はじめに
企業の経営には莫大な運転資金がかかることは周知されていますが、その資金を集める方法は色々とあるものです。
ただ銀行の融資ともなると審査基準が非常に厳しく、起業して間もない時期や中小企業のように事業規模が限られる場合では、審査落ちする可能性が格段に高くなってしまいます。
そんな企業でも比較的容易に利用できるのがこの公的融資制度となります。
そこで今回の記事では、中小企業ほど活用しておきたい公的融資制度について解説します。
公的融資制度を活用すれば企業して間もない間の運転資金を得られたり、資金繰りを改善するための費用を調達できる可能性があります。
公的融資制度の内容についてあまり知らないという方は、この記事を読んで実際に利用するかを検討してみるといいでしょう。
1章:公的融資制度の概要
この章では、まずそもそも公的融資制度とは何かという部分から解説していきます。
1ー1 公的融資制度を行う機関とは
公的融資制度とは国や地方自治体といった公的機関から受ける融資のことで、金融機関から受ける融資とはまた違った特徴を持ちます。
この制度を導入している公的機関はいくつかあり、具体例を挙げると以下のようなものがあります。
・日本政策金融公庫
日本国内の中小企業や個人事業主向けに、主に事業資金を融資しています。国内企業が海外で事業展開する際の融資も行っており、事業主への融資だけでなく個人向けの教育ローンなども取り扱っているのが特徴的です。
一例を挙げると、「新創業融資制度」や「挑戦支援融資制度」、さらには「マル経融資(小規模事業者経営改善資金)」などのように融資の種類が豊富にあります。
・商工組合中央金庫
中小企業に対して事業資金を融資することを主体としており、ここでは「業界団体の制度融資」や「組織化、組合共同事業支援のための融資」などを行っています。中小企業団体向けの融資を多く行っていると覚えておくといいでしょう。
・沖縄振興開発金融公庫
沖縄県内に限られますが、同県内での開業や企業の経営に関する融資を専門に行っています。「農林漁業資金」や「医療資金」というように事業内容を限定して融資していないため、沖縄県での仕事を検討している方であれば活用できる可能性が高いです。
これ以外でも各都道府県や地方自治体で独自に行っている融資制度というものもあり、その種類は実に膨大です。
一般的には「創業支援制度」や「小口資金融資」などがあり、資金調達がままならない中小企業では活用しやすい融資制度が見つかる可能性があります。
融資制度やその条件については不定期に変更されることもしばしばあるため、公的融資制度の利用を検討している場合には、関連機関の公式ホームページは適時調べておくに越したことはありません。
またホームページを確認した上で不明点や疑問点があれば、同機関へと直接連絡をとり積極的に情報収集を行っていくようにしましょう。
2章:公的融資制度のメリットとは
公的融資制度を導入している機関がそれなりに存在することは把握できましたが、この制度を利用することでどのようなメリットを受けられるのでしょうか。その具体的なメリットとしては以下のようなものがあります。
2ー1 金融機関の融資よりも低金利
金融機関と比較した場合であれば、まず低金利であることがメリットと言えるでしょう。
金利が高いと融資を受けた後から始まる返済の資金繰りで苦労することもあるため、なるべくならば金利の低い機関から融資を受けたいと考えるのは経営者ならば当然の感覚です。
その点、公的融資制度では銀行から融資を受けるよりも金利が低いため、返済期間についても比較的短期で済む可能性があります。
2ー2 審査が甘い
金融機関からの融資の場合では審査基準が非常に厳しいことは前述しましたが、実際に審査を受けた経営者の中には何度も審査落ちをしているという方もいるかもしれません。
ただ、公的融資制度の場合では金融機関ほど審査が厳しくないため、入念に準備をした上で融資の申請に臨めば審査落ちさせられる可能性は格段に低くなります。
2ー3 融資対象が豊富である
公的融資制度は数が豊富であることからも分かる通り、融資対象となる中小企業の状況や事業種の幅がとにかく広いです。
そのため金融機関では請け負っていないような起業時にも融資してもらえる場合があり、資金調達が難しい時期でも利用できることが多くあります。
2ー4 長期的な運転資金としても利用できる
公的融資制度の種類が豊富なことは前述しましたが、低金利で融資してもらえるため場合によっては長期的な運転資金としての利用も検討できるかもしれません。
2ー5 保証人が不要
金融機関の融資であれば保証人を探す必要がありますが、公的融資制度の場合では一部の制度において保証人が不要であるため、その分の手間が省けます。
公的融資制度を利用する場合ではこのようなメリットを受けられるため、これまで利用を検討してこなかった方でも魅力的に感じられたのではないでしょうか。
ただ実際に利用するとなると、初回からの大口融資が必ずしも適用される訳ではありません。
公的融資制度といえども信頼関係を築く必要はあるのですが、その詳しい方法については次章で詳しく解説します。
3章:公的融資制度を上手に活用するために
公的融資制度を実際に利用するにあたり、初回から大口融資を申請して承認してもらえることはほぼありません。
実際に日本政策金融公庫での過去の融資金額の平均を見てみると、その金額は700万円程度と言われています。
これを多いととるか少ないととるかはあなた次第ですが、例えばあなたが全くの初対面の相手から大金を貸してほしいと言われた時を想定してみてください。
その言葉通りに全額貸せると判断する方は少なく、良くても少額だけ応じる程度ではないでしょうか。
公的融資制度といえども、信頼関係を築いていない状態では融資金額を申請よりも安く抑えてしまうことは想定の範囲内です。
公的融資制度を活用する上でもいくつかのポイントを押さえておくことで、信頼関係を築いていくことができます。それでは具体的にどのように行えばいいのでしょうか。
3ー1 面談ではなるべく多く情報提供する
一般的な公的融資制度の場合であれば、融資を申請する際には審査担当者との面談をすることになります。
この面談では企業の経営状態だけでなく取引先の名前や主な資金使途など、かなり踏み込んだ部分まで答えるように促されます。
ここで融資の承認に不利と思われる情報を意図的に隠してしまってはいけません。
ここで言う審査担当者とは、その企業と融資を実際に承認する上役との架け橋であり、審査担当者が上役に対して融資の承認を得るためにプレゼンをする代理人となってくれるのです。
上司にも分かりやすい情報を提供できなければならないため、審査担当者はかなり突っ込んだ部分にまで質問をしてきます。
審査担当者としても、自社の弱点を伏せるような経営者のために自ら協力したいとは思いません。
大切なのは自社の弱点を伝えるとともにセールスポイントを最大限にアピールすることです。
審査担当者もまた一人の人間であるため、真摯な態度で向き合うことが信頼構築の第一歩となります。
3ー2 保証人の能力が適切かどうかを検討する
公的融資制度でも保証人を必要とする制度はありますが、その保証人の返済能力が融資金額に見合っているかどうかという点も重要なポイントです。
仮にどうしても適任の保証人が見つからない場合であれば、信用保証協会を保証人にすることも一つの方法です。
公的機関としても貸し倒れは何としても避けたいため、保証人の質はそれなりに重視してきます。
信用保証協会を保証人にしておけば、万が一貸し倒れのような事態に陥った時でもその返済を負担してもらえる場合があります。
ただし、保証人になってもらう場合であっても信用保証協会にお金を支払わなければならないため、その点は注意が必要です。
3ー3 最初は小口融資から申請する
公的機関が融資するとはいえ、初回から大口融資を承認されることはまずありません。
仮に公的融資制度を二度、三度と利用する場合であっても、わざわざ初回の時点で申請する金額を高くする必要もないでしょう。
まずは小口融資から申請するようにし、長期的な付き合いを考慮に入れて利用を検討するべきでしょう。
たとえ小口融資の場合であっても、承認された金額が申請時よりも少額になっていることもあるかもしれません。
最初は少額融資になるという前提で申請に臨むようにすれば、仮に減額された場合であってもその金額を許容しやすくなります。
3ー4 助成金の活用も視野に入れる
公的融資制度ではありませんが、国や地方自治体が行なっている支援活動の中には助成金というものもあります。
助成金であれば原則として返済義務がないため、返済のための資金繰りに苦心する必要なくその資金を企業経営に投資することができます。
公的融資制度の場合にある返済が困難だと判断できる状況であれば、公的融資制度よりもまず先に助成金の利用を検討してみてもいいかもしれません。
ただ、助成金の内容については新設や廃止が頻繁に行われています。気になるものが見つかった際にはなるべく早期に準備を進めることをおすすめします。
まとめ
中小企業といえども利用できる制度は色々とありますし、公的融資制度について言えば融資に際しての審査が甘く、かつ低金利であることが最大のメリットになります。
短期的な資金の不足時や長期的な運用資金の調達時に便利ではありますが、審査に最低でも1ヶ月程度はかかることを頭の片隅に置いて行動するように心がけましょう。
仮に直近の資金が必要な場合に申請したところで、上記の審査期間が短くなるというものでもありません。審査には相応の時間がかかることを理解した上で、行動を起こすようにしましょう。
資金調達の方法はさまざまですが、企業のおかれているフェーズや時期的なタイミング、業種、企業の規模など、多くの条件が最適な方法を選べるか否かに関わってきます。
自社が各条件でどれに当てはまるのか、はっきりと答えられない経営者のために、資金調達マスターでは無料でご相談を受け付けています。
資金調達の方法だけでなく、それぞれの調達方法に適した弁護士、税理士、社労士のご紹介も可能ですので、まずはフォームよりお問い合わせください。