合であれば個人での交渉も可能ではありますが、多くの方が弁護士や司法書士を代理人として立てます。代理人を立てる場合であれば依頼したい専門家の事務所まで先に出向き、任意整理に関する手続き方法やそのデメリットなどをあらかじめ聞かされます。
それから依頼を受けた専門家が該当する貸金業者に対して、受任通知を発送します。この受任通知が届いた時点で、貸金業者からの督促がある場合にはいったんストップします
貸金業者から提示された過去の取引明細をもとに、専門家が利息制限法に定められた上限金利に基づいて借金を再計算していきます。この再計算のことを「引き直し計算」と呼びます。ここですでに過払い金がある場合には、その金額分だけ借金が減額されることになります
引き直し計算により算出された借金の総額をもとに、専門家は貸金業者に対して和解交渉を行なっていきます。この和解交渉では現状よりも債務の支払いが緩和されることを目指し、合意を得ていきます。
この和解交渉の中で決められた合意に基づき、最後には貸金業者と和解契約を交わします。その和解契約を証拠として残すものとして和解契約書を専門家から受け取り、和解契約書に記された支払開始日より返済を始めていきます。これが任意整理の主な流れです。

1-5.和解契約するかどうかの基準とは

任意整理を検討する際には、自分自身「このままでは借金が返済できない」と思うことがきっかけになるかと思います。ただ任意整理を検討する際に、自分の現在の収支で本当に実施可能かどうかという点が気にかかる方もいるかもしれません。
これは一つの基準ではありますが、あなたの家計にどれだけのプラスが残るかで任意整理が利用できるかを確認することができます。具体的には家計でプラスとして残った金額が借金の総額の1/60以上である場合には任意整理が可能であると判断できます

ここまで任意整理の基礎知識について大まかに確認してきましたが、個人で貸金業者との交渉に臨みたいと考える方はどちらかと言えば少数派です。大多数の方は専門家に依頼して少しでも借金を減額してもらおうと考えるものですが、専門家に依頼する場合には弁護士と司法書士、どちらの専門家を選択するべきなのでしょうか。

2.弁護士と司法書士との使い分けとは

弁護士に頼むか司法書士に頼むかで任意整理の成功率が全然違う、ということは現実にはありません。そのためどちらの専門家を選び依頼しても同様の成果が期待できるものと考えられますが、弁護士と司法書士を使い分ける基準として、「債権者が主張する借金が140万円を超えているかどうか」について意識しておく必要があります。
これはどういうことかというと、司法書士については訴訟および紛争で争う金額が140万円以内のものに限られてしまうことに起因します。つまり貸金業者1社での借金の総額が140万円以上である場合、司法書士では実質的に依頼を引き受けられないというのが正しい表現です。
ただしこの140万円という基準は1社ごとの基準となるため、複数社からお金を借りている場合であっても各社での総額が140万円未満である場合、全社での総額が140万円以上であっても司法書士に依頼することは可能です。これは平成28年度に行われた最高裁での判決で明言されているため、法的にも何ら問題ありません。

3.任意整理のメリットデメリット

ここまで任意整理の基礎知識について解説してきましたが、この章では次に任意整理に関するメリットデメリットについて簡単に紹介しておきます。

3-1.任意整理のメリット

まず任意整理を行う上でのメリットとしては以下の通りです。

①将来利息がカットされるので、借金の総額が減る
②個人再生や自己破産よりも手続きが簡単
③整理する債務を自分で選択できる

3-2.任意整理のデメリット

それに対する任意整理のデメリットとしては以下の通りです。

①信用情報機関に5年程度は事故情報が登録される
②和解条件によってはあまり減額できない場合もある

任意整理の場合では裁判所を通さずに手続きを行える一方で、個人再生や自己破産よりも減額できる金額がかなり限られてしまうというデメリットがあります。また最近では任意整理の和解条件が厳しい貸金業者も増えており、専門家に依頼したからといって必ずしも任意整理が成功する保証はないので要注意です。

4.任意整理のその他の注意点

債務整理の中でも利用者の多い任意整理ですが、事前に知っておくべき注意点というのもいくつかあります。この章では最後に任意整理のその他の注意点について紹介しておきます。

4-1.保証人がいる債務は要注意

借金をしている方の中には保証人ありで借金を作った方も恐らくいるはずです。仮に保証人ありの債務を任意整理した場合、保証人に借金の一括返済の請求が行く場合があります。そのため保証人の方にも同様に債務整理をしてもらうのか、それとも保証人ありの債務については整理せずにおくかを事前に決めておく必要があります

4-2.任意整理が完了するまでは返済をストップしていい

任意整理をしている最中に借金の返済をどうするかが気になる方もいるでしょうが、結論から言えば任意整理を専門家に依頼した時点で返済を一時的にストップすることは特に問題ありません。貸金業者には依頼した専門家から受任通知が発送されますが、行き違いで借金の督促が来た場合には、専門家に依頼した旨を伝えて返済をストップするといいでしょう。

4-3.分割できる年数は利用者の状況次第

任意整理後の分割年数については3年程度と前述しましたが、これは利用者の状況次第によって分割年数を長くしてもらえる可能性もあります。一般的には3〜5年程度になることが多いですが、分割年数をできるだけ長くしてほしい事情がある場合には、依頼する専門家にその理由をきちんと伝えておくことが大切です。

4-4.無職では任意整理できない

任意整理の利用条件として、継続的な収入の見込みがあることを挙げました。つまり任意整理を依頼したいと考えている方が現状無職である場合には、そもそも任意整理することは難しくなります。無職の方の場合では就職が決まってから和解交渉に移ることになるため、なるべく早期に定職に就かなければなりません。ここで言う定職とは正社員に限られていないので、安定的な収入があればアルバイトやパートタイマーであっても特に問題ありません。

4-5.任意整理するとクレジットカードは使えなくなる

任意整理では整理したい債務のみを選択することができます。そのためカード会社の債務を外しておけばクレジットカードは残せそうなものですが、現実にはそううまくいきません。任意整理をした時点で信用情報機関に事故情報が登録されるので、そのカード会社が信用調査をした時点で当該のクレジットカードは利用停止になることが想定されます
債務整理の中でも比較的デメリットが少ないと言われる任意整理ですが、実際には少なからず日常生活に影響を来すことになります。ただし自分が任意整理したからといって家族の情報まで信用情報機関に登録されることは決してありません。家族のことを懸念して任意整理について決めかねているという方は、その心配は杞憂と言っていいでしょう。

まとめ

裁判所を通さず行える任意整理はあくまでも和解交渉である以上、100%成功するとは限りません。ただ実際に試してみないことには結果がどうなるかは誰にも分からないので、任意整理をするべきかどうか迷ったらまずは成功実績の多い専門家の方に相談して意見を聴いてみるというのも一つの方法です。