借り入れ

2019/05/07

建設業者の消費税の支払い方法とは

はじめに

報酬の支払いサイトについて特殊な設定のある建設業界ですがそればかりでなく、消費税の支払い方法についても独特の方法をとります。建設業者として実際に働く方ではある程度の知識はあるかと思いますが、断片的な知識になっている可能性もあります。

この記事ではそんな建設業界で馴染み深い、消費税の特徴的な支払い方法について解説します。またこの記事では「建設関係の消費税の課税仕入れの時期(タイミング)」の内容を参考にしています。

 

1.建設業者の消費税は仮払い

建設業者として働く方であれば周知の事実ですが、建設業界は工事に着工してから完成するまでにかなりの時間がかかるため、消費税については仮払いで支払ったことにする方式が採用されています。この仮払いのことを「課税仕入れの時期」と呼びますが、この課税仕入れの時期は基本的に建造物の引き渡しを受けた時点で発生するものとされています。

ただ前述したように工事期間が長いこともあり、建設業者については課税仕入れの時期を自ら選択することも可能です。この章ではまず課税仕入れの時期を各種類について確認していくことにしましょう。

1-1.建設仮勘定の取り扱い方

自社で使用する固定資産を取得する際にかかる支出のことを建設仮勘定と呼び、これについては未完成でかつ建造物として本勘定になる前段階のもののことを指します。建設仮勘定の具体的な取り扱いについては以下のようになります。

「①設計料など固定資産の完成までに引き渡しや役務の提供が完了している部分は、その都度課税仕入れとすることができる

②設計料など完成までに引き渡しや役務の提供が完了している部分も含めて、本体の完成引き渡しのときにまとめて課税仕入れとすることもできる」

手付金や中間金といったお金については本体部分が未完成のため課税仕入れすることができない一方で、設計料のように本体部分が未完成でもすでに業務が完了している場合には、業務完了時点で順に課税仕入れすることができます。

1-2.未成工事支出金の取り扱い方

自社で販売目的の建造物に対して支払った支出のことを未成工事支出金と呼び、これについては未完成でかつ棚卸資産になる以前の状態でなければなりません。この未成工事支出金についても取り扱い方が以下のように決まっています。

「① 棚卸資産である建築物の完成までに引き渡しや役務の提供が完了している部分は、その都度課税仕入れとすることができる

②棚卸資産である建築物の完成までに引き渡しや役務の提供が完了している部分も含めて、継続適用を要件に本体の完成引き渡しのときにまとめて課税仕入れとすることもできる」

未成工事支出金の場合でも建設仮勘定と同様に、業務がすでに完了しているものについてはその都度課税仕入れとすることができます。ただし本体部分の完成時にまとめて課税仕入れとしたい場合については継続適用が要件となるため、それ以降全ての建造物について完成時点でまとめて課税仕入れするようにしなければなりません。一回限りで課税仕入れのタイミングを変えられる訳ではないので注意しましょう。

1-3.出来高検収書の取り扱い方

これは元請け業者について言えることですが、元請け業者が下請け業者に建設工事を請け負わせる場合には出来高検収書を発行する必要があります。これは出来高の内容とその金額を記載した書類のことを指し、その書類とともに請負代金の一部を支払うことになります。出来高検収書を取り扱う場合にももちろん、出来高を支払ったその金額分だけ課税仕入れを順次行うことができます。

ただその一方で下請け業者については出来高を受け取る都度、その金額分だけ課税売上げにする必要はありません。下請け業者の場合では出来高検収書とともに出来高を受け取った時点で課税売上げにしてもいいですし、工事が完成した時点でまとめて課税仕入れとしてもいいです。

建設業者の消費税の支払い方法については課税仕入れの時期を設定することで、消費税を仮払いしたことにできるのが特徴的です。ただし未成工事支出金の場合でまとめて課税仕入れとするためには継続適用が要件となることを忘れがちなので、その点だけ注意するようにしましょう。

 

2.建設業者で言うところの出来高とは

前章の内容で出来高という言葉が出て来たので、ここで出来高の概念についてもおさらいしておきます。

一般的な業種では仕事が完了した時点で報酬の支払いが確定するものですが、建設業者の場合では工事が完成するまでに最低でも数ヶ月、長ければ数年はかかることが多いです。そのため一般的な業種のように工事の完成時点で報酬を支払うといった決まりにしてしまうと、工事を行う建設業者の会社経営の資金調達ができなくなり、会社経営そのものが破綻してしまいます。

そこで建設業者については報酬の支払いサイトが長いことを考慮され、出来形を利用して出来高を算出するようになりました。

2-1.出来高と出来形の違いとは

さらに詳しく言うならば、出来高の概念について知る上でかかせないのが出来形の知識についてです。一見すると名前の響きが酷似している出来高と出来形ですが、実際にはそれぞれの意味はずいぶんと異なります。

例えば出来高がお金について言及する言葉であるのに対して、出来形は建造物について言及する言葉になっています。工事の建造物の完成部分の割合を出来形として、それを元に換算して請負業者が下請け業者に対して部分的に支払う報酬が出来高となります。

この発注者から請負業者、請負業者から下請け業者へと出来高を支払う方法のことを出来高払いと呼びますが、これについては建設業法第24条3項で詳しく定められています。基本的には工事の発注者から出来高払いを受け取った時には、請負業者は一ヶ月以内にその報酬を下請け業者へと支払わなければならない旨が書かれています。ただし文言としては一ヶ月以内とありますが、実際には出来高払いを受け取った時点でなるべく速やかに出来高を下請け業者まで支払うようにしなければなりません。これは意外と見落としがちなので、出来高払いを受けたらすぐに下請け業者まで流すよう徹底するといいでしょう。

2-2.出来高の計算方法には2種類ある?

工事の完成した部分に応じて発生する報酬のことを出来高と呼ぶことは前述しましたが、それでは出来高の計算方法が実は2種類あることをご存知でしょうか。この2種類の方法のことをそれぞれ工事完成基準と工事進行基準と呼びますが、一昔前までの日本では工事完成基準による出来高請求が一般的でした。しかし現在では適用条件に合致する工事については工事進行基準で出来高請求するように制度が改定されており、工事完成基準だけを知っていればいいというものではなくなりました。

これらの工事完成基準と工事進行基準とでは明確な違いがあります。例えば工事完成基準が工事の進行中に発生した売上や経費を一定の工事が終わる都度請求するのに対し、工事進行基準では工事の進捗状況に応じて売上や経費を分散させて都度計上していくことになります。

工事完成基準では工事の全工程が終わった時点から工事の収支を計算することになるため、どんぶり勘定になってしまう場合がほとんどでした。しかし工事進行基準が導入されたことにより、建設業者が工事中の修正依頼やその他の要望についても追加で計上できるようになりました。

また工事進行基準ができたことで報酬以外の部分でもメリットがいくつかありました。工事進行基準のおかげで工事の完成時点でようやく大幅な赤字が発覚することもなくなり、急な残業が増えるといったリスクが低減されました。もちろん工事の遅延を未然に防止するのにも役立ちます。

下請け業者についてはその性質上立場が弱いこともあり、発注者や請負業者のご機嫌伺いをしながら仕事をしなければならない時代も実際にあったのです。赤字覚悟で安い下請け代金で工事を請け負い、赤字を膨らませてしまいついには倒産してしまう会社も中にはありました。

しかし工事進行基準ができたことで下請け業者が工事の進捗状況に応じて見積もりを出せるようになり、下請け業者が損をしない制度へと改定されたことは大きな前進です。また工事進行基準では追加の依頼についても加えて計上できるようになったため、下請け業者としては報酬が上乗せされるだけでなく、発注者や請負業者からの無理な要望に応える必要がなくなったのです。

そのため現場作業員の残業を減らすことにつながり、結果的に労働環境の改善にもつながります。

ただ工事進行基準にはメリットが多い一方で、それなりのデメリットも存在します。工事進行基準では工事の進捗状況に応じて売上げや経費を計上する必要があり、手順が煩雑になってしまいました。また依頼者への説明を事細かにしなければならず、説明が不十分な状態では不要なトラブルを招くリスクもあります。

現場作業員の残業が減るというメリットを前述しましたが、デメリットとして営業が契約をとる際にかなりの負担がかかること、開発現場で工事の進捗率を常に把握しておかなければならないことが増えてしまいました。

これまで工事完成基準でどんぶり勘定してきた建設業者にとってはかなりの負担を強いる制度であるとも言え、建設業者の中には未だに工事完成基準を適用し続けるところもあるほどです。ただ適正な報酬を支払ってもらうのに役立つ制度であるため、負担こそあるものの積極的に導入していくことが望まれます。

 

まとめ

建設業者では報酬の支払い方法が特殊なことはもちろん、消費税の支払い方法についても一癖あります。ただ実践しないことには身につかない知識ばかりなので、慣れるまでは難しい部分もありますが徐々にでも建設業者ならではの方法に慣れ親しむことで適正な報酬を貰えること、ひいては仕事量の軽減にもつながります。

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