借り入れ
2019/08/30
公私混同は絶対NG!各員貸付金と役員借入金は短期返済がマスト!
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はじめに
会社を経営する上で苦労する資金調達ですが、例えば会社経営者や経営陣の役職の方が会社に対してお金を一時的に貸すこともあるでしょう。あるいはその逆もあるかもしれません。こういった会社と個人でのお金のやり取りは、ひいては会社を経営する側の特権と言えそうなものですが長期的に行うのはNGです。特に公私混同してしまうと後で思わぬしっぺ返しを食らう可能性も出てきます。
この記事では中小企業で多い役員貸付金と役員借入金のメリットとデメリットについて解説します。また時間のある時に以下の記事にも目を通してみるとより理解が深まります。
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1.役員貸付金と役員借入金の概要
言葉の響きである程度分かるかと思いますが、この章ではまず役員貸付金と役員借入金の意味についてある程度触れておきましょう。
1-1.役員貸付金とは何か
まず役員貸付金とは言葉の通り、会社側が経営者や役員の方に対してお金を貸すことを指します。中小企業でよく利用される傾向にあり、具体的には以下の理由によって役員貸付金が発生しやすくなります。
①一時的に役員報酬の代わりに充てる
役員報酬は事業年度が開始してから3ヶ月以内に、通年の金額を決めなければなりません。今回の事業年度で利益が多く出るかどうかというのは、年度始めで容易に想定できるものではありません。そのため中小企業では役員報酬をあらかじめ少なく見積もっておき、不足分を役員貸付金で補うことがしばしばあります。
②領収書を切れない資金使途の場合
例えば領収書を切っても経費として認定してもらえないような用途で会社の資金を使う場合、役員貸付金として一時的にお金を借りていることに場合があります。特に公私混同していると認定されやすい部分については経費で落ちると最初から考えにくいため、苦肉の策として利用している可能性が考えられます。
③会社の資金を個人のお金として利用している場合
政治家でも公的資金を着服してそれがスキャンダルになることがしばしばあります。経営者の場合でも同様のことが起こり、会社の資金であるにもかかわらずまるで自分のお金のように使ってしまうのです。特に個人事業主のような小規模経営ではそれが顕著に見られ、会社を第2の財布とみなしてしまっているのかもしれません。
1-2.役員借入金とは何か
それに対して役員借入金とは、会社側が経営者や役員の方からお金を借りている状態のことを指します。中小企業の財務諸表で見る機会の多い役員借入金は、以下のような理由で発生しやすくなります。
①法人設立時の創立費や開業費など
法人を設立するためには創立費というのがかかりますが、実際に営業開始するまでにかかるのが開業費となります。これらの資金を用意するため、短期的に会社の経営陣の方からお金を借りなければ費用が用意できない場合も時にはあります。
②会社の資本金が不足するための一時的な立て替え
特に中小企業では会社の資本金が一時的に不足した際に、経営陣の方からお金を借りて不足分を補うといったやり方で何を逃れようとする場合があります。融資を受けてしまうと利息分の支払いでさらに資金繰りが苦しくなるため、役員借入金を利用することを選択する経営者の方が多いです。
役員貸付金にせよ役員借入金にせよ、どちらか一方がもう片方にお金を借りている状態であることには違いありません。規模の小さい会社ではこの会社と個人間でのお金の貸し借りについて、なあなあで済ませてしまうことも実際にはあります。
ただお金を借りている状態であるということは、少なからず会社の経営にも影響を及ぼすことになります。具体的にはどのような点で影響を受けるのでしょうか。
2.役員貸付金と役員借入金の主な影響
役員貸付金と役員借入金それぞれが利用される理由について確認したところで、この章では次に役員貸付金と役員借入金が会社に及ぼす影響について解説していきます。
2-1.役員貸付金は利息が発生する
会社からお金を借りている場合、無利息でいつまでも借りていられると勘違いしている方も多いです。しかし実際には役員貸付金を借りている場合には、利息が発生してきます。それは会社経営者の方であっても同様です。具体的な利率については、以下の基準で決定されます。
①金融機関から融資を受けている場合、その借り入れ利率
②金融機関から借り入れしていない場合、租税特別措置法第93条第2項により、国内銀行の短期貸出約定平均金利+1%以上で利率が決定される
また役員貸付金の利息分については会社の利益として計上しなければならず、場合によっては法人税が増額する可能性もあります。
2-2.金融機関からの評価が悪くなる
金融機関に会社から融資の希望があった場合、その判断材料として返済能力はもちろんですが資金使途も見られることになります。仮に会社の財務諸表に役員貸付金があった場合、そのお金は何のために利用されているのか恐らく質問されるはずです。そして役員貸付金が現状あることで融資の審査の目が厳しくなり、役員貸付金の減額あるいは完済が条件として提示されることもあるでしょう。
2-3.役員借入金で債務超過になるリスクも
役員借入金も借金には違いないため、金融機関から融資などを受けている場合では債務超過になってしまうリスクも十分考えられます。そのため債務の総額が大きくなることが予想される場合には、役員借入金や融資の返済を早期に行う必要が出てきます。
2-4.取締役会の承認が必要になる場合もある
利息や担保を設定していない役員借入金の場合は必要ありませんが、それ以外の場合では取締役会の承認を貰わなければなりません。高利率が適用されたり担保として会社の資産を失うことがないよう、経営陣の方の同意を事前に得なければなりません。これは役員借入金が利益相反取引に該当するためでもあります。
※利益相反取引:会社の利益が犠牲になり、第三者が利益を得るような取引のこと。
役員貸付金にせよ役員借入金にせよ、会社に何の影響もなくお金を貸し借りできる訳ではありません。その点は重々理解しておく必要があるでしょう。
3.役員貸付金と役員借入金のメリット
ただそうは言っても、役員貸付金と役員借入金にはそれぞれの場合に応じたメリットがあるものです。この章では両方のメリットについて、簡単に触れておきましょう。
3-1.役員貸付金のメリット
役員貸付金の最大のメリットと言えば、一時的に役員報酬の代わりに利用できることです。
この役員報酬については、①定期的に同額の給料が支払われること、②事前に確定の届出が済まされていること、③過剰な金額ではないことという条件を同時に満たす必要があります。仮に一つでも満たせていないと損金不算入科目として扱われ、会社にとってマイナスが生じることにもなりかねません。この特徴は起業したての会社や業績の見通しが立ちにくい会社であるほど重宝し、役員貸付金を一時的な資金不足に充てがうことが多くなってきます。
3-2.役員借入金のメリット
役員借入金のメリットとしては、まず利息の設定が任意であるということです。会社側にお金を貸した本人が納得した場合に限り、無利息でもお金を借りておくことができます。
またもう一つのメリットとしては、返済時期が自由であることが挙げられます。お金を借りている状態のためいずれは返済しなければなりませんが、会社の資金繰りがある程度改善されてから返済し始めても特に問題ありません。
4.役員貸付金と役員借入金の返済方法とは
ここまで役員貸付金と役員借入金の会社への影響やそのメリットについて解説しましたが、少なからず悪影響を及ぼす可能性がある以上は徐々にでも返済していかなければならないでしょう。ただこの返済方法によっても一長一短で、この方法であればデメリットが全くないということはありません。
また役員貸付金と役員借入金の場合で返済方法もそれぞれ異なるため、以下で具体的に見ていきましょう。
4-1.役員貸付金の返済方法
ここではまず役員貸付金の返済方法について確認していきます。
①役員報酬から返済する
返済方法の中でも一番オーソドックスなやり方です。役員報酬から支払うため手取りが減ることはデメリットですが、仮に返済分でお金が減らないように増額してもまた別のデメリットが出てきます。役員報酬の総額次第では社会保険料や税額まで増えるリスクがあるため要注意です。
②個人資産の売却益で返済する
個人が所有する資産を売却して返済に充てることもできますが、売却益には無論税金が課税されてしまいます。
③役員の退職金で返済する
役員を辞職してその退職金を返済に充てることはできますが、退職金として受け取った金額が減ってしまうことが最大のデメリットです。また仮に形式上退職した形で実際には役員を続けていた場合、退職金ではなく役員賞与とみなされるため所得税が別途課税されることになります。
④貸倒処理で返済を放棄する
役員貸付金の金額が大きく自力で返済が難しい場合には、貸倒処理をして返済すること自体を放棄する方法もあります。ただし放棄した金額が役員賞与とみなされるため税金が別途課税されるだけでなく、貸倒れの損失額には損金不算入で会社側も税金が課税されることがデメリットと言えます。また他の会社役員から同意が得られない場合には、そもそも貸倒処理をすることができません。
4-2.役員借入金の返済方法
対する役員借入金の返済方法について順に確認していきます。
①債務免除で返済を放棄する
役員個人が会社側に対して債務免除することで、会社側は返済せずに済みます。ただし免除された金額については法人税や贈与税が発生することもあり、余分な支払いが増えるデメリットがあります。
②DESで返済分の株式を渡す
債務資本交換を英語で略称するとDESになりますが、このDESでは役員に返済しなければならない金額分の株券を手渡すことで結果的に返済を帳消しにすることができます。ただ債権の時価相当額と額面金額の差益に対して、法人税が発生することがあります。また現時点での株主らに対してみなし贈与が発生する場合もあります。
③暦年贈与
役員が貸付金を贈与する方法で、年間110万円以内であれば贈与税は控除されます。
まとめ
役員貸付金と役員借入金の両方ともが便利である反面、何らかのデメリットが存在するものです。そしてこれは役員貸付金と役員借入金の両方に言えることですが、長期的にお金の貸し借りをしても良いことはありません。可能な限りは早期に返済することが望まれます。
ただ会社の資金繰りが苦しい時にわざわざ返して経営を悪化させては本末転倒です。資金繰りに若干でも余裕が出てきたタイミングで、徐々に返済していけばいいでしょう。