はじめに
会社を経営する上ではなくてはならないのが運転資金ですが、その調達方法の中には銀行やノンバンクから融資を受けるという方法もちろんあります。
ただし審査を受けたところで通過できず、結果的に資金調達がうまくできないという方もいるかもしれません。
そこで今回の記事では、資金調達の際に担保を用意することのメリットや注意点について解説します。
資金調達は会社にとっての死活問題でありながら、実際にはなかなか敷居が高く難しいイメージがあります。
後半では、担保を用意する以外での資金調達の方法についても簡単に紹介しています。
返済する必要のない資金調達の方法も知っておきたいという方は、そちらも併せてご覧ください。
1章:担保の概要とは
この章ではまず、そもそも担保があると何故良いのかという根本的な部分から解説していきます。
1ー1 担保は何のためにあるか
担保とは「抵当」とも言われるもので、銀行のような金融機関が債務不履行となった際にその返済額分を補てんできるよう債権者から預かり受けるもののことを指します。
仮に担保を預けた状態であっても返済さえ滞りなければ、債権者が担保を手離す必要は一切ありません。
しかし現実には債務の返済を滞らせる債務者が多くいるため、貸す側としても貸し倒れになるリスクを回避するために担保を求める場合があります。
1ー2 担保の種類
担保にも様々な種類がありますが、一般的には流動性の高いものほど担保としての価値が高いとされています。
例えば上場企業の株式であれば流動性も高い上に、売却して現金化しやすい担保と言えるでしょう。
その一方で不動産を担保とする場合では現金化するまでに時間がかかるため、担保としての流動性は低いと考えられます。
現状の経営状態や融資の申請内容に問題がなければ、基本的には担保を金融機関に提供するよう求められることはありません。
しかし中には最初から担保を必要とする資金調達の方法もあります。その具体例を挙げると以下のようなものがあります。
・不動産担保ローン
・売掛債権担保ローン
・有価証券担保ローン
・仮想通貨担保ローン
金融機関やノンバンクから融資を受ける場合、必ずしも担保は必須ではありませんが、上記については別物です。
名称に入っているものがなければローンを組めないことになっているので、担保を必要とするローンを組む場合には確実に準備しておくようにしましょう。
2章:担保があることのメリットとは
担保が必須ではないものの、融資審査による企業評価が低い場合に「担保があれば融資できる可能性がある」と持ち掛けられることがあります。
それでは担保ありの場合ではどのようなメリットが受けられるのでしょうか。以下で簡単に見てみましょう。
2ー1 審査に通過しやすい
担保とはそもそも債務不履行になった際に貸す側が返済額分を回収するためのシステムであることは前述しました。
そのため、企業評価が低く審査が通過できないとされた場合であれば、何らかの担保を用意することで審査に通過できる可能性が出てきます。
あるいは、審査担当者から何も言われていない間でも担保をあらかじめ用意しておくと、担保がない時よりも審査を通過しやすくなります。
融資分を回収できるだけの価値のある担保があることで、貸す側も安心して融資の話に応じることができます。
2ー2 借りられる金額が高くなることも
担保の価値はその流動性によって決まると言いましたが、仮に審査に際して用意した担保の価値が高い場合では借りられる金額が高くなる可能性もあります。
2ー3 金利が安くなる
融資先の対応次第ではありますが、担保を用意した場合では金利が通常よりも低く設定してもらえることがあります。
担保の価値によるところが大きいのではっきりとしたことは言えませんが、価値のある担保を用意できれば融資先からの印象をより好印象へと傾けることができます。
2ー4 保証人が不要になる
金融機関からの融資を受けるためには原則として保証人を用意するように求められますが、担保を用意しておけば万が一の時には担保を売却して現金を回収することができます。
そのため担保を用意している場合では、保証人が不要になることも考えられます。
担保を用意できれば上記のようなメリットを受けられる可能性がある訳ですが、担保を用意しての融資やローンには注意点も実際にあります。
次章では担保を用意することの注意点について見ていきます。
3章:担保を用意する際の注意点とは
担保を用意する際の注意点として一番に考えなくてはならないのは、万が一債務不履行となった場合にはその担保は手元からなくなってしまうということです。
担保が債権者にとっての保険であることは前述しているので当然のように思われるかもしれませんが、仮に担保として不動産を用意した場合を想定しましょう。
その不動産が事業に関連したものであれば、債務不履行になった時点で競売にかけられてしまいます。そうなれば事業展開にも深刻な影響が出ることは目に見えています。
担保を用意しておけば融資先からの印象はより良くなりますが、可能ならば会社の経営とは無関係のものを担保にするのがいいでしょう。
特に会社の経営では何が起こるか分かりません。万が一の時を想定しながら行動できるよう、常にリスクを取りながら行動指針を定めていくことが大切です。
4章:返済不要の資金調達とは
担保を用意する必要のある資金調達の方法では、返済義務があることが前提となります。
しかし、なるべくならば返済義務のない資金調達をしたいという経営者の方もいることでしょう。
この章では記事の本題から少し話はそれてしまいますが、返済不要の資金調達の方法についても簡単にですが紹介しておきます。
4ー1 在庫を処分する
会社の運転資金が底をつきそうになった時に、一番手っ取り早く現金を手にする方法として在庫を処分するというものがあります。
売れる見込みのある範囲内での適正在庫であればまだしも、中には過剰なほどの在庫を抱えてしまっている会社もあるかもしれません。
そうした場合であれば二束三文にしかならないかもしれませんが、セールと称してでも叩き売りすることで現金を調達することができます。
また在庫の適正化にも役立てられるので一石二鳥です。
4ー2 無形資産を売却する
手広く事業展開をしている状態であれば、開拓途中の顧客網や取得したライセンス、開発権などを売却することでも資金調達することができます。
こうした無形資産の価値は一概に分かりにくい部分もありますが、その無形資産が特殊なものであるほどそれを欲しがる経営者が見つかるかもしれません。
4ー3 債権の回収を早める
自社で債権を持っている場合であれば、その債権の回収を早めることでも資金を得ることができます。
期日よりも返済が遅れている会社に対して積極的に催促するというのも一つの方法です。
例えば内容証明や民事調停のような催促の仕方であれば、比較的時間や資金もかけずに行うことができます。
特に債権の期限が迫っているものについては、強行策に出ることも選択肢の一つとして考えられるかもしれません。
4ー4 ベンチャーキャピタル
将来性の高い業種のベンチャー会社に投資して株式上場した際に出資資金を回収するという、特徴的な資金調達を行う会社も存在します。
これはベンチャーキャピタルと呼ばれる手法で、ベンチャー会社専門で投資を行う会社も実際にあるほどです。
ベンチャーキャピタルで投資される会社に選ばれるポイントとしては、経営者のスキルが優れている、将来性の高い事業を手がけている、同業他社と差別化できる要素を備えているなどがあります。
様々な条件と合致した会社しか出資してもらうことはできませんが、自身の会社や手腕に自信がある場合にはこうした方法では現状の資金調達を賄うのも一つの方法ではあります。
4ー5 従業員持株会
株式上場を果たしている会社であれば、従業員持株会を利用する方法もあります。
従業員の毎月の給料を天引きして自社株式を購入するシステムのことを指し、会社側としては毎月安定した収入を得ることにつながります。
また自社の株式を保有することで、従業員たちのモチベーション向上に役立てられる側面もあります。
ただし業績が落ちている時に行っては株主に対する配当金の捻出ができず、結果的に従業員からの不平不満が溜まってしまう場合も懸念されます。
業績が安定しており、かつ配当金の捻出が特に問題なければ、こうした方法を視野に入れてみてもいいかもしれません。
4ー6 新株予約権
株式を発行している会社であれば、従業員に対して新株予約権という方法で資金調達することもできます。
この新株予約権とはあらかじめ設定しておいた金額で株式を購入できるシステムのことで、例えば株価が順調に値上がりしている時にこの新株予約権を行使すれば、従業員は以前に設定した金額で株式を購入することができます。
値上がりした時点であれば購入金額との差分がそのまま従業員のお金に変わるため、ネット系ベンチャー会社が優秀な人員確保のため利用するようになりつつあります。
また、新株予約権であれば社債付きにすると投資家が集まりやすく、あるいは金融機関に融資を申請する際に活用すれば融資が承認されやすくなるといったメリットもあります。
金融機関から融資してもらうという方法ばかりを先行して考えがちですが、資金調達の方法は探してみると色々とあるものです。
これ以外にも方法があるかもしれませんが、気になった方は資金調達の方法について一度調べてみてもいいかもしれません。
まとめ
担保を利用すれば資金調達しやすいというメリットがある一方で、債務不履行になると担保にした資産がなくなってしまうことは理解しておかなければなりません。
ただ担保を利用しなくても資金調達はできますし、場合によっては返済不要の方法を活用することもできるかもしれません。
資金調達の方法はさまざまですが、企業のおかれているフェーズや時期的なタイミング、業種、企業の規模など、多くの条件が最適な方法を選べるか否かに関わってきます。
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