助成金

2018/04/20

意外と知らない助成金と補助金の違い

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はじめに

 

中小企業や個人事業者、起業したての企業にとって、資金面のやりくりは常に困難がつきまといます。

助成金と補助金はどちらも、一定の条件を満たした場合に、国または地方公共団体が事業の支援のために支給するお金になります。

ぜひとも有効活用して資金の不安を少しでも解消するべきです。

 

しかし、助成金と補助金は厳密には意味のことなる支援金です。

助成金と補助金がそれぞれどのようなもので、共通点・相違点は何かを説明していきます。

 

 

助成金と補助金の定義

 

助成金は、主に雇用や労働環境の改善のため、国や地方公共団体が定める一定の条件を満たした事業者に対し支給される支援金です。

返済義務はなく、資格要件を満たすことを証明できる書類を提出することで、助成金の予算が尽きない限りは誰もが受け取れます。

 

一方、補助金は、主に経済や地域の活性化のため、国や地方公共団体が定める一定の条件を満たした事業者に対して支給される支援金です。

助成金同様、返済義務はありませんが、要件を満たせば無条件でもらえるわけではなく、支給元の国や地方公共団体が行う審査を通過しなければ、補助金を受給することはできません。

 

助成金と補助金の共通点

 

助成金と補助金の共通点として以下のようなものが挙げられます。

 

支給元が国または地方公共団体

返済の義務がない

申請後に支給される後払い

 

このように助成金と補助金は、国や地方公共団体から申請通過後に交付される返済の必要がない支援金という点で共通しています。

 

助成金と補助金の相違点

 

しかし、同じような支援金でも名前が違うということは、この2つには以下のような相違点もあります。

 

1つ目は支援金としての趣旨の違いです。

助成金は雇用関係のものが多いのですが、受給要件としては、従業員の教育や正社員化・育児休業の活用・有給休暇の増加・残業時間の削減など様々な労働環境の整備が挙げられます。

企業が雇用者の労働環境を改善したことで、結果的に日本国民の社会福祉の向上につながるため、その褒賞としての意味合いで支給されるのが助成金です。

 

一方、補助金は設備投資や開発研究費など事業活性化につながる活動に対しての援助としての意味合いが強いです。

 

企業が設備投資や研究開発等で事業の活性化を図ることが、日本経済の発展につながります。そのため、日本経済の発展に寄与するような活動の補助として支給されるのが補助金です。

 

2つ目は支給を受けたい企業にとって大きな違いとなる、支給を受けるための条件の違いです。

 

助成金は、従業員の教育や労働時間の削減、各種休暇取得の奨励などを行ったことを証明する書類の提出が必要となります。

そして、助成金を受け取る資格が満たしていることを証明できれば、助成金の支給期限が終了しているなどの例外を除けば、必ず受け取ることができます。

 

反対に補助金は、設備投資や研究開発など補助金の要件にあった事業活動にお金を使ったことを証明する書類の整備が必要です。

ここまでは助成金と変わりませんが、補助金は受給要件を満たせば必ず受け取れる支援金ではありません。

 

補助金は受け取れる審査通過者の数に限りがあるので、ただ単に受給要件を満たすだけでは足りず、審査を通過しなければなりません。

補助金の申請期間内に応募したうえで、受給要件を満たした事業者の中からさらに審査で絞り込まれ、審査を通過した応募者だけが補助金を受け取ることができます。

 

審査は申請書類の提出だけでなく、支給元の国や地方公共団体の面接が行われます。

補助金の要件にあった設備投資や研究開発等の概要に加え、事業計画書を使いこの事業がどのように社会の役に立つか、どのようなニーズを満たし、社会にどのような影響を与えるのかなどを面接官にアピールします。

 

そして、書類選考と面接の結果、国や地方公共団体に申請された事業が社会の発展に貢献し、成長する見込みがあると判断された場合のみ、補助金事業として事業活動にかかった費用の一部を受け取ることができます。

 

3つ目の違いは会計検査院による検査の有無です。

 

助成金は支給されればそれで完了ですが、補助金は審査に通過した事業が正しく行われていて、国の経済発展に寄与しないような使われ方がしていないか、定期的に会計検査院の検査が行われます。

 

会計検査院の検査の結果、補助金により造成した基金の使用が適切でない、補助対象事業費を過大に精算していた、補助事業により取得した財産を無断で処分していた、そもそも補助の対象とならないものに補助金を使用していたなどの事実が発覚した場合、補助金の不正使用として返還を求められる場合があります。

 

補助金は受給した後も、目的に応じた使用をしなければいけないのです。

 

 

建設業向けの助成金・金融

ここからは、具体的な助成金の制度の仕組みとして建設業向けの助成金について説明します。

また、助成金は要件を満たせば受給できるお金ですが、申請後の受け取りとなるため即時性のあるものではありません。

企業の資金計画上どのように助成金を有効活用するべきかを解説します。

建設業における助成金の概要

建設業向けの助成金は、建設事業主や建設事業主団体等が、建設労働者の雇用の改善や建設労働者の技能の向上等をはかるための取組みを行った場合に支給されます。

 

平成30年4月1日から、「建設労働者確保育成助成金」で定められている13の助成コースが、助成目的別にトライアル雇用助成金、人材確保等支援助成金及び人材開発支援助成金の3つに統合されました。以下、3つの助成金について詳細を説明します。

 

トライアル雇用助成金

トライアル雇用助成金は若年・女性建設労働者トライアルコースという1つのコースから構成されています。

中小建設事業主が若年者又は女性を建設技能労働者等として一定期間試行雇用し、トライアル雇用助成金の支給決定を受けた場合に助成金を受給できます。

 

トライアルの受給対象となる企業は、資本金3億円以下、または常時使用する労働者が300人以下の中小企業で、支給申請時点で「建設の事業」の雇用保険料率12/1000の適用を受けており、かつ、支給申請時点で雇用管理責任者(労働者の雇入れ及び配置、技能の向上、職業生活上の環境の整備に関することなどを管理する者のこと。例として事業主や人事担当者など)を選任していることが求められます。

 

このような中小企業が、トライアル雇用開始時点で35歳未満の若年者または女性という条件を満たすトライアル雇用奨励金の支給対象者を、主として建設現場での現場作業に従事する者、または施工管理に従事する者として雇用した場合、最長3か月にわたり1人1か月あたり最大4万円の助成金を受けることができます。

 

人材確保等支援助成金

人材確保等支援助成金は、雇用管理制度助成コース(建設分野)(整備助成)・雇用管理制度助成コース(建設分野)(登録基幹技能者の処遇向上支援助成)・若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)(事業主経費助成)・若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)(事業主団体経費助成)・若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)(推進活動経費助成)・作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)(作業員宿舎等経費助成)・作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)(女性専用作業員施設設置経費助成)・作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)(訓練施設等設置経費助成)の8つのコースから構成される助成金です。

 

各々のコースの受給要件と受給額は以下の通りです。

 

雇用管理制度助成コース(建設分野)(整備助成)

人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)の目標達成助成を受けた中小建設事業主が、本コースが定める若年者及び女性の入職率に係る目標を達成した場合に受給されます。zy級額は、人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)の目標達成助成の支給額に加えて57万円(第1回)および85.5万円(第2回)です。

 

雇用管理制度助成コース(建設分野)(登録基幹技能者の処遇向上支援助成)

中小建設事業主が雇用する登録基幹技能者の賃金テーブル又は資格手当を増額改定した場合に受給されます。受給額は、登録基幹技能者1人あたり年額6.65万円です。また、2年目、3年目も同様に増額改定する場合は再びそれぞれ年額6.65万円が受給されます。

 

若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)(事業主経費助成)

建設事業主が、若年労働者及び女性労働者の入職や定着を図ることを目的とした事業を行う場合に受給されます。受給額は、事業の実施に要した経費の3/5(ただし、事業全体として一事業年度について200万円が上限)です。

 

若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)(事業主団体経費助成

建設事業主団体が、若年労働者及び女性労働者の入職や定着を図ることを目的とした事業を行う場合に受給されます。受給額は、事業の実施に要した経費の2/3(ただし、一事業年度につき、建設事業主団体の規模に応じて、1,000万円又は2,000万円の上限)です。

 

若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)(推進活動経費助成)

広域的職業訓練を実施する職業訓練法人が、建設工事における作業に係る職業訓練の推進のための活動を行った場合に受給されます。受給額は、事業の実施に要した経費の2/3(ただし、訓練の実施した人数及び日数に応じて上限が設定)です。

 

作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)(作業員宿舎等経費助成)

中小建設事業主が、被災三県(岩手県、宮城県、福島県)に所在する建設工事現場での作業員宿舎、作業員施設、賃貸住宅(以下「作業員宿舎等」という)の賃借により、作業員宿舎等の整備を行った場合に支給されます。受給額は、作業員宿舎等の賃借に要した経費の2/3(賃貸住宅は1人最大1年間かつ月額3万円を上限、また一事業年度あたり200万の上限)です。

 

作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)(女性専用作業員施設設置経費助成)

中小元方建設事業主が自ら施工管理する建設工事現場に女性専用作業員施設を賃借により整備を行った場合に受給されます。受給額は、女性専用作業員施設の賃借に要した経費の3/5(ただし、1つの工事現場につき同一区分の助成対象施設は1施設のみ、一事業年度あたり60万円を上限)です。

 

作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)(訓練施設等設置経費助成)

広域的職業訓練を実施する職業訓練法人が、認定訓練の実施に必要な施設又は設備の設置又は整備を行った場合に受給されます。受給額は、職員及び訓練生のための福利厚生用施設及び設備以外のものの設置または整備に要した経費の1/2(ただし、5年間で3億円を上限)です。

 

人材開発支援助成金

人材開発支援助成金は、建設労働者認定訓練コース(経費助成)・建設労働者認定訓練コース(賃金助成)・建設労働者技能実習コース(経費助成)・建設労働者技能実習コース(賃金助成)の4つのコースから構成される助成金です。

 

各々のコースの受給要件と受給額は以下の通りです。

 

建設労働者認定訓練コース(経費助成)

中小建設事業主又は中小建設事業主団体(職業訓練法人など)が、職業能力開発促進法による認定職業訓練を行った場合に受給されます。受給額は、広域団体認定訓練助成金の支給又は認定訓練助成事業費補助金の交付を受けて都道府県が行う助成により助成対象経費とされた額の1/6です。

 

建設労働者認定訓練コース(賃金助成)

中小建設事業主が、雇用する建設労働者に対して、有給で認定職業訓練を受講させた場合に受給されます。受給額は、認定訓練を受講した建設労働者1人1日当たり4,750円(ただし、1事業所への1の年度の建設労働者認定訓練コース(賃金助成)に係る支給額の合計として1,000万円が上限)です。

 

建設労働者技能実習コース(経費助成)

雇用する建設労働者(雇用保険被保険者に限る)に対して、技能実習を行うこと又は登録教習機関等で行う技能実習を受講させた場合に受給されます。受給額は、事業主の規模や女性建設労働者に対するものかによってそれぞれ決められます。

 

建設労働者技能実習コース(賃金助成)

中小建設事業主が、雇用する建設労働者者(雇用保険被保険者に限る)に対して、技能実習を受講させた場合に受給されます。受給額は、事業主の規模によってそれぞれ決められます。

 

融資という選択肢

助成金や補助金は原則として返済不要なので、条件を満たす施策を講じられるならば、積極的に受給した方がよいです。

ただし、助成金・補助金には後払いというデメリットがあります。助成金・補助金の交付を受けるためには、あらかじめ労働環境の改善や設備投資、研究開発に出費しなければなりません。特に補助金の場合は、正しく補助金が使われているか会計検査院による検査が行われますので、受け取ったお金を自由に使うことができません。

よって、要件を満たしている限りは助成金・補助金は有効活用すべきですが、助成金・補助金の使い道が決まっていることを鑑みると、事業の資金計画においては後払いで使用に制限のある助成金・補助金に頼るのではなく、前払いで使用の制限がない銀行や政府系中小企業金融機関からの融資を受けることも必要です。

事業に滞りのない資金計画を作成するためにも、融資と助成金・補助金の違いを認識し、それぞれを有効に活用しましょう。

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