ファクタリング
2019/08/01
運送業の資金繰り問題を解決するファクタリングという選択肢
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はじめに
近年では通販サイトの利用率が上昇していることもあり、運送業の営業利益率は国内全体で黒字に転じていると言われています。しかし運送業で会社経営を行う下請け会社では業界全体の好景気とは関係なく、また経営者の方は厳しい資金繰りの状態に頭を抱えてしまうことも少なくありません。消費者の生活にかかせない物流を担う運送業ですが、一時的な資金繰りが上手くいかず会社経営が深刻な赤字に傾いてしまうという話もよく聞きます。
そんな厳しい局面に直面することの多い運送業界では、今より多くの会社がファクタリングを利用して資金調達を行うようになりました。この記事では運送業の資金繰り問題を解決するために、なぜファクタリングが選ばれているのかを解説しました。資金調達の方法に頭を悩ませがちな経営者の方ほど読んでほしい内容となっているので、ぜひ一度記事の内容に目を通してみてください。
1.運送業の現状とは
冒頭でも触れた通り、ネット通販の利用率に伴い物流業界全体では売上が上昇している傾向にあります。しかしどこの業界でも孫請け、日孫請けといった下請け会社は存在するもので、運送業についてもそれは同様です。
多くの中小企業が特定の取引先から継続的に仕事を受注していることが多いため、立場的に弱い状態で仕事を請け負っている場合も多いと言えます。また近年ではガソリン代が高騰していることもあり、燃料代の経費圧迫により利益率が下がることもしばしばあります。
ただ運送業に限らず下請け会社は取引先に仕事を貰って利益を上げているため、困窮している現状を伝え請負代金を賃上げしてもらうということもかなり難しいのが現状です。そのため下請け会社の利益率は実質的に低くなり、会社の資金繰りは常に危うい状態にある場合も少なくありません。
2.運送業の資金繰りが悪化する原因とは
運送業の下請け会社では上記のような理由により営業利益率が思うように上がらず、従業員達への給料の支払いもギリギリで行なっている会社というのも実際にあるほどです。そんな綱渡り状態になることが多い運送業の会社では、さらに資金繰りが悪化する原因がいくつか存在します。これはファクタリング利用を検討する会社が抱える悩みとも共通するものですが、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。
2-1.繁忙期による運送コストの増大
販売業や製造業では「年末商戦」という言葉が使われるほど、12月の一時期というのはかなり売上が伸びやすくなってきます。運送業についてもそれは同様で、12月の年末商戦では仕事量が一気に増加することもよくある話です。
ただ仕事量が増加して増えるのは売上だけでなく、ガソリン代や高速道路の通行料などといった運送コストも増大してしまいます。また12月は道路が渋滞を起こすことも多くなるため、結果的に従業員の拘束時間が伸びて残業代が多くかさむ時期とも言えます。
2-2.車両事故や社用車の故障による突発的な出費
運送業では自社で所有するトラックなどの社用車を、従業員に貸し与える形で仕事を回します。そのためいつ車両事故が起こるか、社用車が故障してしまうかというアクシデントは予測できません。
運送業の一部では車両事故を起こした当人に、事故でかかった車両の修理代や相手方への慰謝料を支払わせるという悪質な会社も未だ残っています。ただそれ以外の会社については勤務中に起こった事故や故障の修理代を会社側で支払っているため、突発的な出費がかさみ経営が傾いてしまうこともしばしばあります。
2-3.掛金の長期支払いに対応できない
運送業でも掛金により報酬が支払われるため、取引先の会社によって掛金の支払い期日の設定はまちまちです。比較的短期間のうちに支払いを完了してくれる取引先ばかりとは限らず、長期的に支払いを待たされる場合というのも少なくありません。キャッシュフローに余裕のある会社ならばまだしも、カツカツの状態で資金繰りを行なっている下請け会社ではそうした事態にも対応できない場合があります。
運送業では上記のような理由でファクタリングの利用を検討する会社が多いと言えます。仕事量が増えてコストがかさむ時期もある一方で、取り扱う商品の閑散期の影響で仕事量が減少してしまい売上自体が下がってしまうこともあります。
仕事量の増減が多く会社のキャッシュにも波がある業界であるからこそ、資金調達の方法について知ることは会社経営を立て直す突破口を開くことと同義と言えるでしょう。
3.運送業で人気のファクタリングとは何か
この記事を読んでいる方の多くが、ファクタリングという方法についてあまり知らないことと思います。この章では運送業でファクタリングがなぜ人気なのかを解説する前に、まずはファクタリングがどういった仕組みで行われる資金調達の方法であるのかという部分から解説していきます。
3-1.ファクタリングにも2種類ある
ファクタリングについて端的に紹介しておくと、自社で所有する売掛債権を債権譲渡することで現金化する方法のことを指します。債権譲渡するのはファクタリング会社と言われる専門会社であり、さらに言えばファクタリングでは実際に方法が2種類存在します。
①2社間ファクタリング
自社とファクタリング会社とで取引を完結させる方法のことで、この場合は取引先に秘密厳守となります。ファクタリングした事実を伏せることができる一方で、後述する3社間に比べると利用手数料が少し割高に設定されています。
②3社間ファクタリング
自社とファクタリング会社だけでなく、売掛先である取引先を含めた3社間でファクタリングを行う方法となります。利用手数料は安く設定されている一方で、ファクタリングした事実が取引先に知られることになるため、場合によっては今後の仕事に影響を来すリスクがあります。また3社間ファクタリングでは取引先の同意がなければ行えないというデメリットもあります。
3-2.ファクタリングのメリット
自社所有の売掛債権を現金化することで資金調達できるファクタリングですが、実際に利用するにあたりどのようなメリットが存在するのでしょうか。
①早期に資金調達できる
ファクタリングでは売掛債権の支払い期日より早く資金調達できるため、会社経営が傾いておりどうにか資金調達して立て直したい場合にも有効です。
②お金を返済しなくていい
ファクタリングは融資の場合と違い、お金を借りて資金調達する訳ではありません。そのため毎月の返済に用立てるお金を確保する苦労もなく、ファクタリングで得たお金については最大限活用することができます。
③審査に通過しやすい
ファクタリング会社のそれぞれが取り扱う売掛債権について条件を提示しているものの、売掛先の信用力があれば審査に通過しやすいというメリットがあります。また会社経営が赤字の場合にも利用可能なファクタリング会社もあり、いざという時の資金調達としてもってこいです。
④売掛先が倒産してもお咎めなし
仮にファクタリング会社に債権譲渡した売掛先が倒産した場合であっても、利用会社が手に入れたお金を返済する義務はありません。そのため会社経営が危うく売掛先が倒産する可能性が高いと判断できる場合にも、ファクタリングを利用すれば売掛金の一部を回収することができます。
3-3.ファクタリングのデメリット
それに対してファクタリングのデメリットとしては、以下のようなものがあります。
①売掛金の全額が手に入る訳ではない
ファクタリング最大のデメリットとしては、売掛金の全額が手に入らないということが挙げられます。ファクタリングではどちらの方法を選択するにせよ、利用手数料がかかります。3社間よりも2社間の方が割高に設定されており、最大30%を支払う必要があります。
②ファクタリングした事実を知られてしまう
特に3社間ファクタリングの場合に言えることですが、ファクタリングした事実を取引先に知られることで、今後の仕事に悪影響を及ぼすリスクがあります。「ファクタリングしなければならないほど資金繰りが危うい」と思われかねないため、取引してまだ間もない会社とは3社間ファクタリングしない方が賢明な場合もあります。
上記のようなメリットとデメリットが存在するファクタリングですが、運送業の会社に人気の資金調達の方法として知名度が上がりつつあります。それではなぜ、ファクタリングが運送業者から人気を集めているのでしょうか。
4.運送業でファクタリングがなぜ人気なのか
運送業では緊急時にファクタリングを利用する会社はもちろん、継続的に利用している会社も実は少なくありません。ファクタリングが運送業で人気の理由としては、以下のようなものがあります。
4-1.緊急時にも対応できる
ファクタリングをつなぎ資金として利用する運送業の会社も多く、車両の事故や故障にもスピーディに対応できることが魅力でもあります。中型車両以上では法人保険に加入しなければならず、保険料が高くついてしまいがちです。保険料を捻出する場合や、スタッフの確保にかかるコストや車両の修理代にファクタリングのお金を充てる会社も多いです。
4-2.高額の設備投資にも充てられる
運送業では車両の代替や修理代でかなり高額の資金が出ていきます。車両を保管するための倉庫などにも維持費がかかり、運送業の会社全体として高額の設備投資が要求されがちです。利益が安定的に上がっていれば銀行融資も利用しやすいですが、そうではない場合であればファクタリングでの資金調達が確実です。
5.運送業を新たに始める際の資金調達の方法とは
この記事を読んでいる方の中には、もしかしたら新たに運送業で会社を設立したいと考える方もいるかもしれません。事業を継続する最中に資金不足になってしまった場合の調達方法としてファクタリングをおすすめしましたが、それでは事業を新たに開始する場合ではどのような資金調達の方法があるのでしょうか。
5-1.新創業融資制度の概要
運送業と言えば他業種よりも資金繰りが難しい業種ではあるものの、事業を新たに始める時点ではその他の業種同様の方法で資金調達することができます。例えば事業を新たに始めたい方がよく利用する方法としては、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」がおすすめです。
新創業融資制度であれば無担保かつ無保証でも、最大3,000万円までの事業資金を借りることができます。ただし借りたお金の資金使徒についてはあらかじめ決められているため、それ以外の用途でお金を使えない点はあらかじめ知っておいた方がいいでしょう。
返済期間については資金使徒によって違いがあり、設備投資資金として借りる場合であれば15年以内、会社の運転資金として借りる場合であれば5年以内での返済をしていくのが一般的です。
また日本政策金融公庫は国が100%出資している金融機関であるため、低金利でお金を借りることができます。今回紹介している新創業融資制度の場合であれば、以下の条件を満たすことで利用申請することが可能になります。
・新規事業を立ち上げるのに利用する
・新たに従業員を雇用する予定がある
・創業資金のうち1/10以上の自己資金がある
過去に運送業で従事していた、あるいは現在従事している場合であれば自己資金要件を満たしやすくなっています。とはいえ運送業で事業を始めるにあたっては最低でも1,000万円程度の資金が必要と言われており、自己資金に換算すれば最低でも100万円の用意は必要になるということです。
5-2.新創業融資制度を受けるために
日本政策金融公庫がいくら国が運営している金融機関であるとはいえ、審査そのもののハードルが低い訳ではありません。創業計画書の内容が客観的な数値に基づくものであるかはもちろん、経営者としての人柄も見られます。
融資担当者からの質問に適切に答えられなければ話にならないので、面談前には提出書類の内容をある程度記憶しておき、質問されることにある程度の目星をつけてリハーサルを重ねておくことも大切です。
会社として事業を始めるにあたり資金調達の方法について不安があるという場合には、この時点から専門家に依頼してフォローしてもらうというのも一つの方法ではあります。信頼できる専門家を早期に見つけておけば今後とも頼れますし、何より会社経営にとって心強いパートナーが出来たも同然です。
自己資金にある程度の余裕がなければ依頼することもできないでしょうが、自力で新創業融資制度を受けられるよう持っていける自信がないという方は一度検討してみてもいいかもしれません。
5-3.新創業融資制度でのNG行為とは
会社を新たに始めるためには創業資金の確保が急務であるため、経営者としては何としても新創業融資制度でお金を借り受けたいと考えても不思議ではありません。しかし受かりたいがために良からぬことをやってしまうと、かえって審査落ちしてしまうことにもなります。そのNG行為の一例について、以下で簡単に紹介しておきましょう。
・自己資金を借りてくる
新創業融資制度を受けるには自己資金の要件を満たす必要がある訳ですが、この自己資金を借りたお金で水増しすることを決してやってはいけません。日本政策金融公庫の融資担当者も自己資金のある通帳の内容を確認するため、少額ずつ入金されず一度に大金が振り込まれていた場合には必ず疑いの目を向けてきます。
仮に「別の口座から移してきた」と言ったとしてもそのお金の流れについては洗われますし、それと同時に個人の信用情報についても調査されることになるはずです。そのお金の出所が消費者金融からのものであった場合、即座にバレます。バレたら審査落ちは確実なので、自己資金が足りないという場合には地道に貯金していくことが一番の近道です。
・会社のことで嘘を言う
まだ設立していない会社のことなので、詳細をある程度ぼかせないこともありませんが嘘を言うのはNGです。例えば「現時点ですでに取引先との仕事の契約がある」のように、実際に決まっていないことをさも真実であるかのように融資担当者に話してはいけません。融資担当者もその会話の内容が真実であることを確認できる証拠書類の提出を要求してきます。口から出まかせを言った後で嘘だったことがバレた方が、よほどイメージダウンになるので余計な嘘は控えた方が無難です。
・漠然とした内容で会社の創業計画を語る
融資担当者としてもあなたがお金を貸す相手になるかもしれない以上、経営者としての手腕や力量を測りたいと望んでいます。しかし肝心の創業計画について、経営者自身がまるで雲を掴むような調子で漠然とした内容を語ってしまってはNGです。
客観的根拠のないふわふわとした創業計画を聞いた融資担当者は、恐らくあなたのことを「計画性のない経営者だな」と認識せざるを得なくなります。面談の場で創業計画について説明する際には提出資料の内容に基づき、数値的な根拠を示しながら話を進めることが重要です。
まとめ
運送業者では売掛金の支払いが会社の規模によっても異なり、大手企業が元請けの場合にはさらに支払い期間が間延びしてしまうことは否めません。そのため不安定な入金サイクルを調整するためにファクタリングを利用する運送会社が多く、それだけ確実性の高い方法であることがうかがえます。
銀行融資が受けられない、あるいは短期間のうちに経営を立て直したいという経営者の方はこの機会にファクタリングという選択肢について、真剣に検討してみるといいでしょう。