はじめに
会社を経営している方であれば事業を滞りなく展開し成長させていくためにも、日頃からの資金調達はかかせません。資金調達の方法として知られるものにはいくつか種類がありますが、中でも有名な方法であるのが銀行融資です。銀行融資は好条件でお金が借りられる分、審査の条件が厳しいことで有名です。ただ中小企業であっても銀行融資を利用することはできますし、その大まかな流れについて事前に知っておくことで銀行融資への対策をとりやすくなります。
この記事では銀行融資の主な流れを解説し、その際の注意点と重要ポイントについても触れてみました。これまで銀行融資を利用したことのない会社でも一度検討してみるだけの価値はあるので、この記事を参考にして最低限の知識を身につけてみてはいかがでしょうか。
1.銀行融資の主な流れ
この章ではまず銀行融資の主な流れについて解説します。銀行融資はその審査を銀行職員が行うため、手順も時間もそれなりにかかってきます。それでは具体的にどのような順序を辿るのでしょうか。
1-1.銀行の窓口で申し込む
銀行融資を利用するためにはまず銀行の窓口にて、銀行融資に関する申し込みを済ませなければなりません。申し込む場合には事前に用意しておく書類を持参することで、手続きをよりスムーズに済ませることができます。
個人事業主か法人の経営者かでも提出書類が微妙に異なりますが、どちらにも共通する書類としては以下のようなものがあります。
・決算書類(できれば3期分)
・資金繰り表
・資金使途を明確にする資料
この他にも例えば設備投資を希望する場合であれば、その設備の売買契約書の写しが必要になります。また例えば新規事業を立ち上げる際の準備資金が必要な場合であれば、新規事業の事業計画書を別途用意しなければなりません。
銀行側としても融資を希望する会社がどのような用途で資金を利用したがっているのか、また融資を受けた場合には返済できる目処が立つのかなど、万一のリスクを回避する意味でも細かい情報まで得ようとしてきます。提出書類については余白が多くならないよう、なるべく多くの情報を記入しておくといいでしょう。
1-2.書類審査が行われる
申し込み時に必要書類を提出し終えると、次に行われるのが書類審査です。例えば融資担当者との面談があった場合には、以下のような順序で審査が進んでいきます。
①融資担当者
②融資係長
③次長
④支店長
提出書類の内容に不備があったり面談時に何らかの懸念を抱かれなければ、基本的には支店長の時点で融資が決裁されます。ただし支店長を通過して本部にまで書類審査が回されてしまうと時間がかなりかかってしまいます。
書類審査が早く終わるかどうかの基準としては、融資担当者が「審査がスムーズに進みそうである」旨を経営者であるあなたに伝えてきた場合は、支店長決裁でより短期間で済まされることが多い傾向にあります。また仮に審査落ちしてしまった場合には何故審査を通過できなかったのか、この点について銀行側が理由を明かすことはありません。そのため審査落ちしてしまう会社は銀行融資の審査で連続して審査落ちしてしまうことも実際によくあります。
1-3.融資が実施される
書類審査を通過できたらいよいよ契約が結ばれ融資が実行される段階になります。ただここで注意してほしいのが契約書の内容についてです。融資が可決されたからといって契約書の内容に目を通さないままサインしてしまうと、もしかしたら希望通りの内容ではない条件での契約を交わしてしまうこともないとは言い切れません。
銀行側が故意に条件の変更をするとは言いませんが、書類の作成上で内容を誤って記入してしまう可能性は考えられます。契約書を交わす際にはその内容全てに目を通してから、合意の上で契約を交わすように心がけましょう。また契約書は2部作成されるので、1部は自分の会社できちんと保管することを忘れないようにしましょう。
銀行融資を受けるまでの流れとしては上記の通りですが、平均的には1ヶ月程度審査に時間がかかると思っておいてください。もちろん得意先として銀行融資を希望した場合ではもう少し時間が短縮されますが、信頼関係を構築していない銀行との新規融資ではそれもまず見込めないので時間に余裕を持って申し込むようにしましょう。
次章では銀行融資の注意点について紹介していきます。
2.銀行融資の注意点とは
銀行融資そのものの流れは前述しましたが、この章ではより細かな部分での注意点について紹介しておきます。
2-1.担保があれば融資可能は間違い
一昔前であれば人的もしくは物的担保を用意することで融資が可決される可能性は飛躍的に高くなっていました。しかし昨今では何らかの担保を用意したからといって融資が可決されるということはなく、担保はあくまでも万一のリスク回避のための最終手段としてみなされるようになりました。銀行側は融資を希望する会社の返済能力の有無で融資の可否を判断するようになり、担保は補助的な要素として見るように改められています。
ただ換金性の高い担保であれば銀行側としても好印象であることは確かであり、昔から好まれる担保としては不動産があります。また物的担保を差し出す場合では抵当権登記を融資前に済ませておく必要があり、登記が完了したことを確認できなければ銀行側は融資を絶対に開始しないのでその点だけ注意しましょう。
2-2.信用保証協会の利用を勧められる場合も
会社側が人的ないし物的担保を用意する場合もあれば、銀行側が会社側に対して信用保証協会の利用を勧めてくる場合もあります。この信用保証協会とはあなたの会社側が債務不履行になった際に、その返済額を代理弁済する役割を担ってくれます。
ただ信用保証協会を利用する場合では信用保証協会と銀行の審査とで二重に審査待ちする必要があり、銀行側だけの審査待ちをする場合よりも長く時間がかかってしまいます。また信用保証協会を利用する場合では毎月の返済に加えて信用保証協会の利用料も支払わなければならず、二社に返済するお金を確保できるかどうかもきちんと検討しておく必要があります。
2-3.経営者としての人間性も見られる
書類審査に進む前には融資担当者との面談を挟みますが、銀行側が見るのは会社の返済能力だけではありません。経営者であるあなたの人間性も見ており、信頼に足る経営者であるかどうかを面談時の対応から確認しようとしてきます。
例えば面談時には清潔感のある服装にしておくことで、融資担当者の印象はより好意的なものに傾きます。また面談時に会社の収益の推移や希望金額の妥当性について説明する際に、口頭のみではなくPowerPointのような資料を用意してプレゼンするのもいいでしょう。PowerPointをまとめる時間を惜しむよりも、融資担当者が上役に渡す稟議書をいかに書きやすく情報を提供できるかが重要です。融資担当者を味方につけるにはそうした細かい部分での努力や配慮が必要になってきます。
2-4.融資担当者には情報を偽らない
銀行融資を希望する会社であれば資金繰りが苦しく、どうにかして融資を受けたいと考えるのが実情です。ただ面談時には会社側としてはあまり知られたくない情報についても踏み込んで質問されます。そこで嘘の情報を教えてしまうと提出書類の内容から嘘が露見した際に、融資担当者のあなたへの信頼度が失墜します。
会社にとって不利な情報については隠しておきたい気持ちは分かりますが、虚偽の情報は言わずありのままの情報をきちんと伝えるようにしなければいけません。その情報が会社の弱みであると感じるならばその点をカバーできるだけの強みを併せて伝えることで、融資担当者に経営者としての手腕を感じさせることにもつながります。
また稟議書が作成される際には度々電話でのやり取りもありますが、その時もなるべく正確な情報を簡潔に伝えるようにしましょう。聞かれてもいないことまで答える必要はありませんし、余計なことを喋るとボロが出ることも考えられます。
銀行融資に関する注意点としては上記のようなものがありますが、これを踏まえた上で銀行融資の申し込みを順次進めていくとなお良いです。銀行融資では融資担当者を味方につけられるかどうかが勝負の分かれ目となっているので、誠実な態度の出来る経営者というイメージを演出して信頼を勝ち取るように努力してみましょう。
3.銀行融資に必要な書類とは
ここまで銀行融資の大まかな流れや注意点について解説してきましたが、銀行融資では書類審査のウェイトが非常に高いです。そのため銀行融資の審査に通過するためには、必要書類の内容を細かく作り込んでおく必要があります。
ただこれまで銀行融資を申し込んだことのない方であれば、銀行融資で必要とされる書類にはどういったものがあるのかあまり知らないという方もいるかもしれません。この章では次に、銀行融資で必要な書類について順に解説していきましょう。
3-1.銀行融資で必要な書類の種類とは
銀行融資に申し込む方が法人経営者あるいは個人事業主のどちらで申し込むかによって、実は必要とされる書類が微妙に変わってきます。
まず法人経営者として銀行融資に申し込む場合であれば、以下の書類が必要になります。
①経営計画書
②商業登記簿謄本
③決算書類一式
④月次決算書類
⑤今後の資金繰り計画表
⑥今後の損益計算書
⑦今後の貸借対照表
⑧資金使途の確認書類
⑨銀行からお金をすでに借りていれば、銀行の取引一覧表
次に個人事業主の方で必要となる書類については以下の通りです。
①会社概要が分かる資料(会社ホームページの写しやパンフレットなど)
②会社の商業登記簿謄本、あるいは印鑑証明書など
③事業計画書、もしくは創業計画書
④過去3期分の決算書類
⑤自社の製品およびサービスの紹介資料
⑥資金使途の確認書類
⑦今後の返済計画書
⑧保証人や担保などの用意があれば、その確認書類
どちらの場合についても税金を納めていることが分かる納税証明書や、銀行融資を申し込むための借入申込書は共通しています。またここで紹介した書類以外でも、銀行側から別途提出を要求されることもあるかもしれません。
その際には内容に不備がないかを事前に確認し、提出し忘れることがないよう十分注意しましょう。
3-2.銀行融資でも本人確認は必須
上記ではあえて紹介しませんでしたが、カードローンやクレジットカードなどの各種ローンと同様に、銀行融資でも本人確認書類は必須となります。
個人事業主および法人経営者の方で必要となる本人確認書類としては、以下のものがあります。
・運転免許証
・運転経歴証明書
・パスポート
・個人番号カード
・官公庁発行の顔写真付き証明書、顔写真付きの福祉手帳など
また法人経営者の方では上記の本人確認書類と併せて、下記の書類も提出しなければなりません。
・登記事項証明書
・印鑑登録証明書
・定款
・事業内容の確認書類
本人確認書類については、有効期限内のものでなければ無効となるので十分注意しましょう。また本人確認書類の住所と現住所が異なる場合には、銀行融資を申し込むより先に住所の登録を統一することから始めてください。
3-3.所得証明書は経営者なら必須
銀行融資で希望する金額は会社の規模や事業内容などによってもさまざまですが、高額の融資を希望する方に限っては所得証明書の提出を要求されることになるはずです。
ここで言う所得証明書とは経営者としていくら収入があるかを確認するための書類であり、例えば法人経営者では決算書類、個人事業主では確定申告の過去2〜3期分を用いることが一般的です。
またこれは経営者の方であれば知っておいてほしいこととして、これらの所得証明書は税務署あるいは税理士の押印があるものに限り銀行側に受理してもらえます。というのも押印がない書類については、その内容が虚偽である可能性が非常に高いと考えられるからです。
所得証明書を提出する際には押印があるかどうか、今一度確認しておくといいでしょう。
銀行融資ではこのように数多くの書類が必要となるため、申し込むことを決めた時点で早めに必要書類について確認するのが無難です。そしてどのような内容にすればより審査に通過しやすくなるかを知った上で、その内容を十分作り込む必要があります。
4.銀行融資の面接では何を聞かれるか
銀行融資の審査では書類審査のウェイトが高いものの、面接時の応対次第ではそれだけで審査落ちさせられてしまう可能性もあります。この章では銀行融資を申し込む上で知っておきたい、銀行融資での面接の質問内容についていくつか紹介しておきましょう。
4-1.会社を設立した動機は何か
会社を設立して新たに事業を興すとなると、かなりの時間や労力がかかります。経営者の方であれば、相当の覚悟をもって会社設立に踏み切っているはずと融資担当者は当然考えます。またこの動機から経営者としての人柄や意志の強さまで見られることになります。
そのため会社設立の動機を聞かれた際には、①過去の経歴、②経験から蓄積してきた知識や技術、③仕事への熱意、④今後のビジョンを軸にしてしっかりと答えられるよう事前に内容を練っておく必要があります。
4-2.自己資金は用意しているか
近年では会社法の改正により1円からでも会社を設立できるようになりました。しかし現実に1円の資本金で会社を経営することはほぼ不可能です。
融資担当者としてもどれだけの自己資金の用意があるかを確認したいと考えるため、計画性をもって貯金してきたことが分かる資料を示しながらその経緯と大まかな金額を説明するようにしましょう。またその際には通帳の入出金履歴も見られるため、安易に借入で自己資金を水増ししようとは考えないのが無難です。
4-3.同業他社との差別要因はあるか
銀行側としても利益を上げられる見込みのない会社にお金を貸したくはないので、自社が手がける事業について質問された際には、同業他社と差別化を図れる要因と、その事業の実現可能性が高いことを説明できるようにします。その際には自社サービスおよび商品の資料や、事業内容が詳しく記載されたパンフレットなどを用意しておくとより伝えやすくなります。
4-4.予想で算出した利益に根拠はあるか
銀行融資でお金を借りる以上は毎月の返済が必須になるため、銀行側としても返済がスムーズに行えるかどうかを知りたいと考えます。そのため今後の損益計算書や資金繰り計画表の内容についてその根拠を質問されると思いますが、その際には客観的な数値を元に根拠を示せるように、自社の事業における市場規模やターゲットとする潜在顧客層などの具体的な資料を示せるとなおいいです。
4-5.事業が上手くいかなかった時の対処法はあるか
予想通りに事業が上手くいけば特に問題ありませんが、会社を経営する上では何が起こるか分かりません。時には思い描く通りに事業が上手くいかず、利益が上がらないことも実際にあるはずです。
そうした場合に窮地を脱する対処法の有無を質問されることもあります。この質問から経営としてのリスク管理能力が問われることになるので、事業内容から想定されるリスクを一通り洗い出してからそれぞれに対する対処法を検討しておく必要があるでしょう。
5.どうしても銀行融資が無理なら
前章までは銀行融資に関する内容を述べてきましたが、ただ会社の経営状態や収益の低さなどの条件によっては審査落ちしてしまうことも実際にあります。そうした場合でも比較的簡単に資金調達する方法として、ビジネスローンが挙げられます。
このビジネスローンであれば銀行融資の場合よりも書類が少なくかつ審査の時間もかからないため、緊急時のつなぎ資金としてはもってこいです。ただし銀行融資よりも金利が割高に設定されているため、短期的な利用が望ましいと言えるでしょう。
また金融機関以外からお金を借りる場合であれば、日本政策金融公庫も候補の一つです。日本政策金融公庫は銀行融資の場合と同じく低金利で利用できますが、審査が厳しいという前提はあります。
特に創業融資を借りる場合であれば事業計画書をいかに綿密に記入できるかで審査の結果が大幅に左右されてきます。事業計画書を一人で作成するのが難しい場合には、創業融資に強い税理士などのプロに相談してみるのも一つの方法です。
まとめ
銀行融資は会社にとって好条件でお金を借りられる反面、銀行側の抱えるリスクが多いのが特徴的です。そのため銀行は万一のリスク回避の意味も込めて審査条件を厳しくし、時には担保を用意することを勧めてきます。
銀行融資を希望する場合には「いくらでもいいからお金を貸してほしい」といった、漠然とした妥協で融資を希望してはいけません。そうなると融資担当者も、「この会社は計画性もなく融資を申し込んだのか」と思いマイナスの印象を抱きやすくなります。銀行融資を真剣に考えるのであればなおさら希望金額を明確にし、その妥当性をきちんと融資担当者に説明しなければなりません。
ここまで読んで、「審査が厳しいことは理解したが、どうしても銀行融資がいい」とお悩みの経営者もいらっしゃるのではないでしょうか? 資金調達マスターでは、多種多様なお悩みにお答えする無料相談サービスを行っています。お申し込み方法も簡単ですので、資金調達についてお悩みの方は無料相談フォームよりお気軽にお問い合わせください。