会社に勤めるサラリーマンとしての働き方を変えたい方であれば、現時点で起業することも視野に入れて働いているサラリーマンの方も実際にいるのではないでしょうか。
その中でもとりわけ華やかな世界という印象が強いアパレル業界ですが、アパレル業界での起業、そして存続がいかに難しいことであるのかを起業未経験の方ほどあまり知りません。
この記事ではアパレルで起業を考えているあなたに向けて、アパレル業界の知られざる闇の部分を伝えてその実態に迫ります。
またこの記事の内容を読んでなおアパレル業界での起業を考える方向けに、記事の後半部分では起業する上で必要となる観点についても併せて紹介しています。
起業したいという意思を現実のものとするためにも、ぜひ一度最後まで目を通してみてください。
1赤字企業ばかりの実態
この章ではまずアパレル業界の実態の一環として、赤字企業ばかりが散見されるその厳しい現実について解説していきます。
アパレル業界とはその規模にもよりますが、起業することよりも年単位で存続し続けることに実際の難しさがあります。
衣食住の衣として生活の必需品と考えられるアパレル業界は、何故それほどまでの不況に追い込まれてしまったのでしょうか。
その背景には複数の要因が絡み合っていました。
1ー1 バブル崩壊による影響
日本の歴史の中でも有数の好景気の象徴として知られるバブル期ですが、国民の多くがお金に余裕があったことからバブル期には高級なブランド品が飛ぶように売れたと言います。
当時はよく周知されているブランド品を身につけることへの関心が高かったため、アパレル事業を手がける各百貨店および量販店は有名ブランドを店頭に並べるだけで売り上げが順調に推移していきました。
しかし好景気に沸いたバブルが崩壊してからというもの、アパレル業界もまた過渡期に突入します。
かつては通用していたアパレル業界の構造が時代の推移とともに通用しなくなってきたのです。
現状のアパレル業界の厳しさを知るためにも、ここでバブル期に代表されるアパレル業界の典型的な構造について詳しく解説しておきましょう。
かつてのアパレル業界ではそもそも会社の本部がマーケティングやブランディングといった実質的な部分を一律的に決定していました。
つまりアパレル商品を取り揃えている実店舗は本部主導の元に経営されていたのであり、店長ならびにその下の販売員はそれほど集客面に力を入れる必要がなかった訳です。
これまでであればその典型的な構造でも十分な売り上げを獲得できましたが、時代の変遷により顧客の購買行動の理由付けが変わってしまったことがまず問題でした。
バブル期であれば有名ブランドの商品を目当てに、その店に連日行列ができるほど顧客が集まりました。
商品優位での購買行動とも言えます。そしてバブルが崩壊した後にアパレル事業を手がける会社がさらに増えたことで、顧客が分散されます。
主に実店舗でしかアパレル商品を購入できない時代には、その販売店舗の雰囲気や販売員の接客といった実店舗の魅力によって顧客がついていました。
この後にネット通販サイトが繁栄したことによる余波については詳しく解説するので詳細は省きますが、実店舗以外でもアパレル商品を購入できるようになった現代であればこそ、起業して実店舗を構えアパレル商品を販売することのハードルがかなり高くなっているのです。
1ー2 絶食系の台頭
ファッションを楽しむ理由は人により様々ですが、やはり周囲の視線を意識しているからこそ自身の装いにそれ相応のお金を注ぎ込んでいるという方が多いはずです。
そうした方であればもちろん異性からの視線も意識しており、恋愛に関心を寄せることがイコール日頃のファッションに気を抜けないという感覚に繋がりやすい傾向にあります。
ただモテ系として総称されたファッションが廃れた時点から、恋愛に消極的な「草食系」、さらには恋愛に一切の関心を寄せない「絶食系」と呼ばれる若者が登場し始めました。
こうした若者が台頭したことにより、ファッションに関心を寄せる人間の割合が全国的に減少傾向へと転換しました。
ファッション離れとも言うべき現象が深刻化する状況では高級ブランド品が売れなくなる一方で、「UNIQLO」や「しまむら」のようなファストファッションと呼ばれる安価なアパレル商品の売り上げは順調に推移しています。
マーケティングやブランディングさえ盤石であれば売り上げが伸びたかつての面影はほぼ皆無と言っても過言ではありません。
1ー3 隠れ在庫での赤字隠ぺい
近年では前述したファストファッションに押されるようにして中小企業の経営不振が深刻化しており、会社を畳んでしまうところも年々増加しています。
そんな経営不振の現状を隠すため、赤字に喘ぐアパレル会社の中には商品をきちんと計上しない隠れ在庫を抱えるところが実際に数多く存在します。
この隠れ在庫とは現在の市場価値で適正な価格を算出する棚卸評価をされていない、もしくは棚卸評価まではしても損金として計上されない在庫のことを指します。
言い換えれば棚卸評価をして損金として計上しなければ表面的には赤字が存在しないことになり、経営不振の状況を一時的に隠し通せるという意味でもあります。
ただしアパレル業界における商品価値とはブランドとしての価値の他にも流行が深く関与しているため、時間が経過すればするほど売れ残った商品の価値は目減りしていきます。
隠れ在庫の中にはもしかすると、現時点で商品価値が一切ないものも含まれるかもしれません。
そうした不良在庫を隠し通すために最近では商品を調達する上で経由する商社に口添えし、決算時期だけ隠れ在庫を一時預かりしてもらうアパレル会社まで出現するようになりました。
しかし日本で売れないからといって海外でも同じことが言えるかと言えば、実際にはそうではありません。
日本国内のマーケットでの売り上げは減収減益であるにもかかわらず、「UNIQLO」を運営するファーストリテイリングは海外での販売に活路を見出したことで業績を黒字で伸ばしています。
国内での市場価値がないからといって必ずしも商品価値が全くない訳ではない最適な実例とも言えるでしょう。
1ー4 ネット通販サイトの隆盛
実店舗を数多く構えるアパレル会社が何故それほどまでに苦境へと追い込まれたのか、その元凶とも言うべき要因がネット通販サイトの隆盛です。
実に多様なアパレルブランドを取り扱うネット通販サイトとして有名な「ZOZOTOWN」が人気を博することからも分かるように、現代に生きる若者の多くがネット通販を愛用しています。
実際にネット通販サイトを利用すればアパレル商品を取り扱う販売店まで見に行く時間を省けますし、販売員からの型通りの接客の相手をする必要もありません。
また最近では「メルカリ」のようなフリマアプリが流行したことで、古着を個人から購入するという選択肢も増えました。
以上の要因が複雑に絡み合うことで、アパレル業界は現在進行形で未曾有の氷河期に突入しています。
そんな厳しい状況下では、アパレル会社を新規で起業するだけでもいかにリスクの高い挑戦であるかがお分かりいただけるのではないでしょうか。特にこれまで起業した経験のない方では、一番困るのが起業後の資金調達についてです。この点については記事の後半でお役立ち情報を掲載しています。そちらもぜひ参考にしてみてください。
2販売員教育の難しさ
アパレル業界そのものが不況であることに加えて、現場とも言うべき実店舗での販売員教育の難しさも実際にアパレル会社を起業する上での障害として立ちはだかってきます。
会社の方針としてのブランディングが上手くいけば実店舗での売り上げが伸びた時代とは違い、最近では実店舗まで出向く煩わしさを排除する意味でもネット通販サイトの人気が高まっています。
そのため実際に店舗を構えてアパレル商品を販売している会社では、これまでの間に販売員教育に重点を置いたところがほとんど存在しなかったことになります。
その結果として別の会社であれどの店舗に出向いても型通りの接客をされ、顧客側としては時にうっとうしささえ覚えてしまうのです。
そんな十把一絡げな接客をされてまで店舗で商品を選別するくらいならば、インターネットを検索して気軽に商品を調べる方がよほど理にかなっています。
不況の煽りを受け始めてからというもの、アパレル業界でも老舗と言うべき会社でさえ一時期は退職希望の人員を募りました。
あるいは一方的な人員削減をして人件費削減をしました。
ただ全てのアパレル会社が全店舗を閉店してネット通販サイトに移行できる訳ではありません。
店舗を大幅に減らすことはできたとしても全ての店舗を畳む訳にはいかず、結局のところは実店舗の売り上げを伸ばすための施策を講じなければなりません。
ブランドの多様化によりブランドそのものの価値が分散してしまった現状であればこそ、売り上げに貢献できる販売員に育て上げるための教育方法が問われています。
3それでも頑張りたいあなたに
これまでの章ではアパレル業界で起業することの難しさを取り上げて解説してきましたが、この記事を読む方の中にはそんな現状を知ってなおアパレル業界で起業したいと考える方もいるかもしれません。
この章では逆境の中でも頑張りたいと考える方向けに、起業する上で知っておきたい失敗と成功を分かつ条件について解説しました。
3ー1 起業で失敗しやすい特徴とは
アパレル業界に限らず起業するためには、資金の確保や事業計画の立案といった様々な問題があります。
ただ起業したいからという動機だけで安易に起業してしまうと思わぬ落とし穴にはまってしまい、資金が底をつくだけならまだしも多額の負債を背負うはめにもなりかねません。
起業で失敗しやすい方の特徴を以下に挙げるので、まずは自分が当てはまりそうな項目がないか確認してみましょう。
・立地の良い一等地に店舗を構えたいと考えている
・事業計画を細かく立てていない
・アパレル会社としてのコンセプトを絞っていない
・集客方法について考えていない
・ネットショップのやり方が分からない など
他にも失敗に繋がりやすい特徴はいくつもあるでしょうが、総じて言えることは起業するための準備をただ漠然と行ってしまう方ほど失敗するリスクが高いということです。
売り上げや利益など二の次で趣味の一環として起業するのであればそれほど細かく計画を練る必要はないかもしれませんが、大半の方は安定的な利益を上げることも視野に入れて起業することを検討しているはずです。
安易な気持ちから起業を考えているのであればそれこそ断念した方が無難というものです。
それでは起業して本気で利益を狙っていくためには、どのような点に留意するべきなのでしょうか。
3ー2 起業して成功するためには
実店舗を構える前提で起業してしまうとその店舗を建てた場所の土地代、そこに勤める販売員の人件費は継続的にかかってきます。
特に売り上げが伸び悩む時期ほどその金銭面での圧迫は多大な影響を及ぼし、場合によっては一年と保たずに閉店まで追い込まれてしまうこともありうるかもしれません。
そんなハイリスクの起業方法を選ぶよりも初心者であればインターネットを利用した起業方法、いわゆるネットショップを運営することをおすすめします。
ネットショップであれば資本金0円から始められる場合もありますし、自分一人で運営していれば実店舗のように人件費がかかりません。
また仮に自分で商品のデザインから制作までを一貫して手がければ費用は材料費のみに抑えられます。
あるいは「BUYMA」のようなネットショップであれば無在庫でもアパレルショップを運営できるため、アパレル商品を販売したいだけであればわざわざ起業する必要もないかもしれません。
もちろんアクセサリーやバッグといった小物を自作する場合でも「Creema」や「minne」といった、ハンドメイド作品の取り扱いが多い通販アプリを利用することもできます。
自分で商売をするためにはまず起業することが必須であると思われがちですが、近年では実に多種多様な方法によってアパレル商品を販売することができるようになりました。
アパレル業界との接点の持ち方は人それぞれなので、自分がやりたいことを優先できる方法が別にあれば何も起業することばかりにこだわる必要もないはずです。
また起業すれば資金調達の方法について頭を悩ませる機会も多くなるため、頼れる専門家を探すことも時には必要かもしれません。
4.資金繰りを安定させるための方法とは
4-1.支出をなるべく抑える方法とは
4-2.収益をより多く増やす方法とは
まとめ
アパレル業界に関心を寄せる人間が減少してなお、アパレルショップの在り方は未だに多様化しています。
起業して成功するためには顧客のニーズに応じて臨機応変に方針を微調整しつつ、自身が手がけるショップのコンセプトはしっかりと軸を据える必要があります。
どうしてもアパレル業界で起業したいというのであれば、まずは昨今の流行に敏感になりファッションに興味を持つ人間が今何を求めているのかについて常に勉強し続ける必要があることは言うまでもありません。
また流行やマーケットのことだけではなく、ご自身で会社の経営を行う方は、資金繰りのことも考えなければなりません。資金調達を確実に行うには多くの知識が必要になります。独学も経営の未来を支える大切な学び方ですが、専門家に相談することが正しい知識を身につける何よりの近道です。
資金調達マスターでは、多種多様なお悩みにお答えする無料相談サービスを行っています。
お申し込み方法も簡単ですので、資金調達についてお悩みの方は無料相談フォームよりお気軽にお問い合わせください。