はじめに
2020年に東京オリンピックが控えていることもあり、建設業は一見すると盛況であるかのように見えるかもしれません。しかし実際にはいくら仕事が増えたところで建設業ならではの問題が解決されておらず、結果的に資金繰りがひっ迫している中小企業が数多く存在します。また建設業では資金調達が難しいとも言われており、売り上げはあっても銀行融資を受けられずギリギリの状態で資金繰りして凌いでいるという企業も実際にあるはずです。
この記事では建設業における資金調達の難しさと、建設業でも利用可能とされる資金調達の方法について解説します。この業界ならではの慣習によるものが原因になっているとも考えられるので、後半では建設業者にあり得る資金調達の失敗談についても紹介します。最後まで一読いただければ幸いです。
1.建設業界が抱える資金繰りの現状とは
建設業における資金調達が何故難しいとされるのか、その理由を知るためにもまずは建設業界の現状についてある程度知識を整理しておく必要があります。この章では建設業界が抱える資金繰りの現状について簡単にですが紹介しておきます。
1-1.支払いが完了するまでの期間が長い
建設業界に関する取り決めをしているのが俗に言う建設業法なのですが、この法律では下請け業者に対する支払いは1ヶ月以内に済まさなければならないとされています。しかし実際にはそれが遵守されることが稀であり、例えば出来高制が採用されている工事であれば工事完了の翌月、さらに遅れた場合には翌々月まで支払いがされないこともあるほどです。
特に着工金や中間金の支払いがない工事ともなると完成するまでお金が一切入ってこないことになります。
1-2.立替払いが多発しやすい
建設業で働く方であればよく分かると思いますが、工事の規模が大きいほど現場作業員や施工管理者などのような従業員が多数必要になってきます。そのため下請け企業は工事を期日に間に合わせるためにその都度業者を雇わなければならず、これらの業者については下請け企業で立替払いをしなければなりません。
立替払いの件数が多いほど企業の資金は枯渇していき、当然企業の資金繰りは圧迫されてしまいます。
1-3.会計処理がずさん
これは建設業界が長らく抱える問題点でもあるのですが、建設業を生業としている中小企業の多くが会計処理をずさんに行なっていることが挙げられます。会計処理がずさんということはすなわち、現時点までにどれだけの出費や立替払いが発生しているかを正確に把握できない結果へと直結しています。
特に会計処理を専門とする従業員がいない会社では、会計処理が行われていない空白の期間があるところもしばしば散見されます。
建設業では工事の元請け企業が下請け企業よりも優位な立場にあり、下請け企業にとっては不利な条件を提示された場合であっても仕事を受注できる状態を維持するため、元請け企業の望む形で仕事の契約を結んでしまうこともよくある話です。
赤字になることが想定される工事であっても受注せざるを得ない状況に追い込まれることもあり、建設業はさまざまな要因が密接に関連していることでその資金繰りが悪化しやすい状況に陥りやすいと言えるかもしれません。
2.建設業における資金調達とは
建設業での資金繰りの厳しさについては前述しましたが、工事の報酬が支払われるまでの期間が長いからこそ資金調達の方法については常に模索する必要があります。それでは建設業における資金調達の方法としてはどのようなものが適切なのでしょうか。
2-1.銀行融資は不向きなことが多い
建設業では銀行融資を受けることが難しいという話を聞いたことのある方もいるかと思いますが、そもそもこれは何故なのでしょうか。
銀行側は返済可能性が高いと判断できる企業へと優先的に融資を行いたい訳ですが、建設業における中小企業の多くが赤字経営だったり税金の滞納があったりします。すると貸し倒れするリスクが目に見えているため、銀行としてもおいそれと融資を承認できない現状があります。
また銀行融資では審査に時間がかかり、プロパー融資では2〜3週間、保証付融資では1ヶ月〜1ヶ月半程度かかるとも言われています。そのため緊急時のつなぎ資金として当てにするには無理があり、銀行融資と建設業との相性はあまり良くありません。
2-2.ファクタリングを利用する企業が多い
上記の理由により、建設業ではファクタリングによって資金調達する中小企業が割と多くなります。ファクタリングでは売掛債権さえあれば短期間のうちに現金が手に入るため、支払いが遅れがちなこの業界では非常に便利と言えます。
建設業では前章で紹介した内容が原因となり、資金調達を円滑にできるかどうかがそのまま死活問題に直結していると言えます。
ただそんな厳しい現実がある建設業であっても、専門家の力を借りることで資金調達の成功率を上げることができます。専門家の力を借りる簡単な方法の詳細については記事の最後で紹介しているので、最後まで読み進めてみることをおすすめします。
3.各フェーズにおける資金調達の方法とは
建設業における資金調達が難しいとはいえ、それを生業とする中小企業はそれでも資金調達することを諦める訳にはいきません。また資金調達の方法は会社の状況に合わせて変化させることも重要なため、その状況次第で適した方法が微妙に異なります。
この章では各フェーズにおける資金調達の方法について解説していきます。
3-1.創業時
建設業に限らず創業時に最も有用な方法として勧められるのが、日本政策金融公庫による融資制度となります。その中でもおすすめなのが新創業融資制度と、もう一つは中小企業経営力強化資金です。以下でそれぞれの概要について簡単に紹介しておきます。
①新創業融資制度
企業の資金調達の方法として銀行融資がよく選ばれる理由として、金利が低いことが挙げられます。ただ銀行融資と同様に低金利でお金を貸してくれるところがあり、それが日本政策金融公庫です。
日本政策金融公庫では創業時のスタートアップを支援するため、新創業融資制度というものを実施しています。スタートアップの会社からすれば無担保かつ無保証というかなりの好条件で融資を受けられる点は魅力的ですが、審査が非常に厳しく1〜2割程度の会社しか審査に通過できないという話もあります。
提出書類の内容が数値に基づく内容かつ的を射ていることはもちろん、面談時の質問にはなるべく具体的に答えなければならないなど、そのハードルはかなり高いです。また自己資金の金額がかなり重視されるため、融資希望額が自己資金の約2倍以上だと審査の目はより厳しくなるとも言われています。
②中小企業経営力強化資金
そんな新創業融資制度よりも多くのメリットがあるとされるのが、この中小企業経営力強化資金です。これは認定支援機関のサポートを受けることが必須条件となるため、お金のない会社ではなかなか厳しく感じられるかもしれません。
しかし中小企業経営力強化資金では①の半分の低金利でお金を借りられるだけでなく、自己資金に関する条件がない上に限度額が①よりも高いというように非常に好条件です。また①と比較すると融資実行までの期間が短いことも特徴的です。
3-2.黒字経営時
創業時から順調に会社を成長させ黒字経営ができている時であれば、銀行融資による資金調達を行いやすい時期であるとも言えます。この時に収益が上がりかつ今後必要な資金額が明確に分かっていれば、立替払いに充てるための資金調達が目的の場合であっても予定を把握していない場合よりは前向きに検討してくれる余地はあります。
銀行側も計画性のある企業かどうかは見ているので、日頃から細かく立替払いや固定費の支払いなどの支出を把握しておくで好意的な印象を持ってもらいやすくなります。
3-3.緊急時や赤字経営時
黒字経営の時であれば銀行融資を検討する余地はありますが、緊急のつなぎ資金が必要な時や赤字経営時ともなると銀行融資を当てにすることはできません。そうした場合にはまず銀行融資を受けられることがないと考えるべきであり、どうしても融資での資金調達が難しい場合にはファクタリングが有用です。
ファクタリングであれば売掛債権を売却することで前倒しで資金調達することができるため、支払いの遅れによる資金繰りの悪化を緩和することができます。また不要な機材があれば売却する、余分な経費を削減するといった方法でも多少なりと資金繰りを改善できる可能性はあります。
赤字経営に傾いた中小企業でよくやりがちなのが、消費者金融での借り入れです。審査基準が緩く借りやすい一方で金利が高く設定されているため、その後の月々の返済だけでかえって資金繰りが圧迫されるリスクもあります。
また借りやすさから短期間のうちに頻回利用してしまうと利息分で余分なお金まで浪費しかねないので、利用するにしても単発的に、それも緊急時以外は利用しないなどの予防線は張っておくべきかもしれません。
建設業では資金調達を成功させることのハードルが高い傾向にありますが、正しい知識と方法を知ることでその成功率は格段に高まります。
4.建設業における資金調達のよくある失敗談とは
この章では次に建設業によくある失敗談を挙げておきましょう。
建設業に特に多い失敗談としては、会計処理がずさんなことによる支払い金額の把握ミスです。現時点でどれくらいの立替払いが発生しているか分からない、固定費や税金の支払い分を確保できていなかったなど、会計処理を怠っている分のツケがそこで回ってくるという話はよく聞きます。
立替払いが多発しやすく元請けからの支払いも遅れがちな建設業では、確かに資金繰りが圧迫されやすい条件が揃っています。しかし会計処理は銀行融資をするためだけのものではなく、会社の収支を把握して財務体質を健全なものへと整えるための判断材料となるべきものです。
「忙しくて会計処理まで手が回らない」と言うのであれば会計処理を専門とする従業員を雇う、もしくは税理士や公認会計士などに依頼するといった対策をとることで資金繰りをより改善しやすい環境へと変化させることができます。
5.新型コロナによる建設業への影響とは
5-1.新型コロナによる建設業の動向とは
5-2.建設業では衛生環境の改善が難しい
5-3.建設業における中小企業の現状とは
まとめ
業界ならではの特殊な事情があり資金繰りに苦しむ会社が多い建設業ですが、会計処理の重要性を見誤るあまり自らの首を絞めてしまっている現状についてはいずれ見直さなければなりません。
「建設業だから資金調達が難しくて当然」と思うのではなく、まずはできる範囲から始めて資金繰りの改善に努めることが大切です。
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