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2018/10/31

ファンド融資を受けたい中小企業が注意すべきこと

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はじめに

大手企業ほどの信用力並びに担保力もない中小企業では、金融機関などから融資を受けられず資金繰りに余裕がないことがしばしばあります。また金融機関などの貸し手はリスク重視で融資の審査を行うため、一時的な経営難の状況であってもリスクを優先し融資を断られる可能性は十分ありえます。

この記事ではそんな資金繰りに困る中小企業が利用可能なファンド融資について解説します。経営状態があまり思わしくない中小企業でも活用できる可能性がある一方で、注意点もいくつか存在します。この記事では資金調達の方法として検討すべきファンド融資の概要も含めて、いったいどのような制度であるのかについて学んでいきます。

1章:ファンド融資の概要とは

冒頭でも述べたように、融資の回収リスクを優先するため、金融機関などでは中小企業への融資の審査に慎重になることが実によくあります。特に赤字経営や債務超過に陥っているような中小企業では融資を承認することがほぼないに等しく、資金繰りに困った中小企業は資金が枯渇すると同時に倒産というのがこれまでの流れでした。

しかし近年では、投資家たちから募った資金を融資するというファンド融資が台頭し、本来であれば金融機関から見捨てられ倒産するはずだった中小企業が、資金を調達できた末に黒字経営へ一転するといった事例が増えつつあります。

またファンド融資は金融機関などが敬遠するような状況の中小企業において資金調達に助力することで、結果的に数多くの中小企業の経営状態を再生させた功績が注目され、今年の9月末にはトパーズ・キャピタルが日本経済新聞にて取り上げられたこともあります。

ファンド融資では投資家たちから募った資金を中小企業への融資としてあてがっており、金融機関などが敬遠するリスクマネーを中継ぎ的に補てんする役割を担っています。特にトパーズ・キャピタルでは、こうした不良債権一歩手前の中小企業の情報は金融機関と協業することで収集し、正常取引先の範囲内に収まるまで経営状態を安定させた中小企業はその後、新規取引先として提携する金融機関などに引き渡す運びとなります。

つまり、中小企業の再生に貢献する新たな資金調達の方法としてファンド融資は注目を集めた訳ですが、具体的にはどのようなメリットが存在するのでしょうか。詳しくは次章にて解説していきます。

2章:ファンド融資のメリットとは

金融機関が見捨てるような中小企業の再生に貢献するファンド融資ではありますが、利用する中小企業にとって具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。その内容は以下の通りです。

2ー1 経営権を奪われるリスクがない

ファンド融資は別名「プライベート・デット・ファンド」とも呼ばれますが、同じような響きの専門用語として「プライベート・エクイティ・ファンド(以下、ベンチャーキャピタルとする)」というものもあります。ベンチャーキャピタルでは投資先の会社を成長させた末に株式上場させ、発行株式の売却や会社の売却によって出資金額の数倍にもなるリターンを獲得することを狙っています。そのため経営の主導権を握られ積極的に介入されてしまいます。

しかしファンド融資では経営権のようなリターンを要求されることはまずありません。もちろんファンド融資でも利息の支払いによるリターンを期待して資金を提供することに変わりありませんが、会社の経営に関わる部分ではないのでこの点はメリットととれるかもしれません。

2ー2 経営難に陥っていても資金調達できる

ファンド融資は主に経営状態が悪い中小企業を対象とするものが多いので、金融機関などで審査落ちした場合であっても融資を受けられる可能性があります。実際に審査を通過して資金調達できるかどうかはファンド融資の条件次第ではありますが、経営状態が芳しくない中小企業にとって頼るべき融資先であることはまず間違いありません。

2ー3 動産担保で借りられる可能性がある

金融機関などの融資を一度でも希望した方であれば分かると思いますが、返済の信用性に欠けると判断された場合では時として保証人や担保を用意できないかと打診されることがあります。ただ中小企業の場合では不動産や債権のような担保を用意できるところが実際に少なく、保証なしでの融資では審査落ちしてしまった経験のある方も割と多いのではないでしょうか。

これは特にトパーズ・キャピタルについて言えることですが、動産担保の評価および換価で有名なゴードン・ブラザーズ・ジャパンと資本業務提携していることもあり、動産担保の評価次第では融資を受けられる可能性が出てきます。この点についても金融機関などでは得られないメリットがファンド融資にはあるという判断材料になるでしょう。

ファンド融資から資金調達する場合では上記のようなメリットを得ることができます。収益性が低いと一度は見積もられた中小企業であっても、収益の確保が見込まれると改めて判断された場合にはファンド融資の利用が一転して可能になることも十分考えられます。

ただしファンド融資を実際に利用することを検討する上で、注意しておきたい内容というのもいくつかあります。次章では具体的な注意点について解説していきます。

3章:ファンド融資の注意すべきこととは

経営状態が芳しくない中小企業にとって、ファンド融資は非常にありがたい存在であることはもちろんですが、実際に利用しようとすると注意しておかなければならない部分というのも存在するものです。この章ではファンド融資を利用する上で事前に注意しておきたいことについて確認していきます。

3ー1 銀行よりも金利が高い

融資と言えば銀行のような金融機関をまず思い浮かべる方も多いかと思いますが、ファンド融資では一般的な銀行よりも金利の設定が割高になっていることが特徴的です。経営状態が芳しくない中小企業にお金を貸すことのリスクを考慮してのことではありますが、平均的なファンド融資の金利の高さとしては6〜10%で設定されることになります。

金利が高ければ高いほど元本に戻るまでに時間と金額がかさむため、場合によっては毎月の返済が苦しくなり滞ってしまうことも考えられるかもしれません。ファンド融資を利用する上ではそうした金利の高さを事前に理解しておいた方がいいでしょう。

3ー2 融資期間が短い

ファンド融資では、金利と同様に融資期間についても制限が設けられています。これも回収リスクを考慮してのことではありますが、基本的には1年以内と限定される場合が多いようです。融資期間を短く切られるということはその分返済期間も短くなってくるため、月々の返済額がより多くなってしまうことは想定の範囲内の話です。

融資期間が長いほど月々の返済額が少額で済み資金繰りにも響きにくいのですが、銀行などの金融機関が敬遠するような状況でお金を借りられることを思えば、そのデメリットを黙認してでも融資を受けるという選択肢はあります。

ファンド融資の注意点としては金利が高く融資期間が短いことが挙げられますが、どうしても会社の運転資金が欲しい場合には選択肢の一つとして検討する余地はあるでしょう。

ただファンド融資以外でも中小企業が活用可能なファンドが他に存在することも確かです。次章ではファンド融資以外のファンドの種類について、簡単にですが紹介していきます。

4章:ファンド融資以外のファンドとは

この記事では主にファンド融資を利用することを前提とした内容を書いていますが、中小企業の立て直しを図るために利用できるファンドは融資ファンド以外にも実際にいくつかあります。この章ではファンド融資以外にも知っておきたいファンドの種類についていくつか見ていきましょう。

4ー1 ベンチャーキャピタル

ファンド融資と類似する響きの専門用語として、プライベート・エクイティ・ファンドについて触れましたが、ここでは分かりやすくベンチャーキャピタルと呼称しておきます。このベンチャーキャピタルとは、新事業や新業種を手がけるベンチャー企業の成長を資金面で助力することを目的としたファンドとなります。

出資した資金の直接的な返済義務はありませんが、数年内に株式上場を果たすところまで会社を成長させた上でその株式を売却、もしくは会社の事業を売却する形で数倍にも及ぶリターンを狙うのが主なファンドの目的です。あくまでも中小企業の成長のためではなく自社の利益を追求するために資金を出資しているので、経営に関する部分には積極的に介入してくることは知っておかなければなりません。

一般的な融資のように出資された資金を返済する必要がないというメリットがある一方で、配当金を分配したり議決権の行使で経営方針を曲げられたりといった別の部分でのデメリットを負うことになります。

4ー2 クラウドファンディング

近年ではインターネット決済が普及したこともあり、企業が銀行からお金を借りるBtoBの取引ではなく不特定多数の群衆から資金を募るBtoCによる資金調達の方法も主流になりつつあります。このクラウドファンディングでは基本的に、①融資型②株式投資型③ファンド投資型④商品購入型⑤寄付型の5種類に分類することができます。

それぞれの種類について簡単に紹介すると、以下のような内容になります。

①融資型
主となる事業者が不特定多数の群衆から資金を募り、その上で事業者がお金を借りたい企業に対して融資を代行する種類のことを指します。その融資で発生する元本+金利については出資したユーザー一人ひとりに分配して返済することになります。2007年に融資型クラウドファンディング専門のmaneo(マネオ)が誕生して以来、クラウドファンディングの中でも市場規模の大きい種類となっています。

②株式投資型
クラウドファンディングで言うところの株式投資とは、未上場株に投資することを指しており、基本的には一般的な株式投資と同じイメージです。IPOや株式上場時に初めて数倍のリターンにできる可能性を秘めており、株式投資型クラウドファンディングを専門に手がけるサイトは未だに数が少ない状況ではあります。
ベンチャーキャピタルや個人投資家から資金を募る場合よりも不特定多数の方から資金を集められる可能性がある一方で、決算書類や事業計画書の開示など一般的な上場企業と同等の書類の準備が必要とされ、審査や書類の準備だけでもかなりの時間を要します。

③ファンド投資型
ファンド投資型では融資とは違い、投資した事業に対する売り上げに基づく分配金およびその事業によって製造された商品そのものを出資者は受け取ることになります。
あらかじめ目標設定しておいた売り上げを達成できた時点で出資者に対する分配金が発生するため、目標に到達できなかった場合には元本割れするリスクを承知の上で出資者は資金を出してくれます。ある意味では利用する企業のハードルが低い種類であるとも言えるでしょう。

④商品購入型
この種類のクラウドファンディングでは出資者へのリターンが限定の商品もしくはサービスの提供となっています。日本国内ではReadyfor(レディフォー)が主流であり、資金調達の具体的な方法としてはAll or Nothing方式もしくはAll-In方式があります。
前者の場合では目標金額に到達しなかった場合にはいくら集まろうが資金を受け取れない特徴であるのに対し、後者ではそれまでに集まった金額は目標到達に関係なく受け取ることができます。どちらの種類についても一長一短がありますが、ここでは割愛します。

⑤の寄付型は一般的に街頭でよく見かける募金活動と同じく、唯一リターンのない資金調達の方法となります。中小企業の経営者の方であれば主に①〜④までの内容が関連するかと思いますが、自分の会社がどういった事業を手がけるかでも利用できるクラウドファンディングの種類が変わってくるはずです。
ファンド融資の利用が困難である場合には、あえてこうした不特定多数の出資者から資金を調達するというのも一つの方法ではあります。

まとめ

ファンド融資は経営難に傾く中小企業にとっての頼みの綱であることはもちろんですが、それと同時に融資の回収リスクを考慮した利用する側のデメリットというものがあることも確かです。利用の仕方次第では重宝しますが、無理な返済計画を立ててまで融資を受けるくらいならば別の方法で資金調達した方がいい場合も恐らくあるはずです。

現状でも資金に換価できる資産がないか、余剰な経費を削減できないかなとあらゆる方面から運転資金を確保した上で、ファンド融資の利用が現実的であるかどうかについてまずは検討してみるといいでしょう。

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