はじめに
企業を経営する上では、その生命線となる資金繰りが重要であることはもちろんですが、自社資金だけではどうしても経営が立ち行かなくなってしまうことが時としてあります。そうした時には銀行やノンバンクからの融資を検討することもあるでしょうが、中小企業の場合だと信用問題の兼ね合いで融資を断られることが多々あります。
そこで今回の記事では、中小企業が知っておきたい信用保証協会について解説します。信用保証協会を利用することで、融資の審査が通常の場合よりも通りやすくなることも十分考えられます。融資を受けることを現在検討しているのであれば、この機会に信用保証協会について一度学んでみてはいかがでしょうか。
1章:信用保証協会の概要
この章ではまず信用保証協会の概要と題して、その歴史やどういった団体であるのかについて解説していきます。冒頭でも述べたように金融機関などからの融資を受ける際に利用する団体なのですが、はたしてどのような役割を担っているのでしょうか。
1ー1 信用保証協会の歴史
そもそもの始まりは1937年にまで遡ります。
同年8月に「社団法人東京信用保証協会」として発足されており、それから十年以上経った1950年12月に「中小企業信用保険法」が正式に公布されました。この法律に基づいて信用保証制度というものが創設されたのですが、この信用保証協会についてさらに詳しい規定まで設定するものとなったのが、1953年に公布された「信用保証協会法」となります。
それから現在に至るまでの間、さまざまな保証制度を導入しながら中小企業の融資を支える役割を担っています。信用保証協会の歴史は意外と古いことからも、信頼の置ける団体であることが分かるのではないでしょうか。
1ー2 信用保証協会の役割とは
信用保証協会の歴史が古いとはいえ、これまで信用保証協会を利用したことのない方であればこの団体はどういった役割を担っているのかあまり知らないという方も実際にいることでしょう。
この信用保証協会の役割はひとえに債務を保証してくれる点にあります。
例えば中小企業が銀行やノンバンクからの融資を申請した際に、断られる理由としてよく聞くのが信用問題についてです。有名企業のように資本力もあり歴史も古い企業ともなれば融資の返済が滞ることは考えにくいですし、またその弁済が難しくなった場合であっても担保として預かっているものを債務の返済に充てんすることができます。
中小企業の場合では経営規模がそれほど大きくないために資本金の額が知れており、また融資の返済に充てんできるだけの担保を用意できないことがしばしばあります。仮に弁済ができないほどの経営難に陥った場合を想定すると、中小企業の場合は金融機関側が融資分をどうしても回収することができなくなる可能性が大企業の場合よりもかなり高くなってしまいます。いわゆる貸し倒れという状態になるのです。
お金を貸す側としてもなるべくならばきちんと返済してくれる大企業に貸したいと思いますし、中小企業への融資を受けるとしても何らかの保証が欲しいと思うのは当然のことです。そんな金融機関からの融資を受けたい中小企業と融資の返済に対する保証が欲しい金融機関とをつなぐのが、この信用保証協会になります。
信用保証協会を利用して金融機関から融資を受けることで一時的に返済不可能になった場合でも、信用保証協会が残りの債務を弁済してくれます。ただその分無償でという訳ではなく、信用保証協会の利用には「保証料」としていくらかの金額を支払う必要があります。
中小企業の資金繰りを手助けするために信用保証協会は設立されましたが、実際に利用するとなるとどういった手順を踏まなければならないのでしょうか。
次章では主な利用の流れについて解説します。
2章:信用保証協会の利用方法
信用保証協会がどういった団体であるかは紹介しましたが、実際に利用する段階まで来ると利用方法を知らなければ手続きの部分でつまずいてしまうことになります。この章では信用保証協会を利用する際の具体的な流れについて解説していきます。
2ー1 保証の申し込み
中小企業が金融機関から融資を申請しそのまますんなり受けられればいいですが、大抵の場合は断られてしまいます。債務の返済に関して信用されていない場合であれば、信用保証協会を利用することで融資してもらえる可能性が格段に高くなります。
まず保証の申し込みの際には、信用保証協会かもしくは融資を申請したい金融機関のいずれかで行うことができます。この場合では融資を希望する金融機関での申し込みが一般的です。
金融機関で保証の申し込みを行うと、その金融機関から代理で信用保証協会へと保証の依頼が入ります。そのため保証の申し込みでは金融機関と信用保証協会の両方で申し込む必要がないことを覚えておくといいでしょう。
2ー2 保証の承諾
信用保証協会に保証の依頼が来ると、まずは信用保証協会側で保証の諾否を決定します。そして信用保証協会が保証することを承諾した時点で、先程の金融機関へとその連絡が行きます。
2ー3 融資の開始
信用保証協会が債務の保証をすることを鑑みた上で融資に応じた場合、程なくして該当する金融機関からの融資が開始されます。
2ー4 債務の返済
融資を受けたとはいえ、そのお金が返済義務のないものでないことは周知の事実です。融資を受けた金額とその利子分を含め、中小企業側は金融機関で取り決めた金額を毎月少しずつ返済していく必要があります。
また融資に関する返済とはまた別に信用保証協会へ支払う保証料も必要なので、その点は注意しましょう。
2ー5 債務の代理弁済
会社の資金繰りに特に問題がない場合であれば、自身で融資の返済を滞りなく済ませることができるでしょう。しかし会社の経営にトラブルはつきものです。何らかのトラブルが発生したことにより、返済が一時的に滞る、あるいは当面の返済額を確保できない厳しい状態になることも恐らくあるはずです。
そうした場合では信用保証協会が既に介入しているため、金融機関に対して残りの債務を代理弁済してくれます。これにより金融機関への返済は終了し、中小企業側も金融機関にお金を返済する義務がなくなります。
2ー6 代理弁済額への返済
ただし信用保証協会は債務の弁済を引き受けるだけであって、その残債分を帳消しにする役割は担っていません。つまり金融機関への返済から打って変わり、今度は信用保証協会への返済が始まります。一括で返済しなければならない訳ではありませんが、こちらの場合についても毎月少しずつ返済を続けていくことになります。
信用保証協会の利用についてはそれほど難しい手順がないため、初めて利用する方でも特に問題なく申し込むことができるはずです。またその利用の際にはいくつか注意点があるのですが、これについては後ほど詳しく解説します。
3章:信用保証協会を利用するメリット
信用保証協会の利用の大まかな流れについて解説したところで、次はそのメリットについて紹介しておきます。希望する金融機関から融資を受けられる可能性を格段に引き上げてくれるだけでも十分なメリットがあるように感じられますが、それ以外にも別のメリットがいくつかあります。
信用保証協会の利用を検討する材料にもなるので、以下で順々に見ていきましょう。
3ー1 長期間の借り入れができる
貸す側である金融機関からすれば貸し倒れになることを恐れるため、通常であればなるべく短期間での借り入れを提案してくる場合があります。しかし借りる側としてはできる限り長期的な借り入れの方が、毎月の返済額も少なくなりその分会社の資金繰りを圧迫しません。
信用保証協会を利用すれば貸し倒れのリスクを未然に防ぐことができるため、長期間の借り入れができる可能性が高くなります。
3ー2 保証人が原則不要
債務の弁済を保証するために存在する信用保証協会ですが、その利用に際してかつては第三者である連帯保証人の用意が必須でした。そのため大半の場合では会社の経営者の親族が連帯保証人として立てられていたのですが、その事実が露呈したことで一時期は社会問題にまで発展しました。
そのため中小企業庁の判断により2006年3月、「信用保証協会における第三者保証人徴求の原則禁止について」という通達がなされるまでに至りました。
それ以降、信用保証協会の利用については経営責任者以外での連帯保証人ならびに個人事業主の保証人は原則不要となりました。
3ー3 借り入れの利率が低くなる
金融機関としても途中で返済が止まってしまうリスクを加味して利率を高く設定することがしばしばあります。ただ信用保証協会に保証してもらった状態での融資であれば、貸し倒れのリスクについて心配がなくなるため場合によっては借り入れの利率が低くなります。
もちろん信用保証協会に対する保証料の支払いもありますが、総合的に見ると保証なしで融資を受ける場合よりも返済額が安く収まることも実際にあります。
3ー4 保証制度にも種類がある
信用保証協会が採用している保証制度にも実はいくつか種類があり、自身の会社の経営状況に合わせた保証制度を検討できるのも信用保証協会を利用するメリットの一つと言えるでしょう。詳しい内容についてここでは割愛しますが、中には不動産担保不要の制度や社債を発行して市場から資金を調達できる制度まであります。自身のニーズに合った保証制度を検討する余地があるのは経営者にとって嬉しいメリットです。
3ー5 プロパー融資を利用できる可能性が高くなる
信用保証協会のような保証付きの融資によってその金融機関との信頼関係を地道に築いていければ、いずれは保証なしでのプロパー融資を利用できる可能性も出てくるかもしれません。またプロパー融資か保証付融資のどちらか一本に限らず、上手く併用することで融資枠を拡大することにも役立てられる可能性があります。
金融機関との信頼関係を築けば融資する金額の上限が引き上げられたり、返済に困った時でも便宜を図ってくれるようになります。それらのメリットを得るためにも、信用保証協会を利用しての借り入れは非常に有意義であると言えるでしょう。
信用保証協会を利用することで得られるメリットには即時的なものもあれば、長期的に見てメリットに変わりうるものまであることを紹介しました。次章では信用保証協会を利用する上での注意点について解説します。
4章:信用保証協会を利用する注意点とは
信用保証協会の利用にはメリットが数多くあることを前章では紹介しましたが、この章では記事のまとめとして信用保証協会を利用する上での注意点について挙げておきます。
4ー1 返済義務がなくなる訳ではない
信用保証協会は金融機関への返済が滞った時にその残債分を弁済してくれることは前述しました。しかしあくまでもそれは代理弁済であって、返済義務の帳消しとは違います。
金融機関への返済がなくなっただけで信用保証協会への返済を新たに始めなければならないため、その点は勘違いしないように注意しましょう。
4ー2 保証を受けても融資してもらえない場合がある
信用保証協会を利用する場合での流れとして、信用保証協会で保証を承諾された後にさらに金融機関による融資の承認を受けなければなりません。このため信用保証協会では保証の承諾があったとしても、金融機関がそれでも融資を断った場合には結局のところ借り入れすることはできません。
金融機関と信用保証協会、この両方の承諾を得ないと融資が始まらないことは肝に銘じておくといいでしょう。
4ー3 申請できる企業の規模が限られる
そもそも信用保証協会とは中小企業の資金繰りを円滑に行うための団体となります。そのため信用保証協会を利用できる会社の規模に限度があり、あまりに大きな規模の会社ともなると信用保証協会を利用することができません。保証の可否に関する会社の規模は各業態でそれぞれ異なるため、気になる方は一度公式HPを確認してみることをおすすめします。
まとめ
信用保証協会は中小企業にとって心強い味方ではありますが、メリットばかり存在する訳でもありません。信用保証協会に支払うべき保証料についても、資金繰りの状況次第では意外と高く感じられることも恐らくあるでしょう。
会社の経営に差し障りない範囲で利用の可否を判断し、利用する場合でもなるべく計画的に対処していくことが大切です。
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