はじめに
会社を経営する上では事務手続きは切っても切り離せないものですが、経営者の方の多くが数値的な部分に苦手意識を持っている傾向にあります。会社を成長させることだけに専念したい方であれば、事務手続きの部分にまで頭を悩ませることが負担に感じられるかもしれません。融資もまた事務的な手続きを踏むものですが、事務手続きに苦手意識を覚える経営者の方こそ融資に強い税理士に相談することをおすすめします。
そこで今回の記事では、融資に強い税理士とはいったいどういった特徴があるのかについて解説します。融資の際に頼りになる税理士をあらかじめ見つけておけば、資金繰りの面や事務的手続きの部分で頭を悩ませずに済むようになります。会社の成長を第一に考えて専念するためにも、この記事で経営者のパートナーとなるべき税理士について勉強してみましょう。
1章:税理士と公認会計士の違いとは
この記事を読んでいる方の多くが、そもそも税理士とはどういった仕事を頼める専門家なのかをあまり知らないことでしょう。
経営に関する仕事をするイメージのある職種として税理士以外にも、もしかしたら公認会計士を思い浮かべる方がいるかもしれません。ただ実際にはこれらの職種はその業務内容が大幅に違っており、その具体的な違いについては以下のようになります。
・税理士の場合
税務手続きに関する業務を主としており、税金対策に関するアドバイスやそれに伴う申告書などを作成するのがまず一つです。また相続税や贈与税などの納税に関する節税対策や代行作業を行うことも多いです。それ以外にも融資によって資金調達する際の交渉を引き受けています。
基本的には税金に関する法律を熟知した上でどのように会社のお金を節約するか、あるいは融資を受けられるように交渉を持ちかけるかということを中心にして業務をこなしているのです。会社がより利益を上げやすい体質になれるように先導する役割を果たしており、税理士は中小企業を顧客としている場合が多いとされています。
・公認会計士の場合
それに対して公認会計士では、第三者視点での会計処理に関する監査を中心業務としています。会計基準に照らし合わせつつ決算書などの内容に不備や虚偽がないかを確認し、結果的には投資家に対する会社としての信頼を保証する役割を果たします。
顧客としても既に株式上場をしている大企業が多い傾向にあり、業務上で目にする数値の大きさについては公認会計士の方が高額である場合も自然と多くなります。
上記のように税理士は会社のパートナーとしての立ち位置で資金繰りをサポートするのに対して、公認会計士は会社から独立した立ち位置で経営に関する数値を監査しています。
ただ中小企業について言えば、融資の際の交渉や税金対策でのアドバイスの方がよほど会社のためになります。投資家の信頼を勝ち取るまでとなるとまずある程度の規模まで会社を成長させる必要があるため、特に創業期から成長途中の会社については税理士を頼るに越したことはありません。
一口に税理士と言っても全員が全員融資に強いという訳ではありません。各税理士によっても得意な分野とそうでない分野があり、事前に下調べもせずに選んでしまうと後々になってトラブルに発展するリスクがあります。次章では融資に強い税理士を見分けるポイントについて解説していきます。
2章:融資に強い税理士の見分け方とは
ここで業界的な傾向について触れておくと、税理士のおよそ95%以上が相続税あるいは不動産関連の税金対策を得意としています。上記の案件であれば税理士の方が報酬として貰う時間単価がより高く設定されているというのが主な理由です。またこうした案件を相談する会社ほど中堅以上の規模であることが多いため、創業して間もない会社を取引先として仕事をするよりはよほど安定感があることも関与している可能性は考えられます。
元々の数が明らかに少ないこともあるので、「融資に強い税理士なんて本当に見つけられるのか」と不安に感じた方もいるかもしれません。ただ実際には税理士選びのポイントをきちんと確認しておけば、それほど苦労せずに見つけることができます。この章ではそんな融資に強い税理士の見分け方について紹介していきます。
2ー1 起業予定の周辺に事務所があるか
公的機関の融資を検討している方ならばご存知の通り、起業予定の市区町村や自治体がどこかによっても受けられる制度の内容が微妙に違ってきます。そのため税理士を探す上ではまず、起業予定の周辺地域に事務所を持つ税理士の中から選ぶように心がけましょう。
2ー2 ホームページに特定のキーワードがあるか
税理士の業界でも高齢化の波が押し寄せているため、税理士の年齢次第では公式ホームページを設立していない場合ももちろんあります。融資に強い税理士を探す上では情報収集力の高さが物を言うため、公式ホームページがあればその税理士事務所を優先して比較していきます。
この時に「創業融資」や「補助金」、さらには「会社設立」といった特定のキーワードがあるかどうかを隈なく探してみてください。こうしたキーワードを掲げて事務所を宣伝している場合では融資に強い税理士が在籍している可能性が高いです。
2ー3 実績件数が豊富か
税理士としての実力に自信を持っている場合であれば、公式ホームページの目立つ箇所に実際に担当した案件の件数を実績として記入しているはずです。実績件数が豊富であるということはそれだけ経験値を積んでおり、全幅の信頼を寄せるに足る税理士の方が働いていると判断することができます。同地域にめぼしい税理士事務所が複数ある場合には、実績の部分も考慮して比較検討してみてもいいでしょう。
2ー4 明確な返答をくれるか
融資に強い税理士の条件の一つとして、資金調達に関する能力が優れているというものがあります。例えば「自己資金○○万円で融資希望額は○○○万円なのですが、承認される可能性はありますか?」と尋ねるだけでも、その税理士の力量を問うことができます。
融資に関して言えば希望額はそのままに承認してもらえることが極めて難しく、承認はされたけど減額されてしまったということも実際に起こりうるのです。たとえ自分の希望通りの融資が叶いそうにないと宣言された場合でも、それ以外での建設的な方法を説いてくれるのであれば資金調達の能力が高いとみなすことができるでしょう。
2ー5 顧問税理士に選ぶことを催促してこないか
税理士を探す中で、時として「顧問税理士にしてくれたら料金を安くできる」と持ちかけられることがあるかもしれません。ただ顧問税理士を一度任命してしまうと変更するだけでも手続きがかなり煩雑になってしまいます。
顧問税理士に選ぶか選ばないかはあなた自身の自由なので、しきりにその話を持ちかけてくるようであればその税理士はあえて候補から外した方が無難です。
2ー6 肯定的な内容ばかりを話さないか
税理士としてもなるべく多くの仕事を引き受けたいと考えるため、悪質な場合では無理な案件であってもさも希望通りに解決できるように応対する税理士というのもいるものです。そのため融資に関する相談をしている最中に、自分にとって肯定的な内容ばかりを話していないかも確認しておくといいでしょう。
融資の場合では会社の自己資金や経営状態などによっても審査落ちしてしまうことが多々あります。厳しい意見の一つも言われないようであれば、ご機嫌伺いをされているのではないかと疑った方がいいでしょう。
2ー7 十分なコミュニケーションがとれるか
融資に強い税理士を何とか選ぼうと税理士としての能力ばかりを重視してしまいそうになりますが、実際にパートナーとして働く上では相性の部分についても同様に重視するべきです。
コミュニケーションがとりやすい税理士の特徴としては誠実な対応をしてくれたり、自分の話の内容を正確に汲み取ってくれる方が最適です。また返信が疎かな場合だと直近の相談ができないことも考えられます。税理士の方の担当案件数が50件を超えているようであれば対応が遅れることも想定されるので、その点も質問してみることをおすすめします。
以上のようなポイントを確認することで融資に強い税理士を見分けやすくなります。ただし一社だけの話を聞いたくらいでは比較検討する判断材料に欠けるため、税理士選びの際は複数社の事務所に足を運び直接話を聞いてみましょう。
ここまでは融資に強い税理士に関して解説してきましたが、次章では補足として融資に受かるための注意点について紹介していきます。
3章:融資に受かるために注意すべき点とは
融資を承認してもらうためには、公的ないし金融機関の違いを問わず書類審査ならびに面談を受ける必要があります。融資の審査担当者はその金額を後々回収できるかという確認をするため、会計的な部分だけでなく営業的な部分まで細かく突っ込んできます。
そのためいくら税理士に相談したところで、何の対策もせずに融資の承認を得られることはまずありません。この章では参考までに融資に受かるために注意すべき点についていくつか見ていきましょう。
3ー1 ある程度の自己資金の用意がある
近年では自己資金に関する要件は緩和されましたが、実質的には融資希望額のおよそ半分程度は自己資金として用意できていることが望ましいです。審査担当者としても、自己資金さえ用意できていない状態の経営者を信用してお金を貸そうとは思えません。
また借入による資金ではないかを同時に確認されるため、通帳のコピーを示してお金の出所についても詳しく説明する必要があります。
3ー2 妥当な金額を理解している
自社の事業規模や直近の経営戦略にかかる費用などについて熟知している経営者であれば、融資希望額についても妥当な金額がいくらであるかを理解できているはずです。漠然とした説明で融資希望額を伝えたところで信用を勝ち取ることはできないため、事前にどのような理由で融資を希望しているかを細かくまとめておくといいでしょう。
3ー3 利用目的が明確である
上述した内容とも重複しますが、融資の利用目的についても明確に答えられた方が審査担当者の印象は良くなります。妥当な金額を算出する途上で利用目的を明確にしなければ辻褄が合わなくなるため、融資希望額と利用目的は並行で考えた方がいいかもしれません。
3ー4 根拠を示して今後の売上や業績の推移を説明できる
審査担当者の方にしても事前に提出された書類に目を通しているため、数値的な根拠を示す上では提出書類の内容を熟知しておかなければなりません。
書類上の数値に基づき今後の売上や業績の推移を説明することで、融資で受けた金額を滞りなく返済可能な旨を伝えやすくなります。返済できる目処が立てば融資の承認が下りる可能性が高くなるので、営業的な手法や市場の成長性の多岐にわたり事細かに説明することが要求されます。
3ー5 経営状態が健全である
もちろん融資の承認を得るためには経営状態が健全であることが大前提です。経営状態が健全であるかどうかを確認する際に税金の未納がないか、資金繰りで何らかの借入金を利用していないかなど会計処理の部分も突っ込まれやすくなります。自社の評価をより良くするためにも、正しい会計処理のなされた書類を提出することが大切です。
3ー6 審査担当者により多くの情報を提供できる
融資を実際に受けたことのない方であればよく勘違いしている点として、審査担当者にはなるべく多くの情報提供をするべきです。というのも審査担当者が上役に対してプレゼンテーションを行い、融資の承認を得られるように尽力してくれるからです。
弱点を伏せておきたいという気持ちは分かりますが、自社の弱点を理解した上でそれを補えるだけの強みや独自性があることをきっちりと主張しなければなりません。審査担当者は融資の承認を得るための味方であるため、質問された内容には細かい部分まで説明を行うといいでしょう。
まとめ
融資に強い税理士に相談できれば、自力で挑む場合よりも承認を得られる可能性が格段に高くなります。また融資以外でも税務的な手続きについても相談することができるため、経営面でとても頼りになります。
インターネットで調べた際に1ページ目の上位に表示される税理士事務所ほど有能なことが多いため、その点も踏まえて探してみるとより効率的です。
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