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2020/01/29

[2019年版]資金調達額トップ10の企業から一年の傾向を振り返る

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はじめに

会社を経営していく上で重要となるのが資金調達ですが、将来性があり世間的に注目度が高い企業ともなると、一度に多額の資金調達に成功するものです。また多額の資金調達に成功した企業を振り返れば、その年はどういったものに注目が集まっていたかを知ることができます。
この記事では2019年度に資金調達額が特に多かった企業をランキング形式で紹介し、またそのランキング結果から当時の傾向も一緒に振り返っていきます。

1.2019年版資金調達額トップ10とは

10位から順にランキング結果を確認し、それと同時に各企業の事業の特徴についても見ていきましょう。

1-1.第10位:PECO(67.2億円)

第10位にランクインしたのは、国内最大級のペット専門メディア「PECO」を展開する株式会社PECOでした。「ペットとの毎日の生活がもっと楽しくなる」をテーマに、可愛くておもしろいペット動画、ペットの飼い方や病気などに関する勉強できる内容の動画、さらには最新のペットイベント情報などを発信しています。さらにPECOではペットのアートポスターやぬいぐるみを作れるサービス、飼い主のお悩み解決に役立つメディアなども幅広く展開しています。
そんなペットに関する総合企業であるPECOは2019年度に、67.2億円の資金調達に成功しました。家族も同然とされるペットとの生活を楽しむ人々へのアプローチに特化した同社メディアの人気は、以降も継続することが予想されます。

1-2.第9位:MUJIN(75億円)

工場で稼働する産業用ロボットに知能を与えるべく事業を行うMUJINが、第9位にランクインしました。ロボットに教えることなく自律的に制御させる「モーション・ランニング(動作制御)AI」を産業用ロボットに応用することで、ロボットに考えさせながら作業させ、従来では自動化できなかった複雑な作業の効率化を図れる点で注目度の高い企業です。
そんなMUJINは2019年度に三井住友銀行から75億円の資金調達に成功しました。そしてMBOも同時に駆使して3割以上の株式を自社で保有することも行いました。産業用ロボットの自動化が実現できれば物流の自動化も夢ではなく、今後は世界を股にかけて躍進してくれることが期待できます。

1-3.第8位:Synspective(86.7億円)

小型SAR(合成開口レーダー)を開発するSynspectiveは設立されてから約2年と歴史が浅いにもかかわらず、2019年度には86.7億円の資金調達に成功しています
今回の資金調達では清水建設や東京大学協創プラットフォームなど複数の投資家たちからお金を調達しており、このことからも小型SAR衛星への期待がいかに高いかがうかがえます。小型SAR衛星は技術的に難易度が高く専門知識が必須となるものの、衛星開発と衛星画像解析の両方で研究チームとデータサイエンティストを置くことで、開発を実現しています。世界的にも最速の資金調達を行った同社が手がける衛星の開発費用は、すでに2022年度分まで確保できていると言うのだから驚きです。

1-4.第7位:TierⅣ(90.2億円)

自動運転技術を中核として研究開発を進めるTierⅣは、2019年度に90.2億円の資金調達に成功しました
同社が商用化を目指す自動運転システムは①施設内移動および物流、②過疎地域交通、③市街地および高速道路における長距離貨客輸送の3分野で開発が進められています。同社が主体となり開発を進める「Autoware」は、国内外200社以上ですでに導入されており、世界各地で自動運転システムの実現に向け事業を展開しています。自動運転システムが実現されれば交通事故や犯罪の抑止力となることから、その需要と期待値の高さが今回の資金調達額からもうかがえます。

1-5.第6位:スマートニュース/フロムスクラッチ(100億円)

第6位ではスマートニュースおよびフロムスクラッチが同額の100億円を調達することに成功しました
まずニュースアプリ「SmartNews」を運営する同社は、日本および米国でニュースアグリゲーターに関する事業を主力として展開しています。特に現在は米国事業の拡大に力を入れており、今後はグローバル展開を視野に入れつつ同社ならではのニュースアグリゲーターを展開していくことになりそうです。
次にマーケティングプラットフォーム「b→dash」を展開するフロムスクラッチは、海外有数の投資家たちからも含めて今回の資金調達を成功させました。特にSaas(インターネットを介して、ソフトウェアの一部を利用者が利用できるようにするサービスの提供形態のこと)に関しては米国での事例が多いことから、同社同様に海外進出を目指すスタートアップ企業にとっては、フロムスクラッチの資金調達が成功した結果は朗報と言うべきものでしょう。

1-6.第5位:Paidy(172.5億円)

後払いサービスを提供するPaidyは、2019年度には172.5億円の資金調達に成功しました
ネットショッピングでの決済方法にクレジットカードがあまり使われないことに着目し、クレジットカードとはまた違った後払いサービスを展開し始めたと言います。商品の代金についてはPaidyが先に支払ってくれるため、利用者は毎月の支払日に後払いするだけなので余分な手間がかかることもありません。また未払い事故をなくすため同社では機械学習の独自モデルを導入しており、利用者と販売者双方がメリットを享受できるサービスの展開に、その需要は引き続き高まっていくことが予想されます。

1-7.第4位:LINE証券(198億円)

設立されてまだ約1年半というLINE証券は、2019年度に新株発行を通じて198億円の資金調達に成功しています
LINE利用者の資産形成を中心として事業を展開する同社ですが、これ以外のLINEに関するサービスは多岐にわたります。LINEを利用して株式および投資信託を購入できる同サービスは、1株あたり数百円から取引できるため、誰でも手軽に始められるのが最大の魅力です。近年ではLINE証券以外にも少額投資サービスを提供する企業が増えているため、高所得層以外の資産形成サービスは今後とも人気が継続することでしょう。

1-8.第3位:EPARK(200.6億円)

スマートフォンの普及率の高さからインターネットを介するサービスの提供が昨今増えていますが、その中の一つであるEPARKが2019年度に200.6億円の資金調達に成功しました
インターネットを介して人気施設の予約を済ませられる「EPARK」は、さまざまな施設の予約や順番受付に利用されるようになりました。このサービスにより施設側への送客が強化されるため、利用者だけでなく施設側にとっても嬉しいサービスとなっています。

1-9.第2位:JOLED(225億円)

印刷方式の有機ELディスプレイ開発を手がけるJOLEDは、ディスプレイ量産に向けて2019年度では225億円の資金調達に成功しました
同社は世界初の有機ELディスプレイの量産化を目指しており、2020年には量産を開始し始める意向を示しています。同社が掲げる「印刷方式」であれば有機ELディスプレイの生産工程がよりシンプルになり、さまざまな画面サイズにも容易に対応できるとされています。従来の生産方式では実現できなかったサイズのディスプレイ製造も目指しているため、次世代ディスプレイの実現はもうまもなくかもしれません。

1-10.第1位:PayPay(460億円)

2019年度資金調達額ランキングのトップに輝いたのは、QRコード決済サービスを提供しているPayPayでした。資金調達額は2位とかなり差を開けた460億円となりました
2019年5月以降にソフトバンクグループから460億円の出資を受け入れた同社は、2019年にはさまざまな還元キャンペーンを実施してスマホ決済未利用の利用者を新たに取り入れることに尽力しました。親会社であるソフトバンクグループから多額の資金調達をした同社は、キャッシュレス決済をさらに普及させる役割を担ってくれるはずです。

2.資金調達額トップ10から振り返る2019年の傾向とは

今回はトップ10のみを紹介しましたが、多額の資金調達を行った企業の多くが先進技術を事業の中核としているところばかりでした。特にAIや機械学習モデルを利用したサービスを提供する企業の活躍が目覚ましく、開発途中の商品やサービスが実現されれば、私たちの生活がより豊かなものになることは容易に想像できます。
また2019年には消費税が8%から10%に引き上げられたこともあり、ポイント還元政策の一環としてキャッシュレス決済を普及する動きが顕著でした。今回のランキング1位に輝いたPayPayはスマホ決済サービスの一種ですが、これ以外にもさまざまな企業がスマホ決済を導入したことで、新たにスマホ決済を利用し始めた方も多いのではないでしょうか。
2019年度は先進技術の躍進が目覚ましい1年となりましたが、今後ともさまざまなサービスや商品が誕生していくことが期待されます。今回紹介した各社の動向は随時確認していくと、新技術誕生の瞬間に出会えるかもしれません。

まとめ

2019年度に多額の資金調達を成功させた企業の多くが将来性のある事業を手がけ、また将来のビジョンも明確に見据えている傾向がありました。会社経営においては資金調達が肝となりますが、その資金調達を自力で成功させるとなるとなかなか難しい側面もあります。
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