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2018/08/31

建設業界で一般的な出来高請求とは何か

はじめに

建設業界は一般的な業界とは違い、収益を得るまでにかなりの時間がかかります。
そうした特殊な業界だからこそ出来高請求を活用することで、収益を全額ではないにせよ小分けにして得ることができます。
ただし建設業界は慢性的に人手不足なこともあり、会計の専門知識を持つ経理担当がおらず、現場担当者がなし崩し的に経理を兼任していることも実際にしばしばあります。
また建設業会計という専用のプログラムもありますが、実際には一般的な会計プログラムよりも数倍値段が高く、結果的に慣習的にまかり通っている計算方法で済ませてしまう企業もそれなりに多いことでしょう。
そこで今回の記事では、建設業界で一般的な出来高請求について解説します。
建設業界で働く上で知っておいて損はない知識でもあるため、全く知らないよりかは多少なりと知識を身につけておくに越したことはありません。
出来高請求についてあまり知らないという方も、この記事を読んで出来高請求とは何かを一度勉強してみてはいかがでしょうか。

1章:出来高の概要とは

この章ではまず手始めに、そもそも出来高とは何かという部分から解説していきます。
出来高の意味も分からないままで出来高請求について勉強したところで、基礎がなければ知識がきちんと身についたことにはなりません。
これについては知らない方も少ないかもしれませんが、ひとまずおさらいしておきましょう。

1ー1 出来高と出来形の違い

建築業界ならではの用語として「出来高」という言葉がありますが、これとよく似た響きの用語として「出来形」というものがあります。
これらは似て非なる言葉であり、出来形は工事で建設予定の建造物の完成した部分のことを指しています。工事が完了した部分のことを指して「出来形部分」と呼ぶ場合もあります。
またその一方で、出来形に対応する請負金のことを出来高と呼びます。
つまり出来形は工事によって完成した建造物について、出来高は工事が完了することで得られる収益について言及しています。
そのため響きは似ていますが、「出来形検査」と「出来高検査」とでは調査すべきポイントが全く異なります。
出来形検査では建造物そのものの寸法やその技術について確認するのに対し、出来高検査では工事に使用した原材料の原価を算出して出来形を金額に換算します。

一般的な企業であれば商品およびサービスの提供が完了した時点で代金が支払われますが、それではなぜ建設業界では出来高という特殊な概念が必要とされるのでしょうか。

1ー2 なぜ出来高という概念が必要なのか

一般的な企業であれば商品およびサービスの提供が完了した時点で、初めてそれに見合った対価が支払われます。
しかし、建設業界に関しては建造物の完成までに最低でも一年以上を費やしてしまうため、その完成まで対価が一切支払われない状態ではそれを生業とする企業の経営が立ち行きません。
そうした理由があるために、建設業界では一般的に、着手している建造物の完成した度合いに応じてそれに見合った対価を分割して請求する制度が存在します。
それが建設業法第24条3項で「下請代金の支払」として定められており、その条文を抜粋すると以下のようになります。

「第24条の3
1 元請負人は、請負代金の出来形部分に対する支払又は工事完成後における支払を受けたときは、当該支払の対象となった建設工事を施工した下請負人に対して、当該元請負人が支払を受けた金額の出来形に対する割合及び当該下請負人が施工した出来形部分に相応する下請代金を、当該支払を受けた日から一月以内で、かつ、できる限り短い期間内に支払わなければならない。
2 元請負人は、前払金の支払を受けたときは、下請負人に対して、資材の購入、労働者の募集その他建設工事の着手に必要な費用を前払金として支払うよう適切な配慮をしなければならない。」

建設業界では着工から完成までにかなりの時間がかかってしまうため、法律上でもその請負企業に対する報酬の支払いについては最大限に配慮するよう明言されています。
建設業界で働く限りは切っても切り離せない関係にある出来高請求ですが、それでは具体的にどのような基準で請求していくべきなのでしょうか。

2章:出来高請求をするために

建設業界で必須の考え方である出来高という概念が存在することをある程度把握したところで、次に出来高請求をするためにどのような基準があるのかについて解説していきます。
現状は慢性的な人手不足があると言われる建設業界では、会計知識のある経理担当者が不在で現場担当者が兼任しているという中小企業が割と多く存在します。
ただ、こと会計に関しては片手間にできるほど単純なものでもなく、実際に出来高請求書を作成するために正確な収益の計算を行おうとするとかなり難しいことが分かります。
また建設業界で主流となっている出来高請求の基準と、会計上で本来あるべき基準とでは微妙に内容が異なることはあまり知られていない事実です。
以下で具体的に見ていきましょう。

2ー1 工事進行基準と工事完成基準の違い

まず会計上の正しい基準としては「工事進行基準」というものがあり、これは「工事契約に関する会計基準、運用指針(以下、会計基準とする)」によって規定されています。
この工事進行基準では工事の進捗度合いを一定の基準で数値化し、さらにそれに見合った原価を適正に把握することになっています。
工事進行基準では進捗の度合いを認識することが、ひいては現状の収益を認識して工事期間中の損益の適正化を図ることにつながります。

その一方で「工事完成基準」とは一般的に建設業界で用いられる基準のことで、現状着手している建造物の完成した部分の度合いによって出来高を換算することになります。
前述した会計基準では工事進行基準が原則として適用されていますが、適正な原価算出ができない場合については、工事完成基準を適用する流れになります。
また総工費10億円を超える大規模な工事であれば工事進行基準が強制的に適用されることになるのですが、中小企業ではそういった規模の工事を請け負うことが滅多にありません。
そのため公共事業を下請けするような企業については、工事完成基準を慣習的に適用していることがしばしばあります。

2ー2 出来高請求は工事収益ではない?

仮に工事完成基準に基づいて出来高請求をしたい場合であれば、工事の完成した部分については毎月所定の締め日までに出来高請求書を作成して請求することになります。
ただ、この出来高請求とはそもそも「未成工事受入金」を前払いで受け取っているだけであり、厳密に言えば工事収益そのものではありません。
出来高請求によって支払われている対価については、工事の着手金や中間金として受け取る「前受金」と同じ性質を持ちます。
ここで会計上の正しい手順について今一度確認しておきましょう。
本来であれば工事進行基準あるいは工事完成基準のどちらを採用している場合であっても、工事の途中で支払われた出来高請求分については前受金として会計処理を行わなければなりません。
しかし、実際にはその出来高請求分を売上として計上している企業が大半を占めます。

その理由は建設業会計を用いらず、一般企業で用いられる商業簿記で会計を済ませていることにあります。
ただし商業簿記で会計を行うからといって、正しい会計処理ができない訳ではありません。
出来高請求分を前受金としていったん計上しておき、工事が完成した時点でその前受金を売上高に換算することは十分可能です。

そしてその会計処理を行う際に工事に要する原価を適正に把握することで、どちらの基準を採用して売上高まで計上したかを問わず、それなりに正しい会計処理を行えるようになります。
かなり込み入った話になりましたが、出来高請求分はあくまでも前受金であるため、売上高としてそのまま換算するべきではないということです。
ここまでは概念的な内容でしたが、次章ではこの記事のまとめとしてより実務的な部分に踏み込んで解説します。

3章:出来高請求の仕訳とは

前述したように、建設業会計は一般的な会計プログラムよりもかなり値段が張ります。
そうした現状であればこそ、可能な限りは一般的なプログラムを利用して工事に際しての会計処理を行っていきたいと考えるでしょう。
この章では建設業会計を用いずに会計処理を行うための手順を、簡単にですが解説していきます。

まずは科目の設定として、「未成工事支出金」という勘定を新たに作成してその勘定に名前をつけます。
工事現場の名称のように分かりやすい名前であれば構いません。
次に補助科目の設定をする訳ですが、この部分は業態によって内容が微妙に異なります。その一例を挙げると以下のようなものがあります。

・外注費
・材料費
・解体費
・労務費
・廃棄物処理費
・消耗品費
・水道光熱費 など

そして工事が完成した時点で売り上げを計上するため、それと同時に未成工事支出金を「工事原価」として振り替えておきます。
この時に未成工事支出金が0に切り替わったかどうかも併せて確認します。
「売上原価」の項目に「仕入」があれば、そこに工事原価の勘定を合わせてもいいかもしれません。月次計算を済ませる際に便利です。

その他の細かい点まで補足すると難しい内容になるためここでは割愛しますが、消費税の兼ね合いもあるので工事完成後に手直しが発生した場合であっても、一度は未成工事支出金としてから工事原価に振り替える手順を踏むことをおすすめします。
また名前をつける際に工事No.を割り振っておくと、後々になって建設原価を振り返るのに便利です。
これはあくまでも一例ですが、なるべくならば間違いを訂正しやすい方法で会計処理を行えるよう手順を重ねていくことが大切です。

まとめ

いかがでしょうか。出来高請求そのものは建設業界で慣習的に行われていることではありますが、実際の会計処理と照らし合わせてみると正しい手順を踏めていない可能性もあります。
出来高請求を売上として直接計上してしまうのではなく、前受金として計上した後に売上計上することでより正確な会計処理を行うことができます。
人手不足の現状では難しいかもしれませんが、正しい会計処理の手順として頭の片隅に入れて置くといいでしょう。

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