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2019/09/27
建設仮勘定の定義やその会計処理について徹底解説!
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はじめに
勘定科目の一つとしてある建設仮勘定は名前の響きだけ聞くと、まるで建設業特有の勘定科目であるかのようにも感じられます。しかし実際には建設業以外でもこの建設仮勘定について取り扱う場面もあり、会計処理を行う方であればその基礎知識程度は大まかに知っておいて損はありません。
この記事ではそんな建設仮勘定の定義やその計算方法などに焦点を当てて、詳しく解説します。また建設業の特殊な報酬の支払い方法について知りたい方では、以下の記事もおすすめです。
1.建設仮勘定の概要
この章では初めに、建設仮勘定とはどういった定義の言葉であるかについて解説していきます。
1-1.建設仮勘定は有形固定資産の一種
建設仮勘定とは貸借対照表上に記載されている勘定科目の一つであり、より細かく言えば「有形固定資産」という括りに該当します。
ここで言う有形固定資産には実は二つの側面があり、会計上で言う有形固定資産と、税法上で言う有形固定資産とでは微妙に意味が異なってきます。
それぞれの意味の違いについて簡単に触れておくと、以下のようになります。
・会計上の有形固定資産:会社で継続的に使用することが前提となった資産のことを指し、ここには販売目的で所有している資産については含まれない。国際的な会計の基準として1年以内に現金化される資産については「流動資産」と呼び、会社が所有する資産については固定資産と流動資産の2種類から構成される。
・税法上の有形固定資産:法人税法上では固定資産に該当する資産について土地や家屋、償却資産などが取り上げられている。またこの分類については所得税法で定められた固定資産とも大まかには合致している。
ここで見た内容からも分かるように、会計上で言うところの有形固定資産とは会社で継続的に利用している資産のことを指しています。この「継続的に使用している」という文言についても後で詳しく解説するので、ここでは説明を省略しておきます。
1-2.建設仮勘定の定義とは
建設仮勘定が有形固定資産の一つであることを前述しましたが、前章の内容を踏まえて次は建設仮勘定の定義について解説しておきます。
有形固定資産と言えば会社で継続的に使用している資産のことを基本的には指すのですが、この建設仮勘定については完成する前の有形固定資産という扱いになります。
ここで建設業を具体例にすると、建設業で手がける建設物についてはその建設期間として一年以上を費やす工事になることも実際に少なくありません。
本来であれば工事完成の時点で報酬を全額支払われるところではありますが、そうなると下請け会社である建設会社の経営が傾いてしまうため、建設業法では工事の進捗度合いに応じて報酬の一部を支払うように義務付けています。
こうした報酬の支払い方法のことを「出来高払い」と呼び、建設業界で一般的な報酬の支払い方法として周知されています。
ちなみにこの出来高払いでは工事の完成した部分を金額換算して下請け会社から発注元に出来高請求する訳ですが、すでに完成している建設物の一部のことを「出来形」、またその出来形を金額換算した数値のことを「出来高」と呼びます。
建設仮勘定では完成前の有形固定資産について言及しているため、その会計処理の方法はその他の有形固定資産とは微妙に違ってきます。それでは具体的にどのような部分で違いがあるのでしょうか。
1-3.建設仮勘定の会計処理とは
建設仮勘定として有形固定資産を計上した場合では、いくつかの手順を経て会計処理を行うことになります。以下で大まかな会計処理のポイントについて確認しておきましょう。
まず工事の途中段階で着手金や中間金として報酬の一部を支払った場合には、貸借対照表上で「建設仮勘定」という勘定項目でいったんその金額分を計上しておきます。そして工事が完成した時点で建設仮勘定として費用計上していた金額分を差し引き、改めて有形固定資産の勘定科目へと振り替えることになります。
建設仮勘定という勘定科目が建設業界のみに限定されないことは前述しましたが、この建設仮勘定という科目で計上する費用については、主に完成前の有形固定資産であればその種類は問いません。
例えば長期的に工事をしなければならないような建設物や、工場で使用されるような大型設備などは、建設仮勘定を用いてその途中段階での支出についてその都度計上しておかなければなりません。
該当する有形固定資産が完成した時点でその金額分を改めて建設仮勘定から差し引く必要が出てきますが、製造期間が長期に及ぶ場合では建設仮勘定として計上される金額の回数がそれなりに多くなることも実際にあるほどです。
1-4.建設仮勘定の固定資産は実は減価償却できない?
税法上で償却資産として認められているものについては、資産の種類によって法定耐用年数がそれぞれ決まっています。有形固定資産ではその資産を継続して使用することにより年々その資産価値が下がっていくという考えに基づき、その固定資産にかかった費用については使用可能な期間に応じて費用配分することが企業会計上では望ましいとされています。これを「減価償却」と呼びます。
こうした購入費用の計算方法があることは一般的な会社員の方にも広く周知されていますが、今回の記事で解説している建設仮勘定で計上している固定資産については、実のところは減価償却することができません。
理由としては至極単純で、減価償却とはそもそも継続して使用している固定資産に限りその購入費用を数年単位で配分する会計方法となります。建設仮勘定で費用計上している固定資産については現時点でまだ完成しておらず未使用であるため、使用していない固定資産については減価償却できないことになっています。
そのため建設仮勘定で計上していた固定資産が完成した時点で初めて、減価償却できる状態になるという訳です。
1-5.建設仮勘定でも減損処理の対象になる
会社の決算書類で計上される資産とは、一般的に言えば会社のお金を増やすことに貢献してくれるものという認識になっています。つまり会社の資産である以上は、それぞれに価値があるのです。
ただ場合によっては特定の資産が有する価値が下がってしまうこともあり、そうした場合であれば「減損処理」を別途行わなければなりません。
ここで言う減損処理とは、固定資産の金額的な価値の減少に伴い決算書類での資産価値を減らすことを指します。
減損処理の金額自体は会計処理に関するルールで決まっていますが、固定資産から減損処理した金額分だけ「特別損失」として新たに計上する必要が出てきます。
ここまで建設仮勘定に関する基礎知識について確認してきましたが、完成前の固定資産ということで会計処理が若干面倒になってしまうことは否めません。しかしその性質さえあらかじめ理解しておけば、処理自体はそれほど難しくないためすぐ対応できるようになるかと思います。
一見するとややこしく感じられる建設仮勘定ですが、完成前では建設仮勘定という科目で計上しておき、完成後にその金額分だけ建設仮勘定から差し引き有形固定資産の部分を増額すれば特に問題ありません。また建設仮勘定の状態では減価償却できないものの、完成後はその他の固定資産と同じく減価償却し始めることが可能になります。
大まかにそれだけでも覚えておけば、基本的な対応はしやすくなるはずです。
2.建設業会計はなぜ必要か
建設仮勘定そのものは建設業界以外でも使われる勘定科目ではありますが、建設仮勘定を使いなおかつ業界ならではの特殊な事情を考慮しなければならない業界の一つに建設業があります。この章では最後に、建設業界ではなぜ建設業会計という別枠の会計処理が必要になるのか、その理由について簡単に解説しておきます。
2-1.建設業では会計基準が2種類ある
建設業では会計基準が2種類あり、工事進行基準と工事完成基準というものがあります。
これら2種類の会計基準については明確な違いがあり、例えば工事進行基準では工事の進捗状況に応じて一定のルールに従い金額換算した後に出来高請求をすることになります。それに対して工事完成基準では出来形を概算で把握して出来高請求することになります。
建設業界では長年慣習的に工事完成基準を採用している会社も多いですが、実際には工事進行基準の方こそ建設業の会計基準として適切であると言われています。分かりやすく言えば工事完成基準では目方で工事の完成度を判断して、全体に占める部分的な割合に応じて出来高請求をしていることに他なりません。
そのことから工事完成基準を採用した場合では正確な原価の金額を把握できないことも多いため、建設会社の一部では赤字工事ばかりを請け負ってしまっている会社も実際にあるほどです。
会社の実際の損益について把握するためには、工事進行基準に従って正しい会計処理を行う必要があります。
2-2.建設業独自の呼び方がある
建設業会計基準では商業簿記や工業簿記と違い、独自の呼び方をして勘定科目を分けています。しかし実際には商業簿記および工業簿記と類似する性質を持つ勘定科目も多く、一般的な勘定科目を知っていれば後は名前を追加して覚えるだけである程度対応できるようになります。
ここでは資金調達マスター内の記事から抜粋して、主な勘定科目の呼び方について紹介しておきましょう。
「①貸借対照表上の科目
・商業簿記の「売掛金」≒建設業会計の「完成工事未収入金」
・商業簿記の「仕掛品」≒建設業会計の「未成工事支出金」
→資産の欄に記載する
・商業簿記の「前受金」≒建設業会計の「未成工事受入金」
・商業簿記の「買掛金」≒建設業会計の「工事未払金」
→負債の欄に記載する
②損益計算書上の科目
・商業簿記の「売上高」≒建設業会計の「完成工事高」
・商業簿記の「売上総損益」≒建設業会計の「完成工事総損益」
→収益の欄に記載する
・商業簿記の「売掛金」≒建設業会計の「完成工事原価」
→費用の欄に記載する」
建設業会計を用いる場合にはこうした勘定科目の呼び方に変わることを肝に銘じ、工事の途中段階と完成時の2段階で会計処理が必要になることに注意する必要があります。
3.建設業での働き方改革とは
ここまで建設業での特殊な会計処理の方法について解説してきましたが、建設業でもまた働き方改革が進められています。これには建設業ならではの理由がある訳ですが、この章では次に建設業での働き方改革について解説していきます。
3-1.建設業で働き方改革が必要な理由とは
建設業以外の業界でも実際に導入されている働き方改革ですが、建設業の場合では団塊世代の方が多いことからその必要性が高いとされています。というのも、これまでの建設業界を支えてきたのが主に団塊世代の年代の方が中心だったために今後を支える若手の人材が必須と言えるからです。
また団塊世代が同時期に離職してしまうことで、建設業界の持続さえも難しいのではないかという見解があります。加えて他の業界に比べて労働時間が300時間超と長く、週休2日制の導入もなかなか難しいのが実情です。
そんな厳しい局面を迎える建設業ではあるものの、災害対策はもちろん建設物の継続的なメンテナンスなどのためにも必要性の高い業種であることは言うまでもありません。今後とも継続的に人材を確保するための対策として、「建設業働き方改革加速化プログラム」が策定される流れになりました。
3-2.建設業働き方改革加速化プログラムの主な内容とは
建設業での安定的な雇用維持のため、建設業働き方改革加速化プログラムでは以下の項目に焦点を当てて対策を打ち出しました。
①長時間雇用の是正
②給料および社会保障
③生産性の向上
各項目についてどのような働き方改革が検討されているのか、以下でより詳しく見ていきましょう。
①長時間雇用の是正
建設業では一ヶ月あたり300時間超の労働時間になることが一般的であることから、以下のような対策案が検討されています。
・週休2日制の導入を推進する
まずは一般業種でよく見られる週休2日制の導入をさらに推進しようとする動きがあります。
例えば週休2日制を導入するにあたっては会社ごとで必要とされる経費がある訳ですが、ここで必要な経費を正確に算出するために労務費などの補正の導入や共通仮設費、現場管理費の補正率の見直しの導入が検討されています。また週休2日制の工事そのものを大幅に拡大しようとする案も検討されています。
・発注者の実情を踏まえた工期を設定する
建設業では一件あたりの工期が平均的に長く、かつ納期の予定通りに工事を進行しなければならないため、非常にタイトな時間配分の中で工事が進行することになります。そのため長時間雇用になりがちな部分を配慮して、働き方改革加速化プログラムでは各発注者の実情を踏まえた「適正な工期設定等の為のガイドライン」を新たに改訂しました。
このガイドラインの詳しい内容については割愛しますが、具体的には週休2日制を実施するために必要な経費を算出するために補正率などを見直すこと、長時間労働を防止するためガイドラインを改訂することに焦点が当てられた内容となっています。
②給料および社会保障
継続的な雇用を実現するためには、労働者一人ひとりの給料および社会保障の充実は重要な課題として挙げられます。そのため働き方改革加速化プログラムでは、以下の方針を定めることで労働条件の改善を促そうとしています。
・技能および経験に見合った給料を実現する
建設業もまた技術職である以上、経験年数を重ねるほどに職人としての知識や技能が身についていくものです。ただその経験の蓄積に見合うだけの給料が伴わなければ、雇用の安定化を図ることは到底難しいと言えます。
そこで職人の就業履歴や資格などを業界全体として登録して管理できる「建設キャリアアップシステム」の稼働、および約5年以内での同システムへの加入を推進する案が検討されています。
・能力評価制度に伴う給料の実現
職人としての能力を適正に評価して給料額を算出する能力評価制度を検討するにあたり、特に高い知識や技能を有する職人の差別化を図る方法の必要性が注目されています。例えば公共工事での実際の業務に関する評価や、そうした職人を雇用する専門会社の施工工事の見える化を推進することも視野に入れられています。
・社会保障への加入を建設業の一般基準とする
建設業では社会保障未加入の会社が未だに多い現状があることから、社会保障未加入の会社については建設業の許可および実施を認めない方針が固められています。これにより建設業で会社を経営する以上は社会保障に加入しなければならないという風潮を作り、社会保障への加入を建設業でも一般基準化しようとする動きが見られます。
③生産性の向上
建設業全体として生産性を向上させるための対策案としては、以下の具体例が検討されています。
・中小企業でもITC活用を推進するため、公共工事の積算基準などを改善する
・工事に関する書類業務の負担を緩和するため、公共工事の基準を改訂する
・IoTや新技術の導入を図るため、施工品質の向上および省力化を目指す
・現場技術者が将来的に減少傾向になることを踏まえ、技術者配置要件の合理化を検討する
3-3.建設業で働き方改革が実施されるのはいつ頃からか
ここまで建設業働き方改革加速化プログラムの概要を確認してきましたが、実際に実施されるのはいつ頃になるのでしょうか。
労働時間については労働基準法第36条により定められていますが、法定労働時間を守る前提で労働基準監督署に届け出をした上で、労働者には時間外労働および法定休日労働をさせなければならないという決まりがあります。このことから「36協定」とも呼ばれている労働時間の法的な縛りがある訳ですが、実際に実施されるまでには5年間の猶予期間が設けられています。
そのため建設業で会社の規模を問わず実施されるのは、2024年4月以降であるとされています。ただし36協定で一部例外として認められている業種として建設業が挙げられることから、2022年以降は罰則付き上限規制の一般則を適用することが決められています。
ここまで建設業での働き方改革について大まかに紹介してきましたが、納期との兼ね合いから週休2日制の導入は現実的に厳しいというのが現場の声として上がっています。この納期という部分に関しては発注者の理解がなければどうすることもできないため、建設業での働き方改革を実現するためには工事の発注者の理解および協力が必須と言えそうです。
まとめ
今回は建設仮勘定について詳しく解説しましたが、建設業会計では商業簿記および工業簿記とは少し違う特殊な会計処理を行うことになります。自社内で正しい会計処理を行うことが難しいと感じる場合であれば、資金調達マスターの無料相談サービスがおすすめです。
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