助成金

2018/11/30

助成金の申請をする時に社労士に相談できること

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はじめに

会社を経営している方の中で、「社労士」という言葉を知っている方はどれくらいいるのでしょうか。

社労士とは会社のヒト・モノ・カネの中でもヒトに関する業務を代行する職種となります。しかしヒトに関する業務の専門家とはいえ、会社経営者の方の認知度は実際には極めて低い状態と言えるでしょう。ただ会社の資金繰りのために助成金を利用しようとしている方であれば、なおさら社労士という専門家と助成金との関係性について知っておくべきです。

この記事では助成金の申請をする時に社労士に相談できることと題して、社労士に実際に助成金のことで相談できる内容についてはもちろん、そのメリットやデメリットについても併せて紹介していきます。会社の雑務に至るまで全てをこなす経営者の方であれば、社労士を頼ることで会社がより良い方向へと成長する可能性があります。

それではさっそく見ていきましょう。

1.社労士とはどんな専門家か

社労士と助成金との関係性について解説する前に、まずは社労士という専門家がどういったものであるかについて確認しておきます。

そもそも社労士とは通称であり、正式名称は「社会保険労務士」となります。社労士は資格の中でも国家資格にあたり、「業務独占資格」として法律で認められています。
どういうことかと言うと、ある特定の資格を有する専門家のみが特定の業務をこなすことができるということです。つまり社労士はこの業務独占資格を持っているために、ヒトに関する業務を専門的に行うことができるのです。

専門的なことはなるべく省きますが、社労士の業務に関する法律としては以下のようなものが挙げられます。

・労働基準法
・労働安全衛生法
・雇用保険法
・健康保険法
・厚生年金保険法 など

ここに挙げたのはあくまでも一例ですが、社労士が業務上で関わる法律はそれだけ多岐にわたるということです。
ただ上記のように関連する法律の幅が広いため、同じ社労士によっても得意な分野と不得意な分野がそれぞれに違います。実際に助成金のことで相談したいと考えている場合には、助成金の申請に関して実績のある社労士を探すように心がけるといいでしょう。

2.助成金を申請するメリットとは

この記事を読んでいる方であれば助成金を申請することを真剣に検討している方の方が多いでしょうが、中には助成金のメリットについてあまり知らないという方もいるかもしれません。この章では助成金を申請するメリットについて、簡単にですが紹介しておきます。

2-1.返済義務のないお金が得られる

融資の場合では借りたお金として返済義務が生じますが、その一方で助成金の場合では返済義務がありません。

2-2.コンプライアンスを遵守するきっかけになる

助成金を申請する際には、必然的に労務管理の面でのコンプライアンスの遵守が求められることになります。そのため助成金の申請を皮切りに、就業規則を整備したり法律に抵触しない方法での労務管理をきちんと行う必要が出てきます。それ自体は会社にとってのプラスになることはまず間違いありません。

2-3.受給できれば会社の信用度が上がる

助成金を受給するためには一定の要件をクリアする必要がある訳ですが、仮に受給できればそれだけでも客観的な信用度が上がることになります。公的な審査に通過した時点で会社としての信頼度が上がり、結果的により良質な人材が集まりやすくなります。

2-4.助成金を繰り返し受給できるようになる

助成金は短期間で頻繁に内容が変わることがありますが、例えばキャリアアップ助成金のようなものであれば対象者がいるだけで毎年のように受給可能な助成金もあります。一度目の申請時に細かな部分まで整備してしまえれば、それ以降では苦労なく助成金を受け取れる環境が整うという訳です。

助成金を受給できる状態へと持っていくために時間や手間をかけることは、ひいては会社にとってプラスの要因を増やすことにつながります。特に助成金を上手に活用する会社ともなると、最低でも年間で数百万円もの資金を無償で手に入れることができています。総合的な観点からも助成金を申請するメリットは大いにあると考えられます。

3.助成金の申請時に社労士に相談できることとは

それでは本題へと移りましょう。前章を読んだだけでも助成金の申請時にはさまざまな関門があることを理解してもらえたかと思います。助成金の申請時に社労士に相談できることはどういったものがあるのか、この章で詳しく見ていきましょう。

3-1.助成金の申請に必要な書類

助成金の申請にはもちろん公的な視点から審査される訳ですが、そのためには会社の労務に関する資料が必要となります。具体的には以下のようなものが挙げられます。

・就業規則
・労働条件通知書
・雇用契約書
・タイムカード
・賃金台帳 など

労務全般の資料を揃えられる従業員がいればまだいいですが、一般的な中小規模の会社であればそういった専門知識を有する方がいないことの方が普通でしょう。そうした場合でも自力で資料を用意することはできますが、万が一にも内容に不備があった場合には申請したところで許可が下りないことさえも十分考えられます。
そういった残念な事態にならないためにも、助成金の申請時には社労士に依頼することをおすすめします。

3-2.助成金の内容は都度変わる

助成金について多少知識のある方であればご存知かもしれませんが、助成金の制度やその内容は年度や時期によっても都度変わります。会計年度が変わり新たな制度内容が整備される場合であっても、厚生労働省の公式ホームページには掲載されるまでの間は簡潔な案内文が一文だけ載る程度です。また厚生労働省から希望する会社に対して更新通知を送るような仕組みもまずありません。
この時にも社労士を雇っていれば、最新の情報をいち早く入手することができます。

3-3.雇用関連の問題を整備してもらえる

社労士は雇用関係の助成制度について相談することができますが、助成金の申請をする際には法定帳簿と呼ばれる書類を揃える必要があります。その内容自体は申請に必要な書類として挙げたものと重複しますが、これらの法定帳簿に基づき計画書の作成および労務環境改善の目標設定をしなければなりません。
もちろん労務署でも法定帳簿に関しての相談をすることはできますが、一般的な内容での回答であって会社の状況に即した細かな回答とはいきません。より良い労務管理のためには法律に則った内容の法定帳簿が必須であり、そのためには社労士に依頼するのが一番の近道と言えます。

3-4.助成金の申請を代行してもらえる

社労士に依頼するだけでもかなりの手間や時間が省けますが、会社経営者の方の中には助成金の申請に時間を割けないという方もいるかもしれません。そうした方であれば社労士に助成金の申請を代行してもらうことで、より確実に助成金の受給まで漕ぎ着けることができます。
その具体的なステップとしては以下のようになります。

①めぼしい助成金を選択する
②必要書類を作成し、不備のないように用意する
③計画に基づきその内容を実行していく
④計画期間を終えた時点で、助成金の申請をする
⑤申請後約1〜2ヶ月後で受給の諾否が郵送通知される

助成金の申請については一日でも遅れてしまうと、それだけで審査落ちは確実です。その点社労士に依頼しておけば、期日に間に合わせる形でスケジュールを立て円滑にこなしてくれます。

4.社労士を企業内で雇うメリットとは

社労士を企業外で雇う場合、まずは会社の近隣で社労士の働く事務所を探すところから始めなければなりません。しかし企業内で働く従業員に社労士としての資格を有する人材がいた場合、企業外で雇うのとはまた違ったメリットがいくつかあります。

この章では次に、企業内で社労士を雇うメリットについて順に確認しておきましょう。

4-1.労働環境整備のコストが削減できる

社労士と言えば企業で働く人材のためのプロフェッショナルですが、顧問契約をして雇うとなると月々で発生するコストはなかなかのものになってきます。しかしその点企業内で社労士を雇えれば、資格手当を上乗せして支払ったところで顧問契約した場合のコストよりは幾分かの負担軽減ができるはずです

特に労働環境の整備については営業施策とは違い、短期的に劇的な効果を発揮するものではありません。中長期的にじわじわと効果が現れるものであるため、可能な限りはコストを抑えつつ着手していくことが望ましいと言えます。

4-2.したいタイミングで相談できる

顧問契約した社労士の場合にも電話や面談での個別相談は受け付けているものの、電話かメールで予約を入れて日程を決めてから事務所まで出向き相談するというのはなかなかに骨が折れるものです。

それに対して企業内で社労士を雇っている場合であれば、相談したいことができたタイミングでいつでも簡単に相談することができます。また企業内で雇っている社労士であれば企業内での出来事を十分に把握していることから、問題の早期解決ができるものと予想されます

4-3.会社経営がスムーズになる

国内で施行されている法律については不定期に変更されており、労働関係および社会保険関係の法律に変更点が出る度に社内の規定についても微調整を行なっていく必要が出てきます。ただし会社の経営者といっても法律関係のプロではないため、細かな変更点が出た際にすぐさま対応できないといったこともしばしばあるはずです。

その点社労士であれば人材関連の法律に精通しているため、法律が変更される都度適切な形でのアドバイスをしてくれます。法律に則って社内規定を細かく変更していれば、社内紛争が発生することや行政指導が入ることも未然に防ぐことができるかもしれません。こうした事態の予防もできるとなれば、会社経営がスムーズになり経営者としては経営面にだけ注力して取り組みやすくなります。

4-4.アドバイスの精度が上がる

顧問契約している社労士のアドバイスが無責任な内容であることはまずないでしょうが、企業外で雇うよりも企業内で雇った社労士の方がアドバイスの精度が上がりやすい可能性は考えられます。会社の人材に関する経営課題はさまざまありますが、その問題に対して不適切な発言をすればその社労士にも結果的に跳ね返ってきます。

社労士自身も余計な被害を受けたくないため、その発言内容は必然的に十分考慮されたものになっているはずです。また社内の問題について精通する社労士であればより適切な内容でのアドバイスを考えられることから、会社にとって頼れる存在になることはまず間違いありません。

5.社労士の資格を取るメリットデメリット

この記事を読んでいる方の中には、もしかしたら社労士という資格そのものに対して興味を持っている方もいるかもしれません。この章で最後に、社労士の資格を取ることのメリットとデメリットについて紹介しておきます。

5-1.社労士の資格を取るメリット

まず社労士の資格を取るメリットとしては以下の通りです。

・社労士の資格を転職に活かせる

・社内で社労士の資格を活かして昇級を目指せる

・ブラック企業が一目で分かる

・資格を活かして独立開業もできる

社労士の場合では労働法を学び資格取得することになるため、コンプライアンスに則った労働環境の整備に貢献することができます。また社労士の資格を取得すれば労働法を無視したブラック企業が一目で分かるようになるので、自分が誤ってブラック企業に転職してしまうことを未然に防ぎやすくなります。

5-2.社労士の資格を取るデメリット

それに対するデメリットとしては以下の通りです。

・マークシート形式でも難易度が高い

・独立開業しても成功するとは限らない

・実務未経験だと役に立たないことがある

社労士は国家資格の中でもマークシート形式で受験できることから、「思ったよりも簡単そう」とたかを括ってしまう方もいるかもしれません。しかし実際にはそんなことはなく、社労士の資格試験の合格率は5%を切ることもザラにあります。いくらマークシート形式といえども、勉強を疎かにして合格できるほど簡単な内容ではないことは肝に銘じましょう。

また社労士の資格を活かして仕事がしたい方にとって、実務未経験だと転職の幅が狭まる可能性があることはあらかじめ知っておいた方がいいかもしれません。中小企業だと実務未経験でも採用枠がある場合もありますが、大手企業ともなると実務未経験ではなかなか採用してもらえないというのが実情です。

業種を問わず企業全体としてコンプライアンスを遵守した経営というのが求められる時代である以上、社労士の資格は今後とも需要の高い資格であることは言うまでもありません。ただし資格試験の難易度が高いこと、また実務未経験ではなかなか転職が難しいことがあり、軽い気持ちで取り組んで成功できるとは限らないのもまた事実です。

実際に社労士の資格を取って仕事に活かしたいという方は、将来有望な資格であることに変わりないため、自身のスキルアップも兼ねて真剣に取り組んでみることで新たな展望が開けるかもしれません。

6.その他の注意点とは

ここまで社労士の業務内容と助成金との関係性を中心にお話してきましたが、それ以外でもいくつか注意しておきたい点があります。この章でその他の注意点についてそれぞれ確認しておきましょう。

6-1.助成金が受給されるまでに時間がかかる

助成金の受給の諾否に関する通知については申請から約1〜2ヶ月後に届くため、今まで助成金を利用したことのない方であればお金はすぐに振り込まれるものと思いがちです。しかしそれは大きな勘違いであり、実際に助成金が振り込まれるのは通知が来てからさらに1年ないし1年半期間が空いてからとなります。
会社の資金繰りに余裕がある場合では問題ありませんが、資金が不足しているような会社では死活問題です。緊急時に対応できるようなものではありませんが、助成金の申請をするのであればその間のつなぎ資金確保のために、日本政策金融公庫や金融機関などからの融資の申請も同時に行っておくとより安心です。

6-2.社労士が対応できない助成金もある

雇用関係の助成金については社労士が専門的に扱うことができる一方で、厚生労働省以外が実施する国や地方自治体からの助成金、および経済産業省が実施する補助金について社労士は専門外となります。全ての助成金について社労士に依頼可能な訳ではないので、その点は注意する必要があります。

6-3.虚偽の申請を行ってはいけない

当然の話ではありますが、公的機関へと書類申請する時点で虚偽の内容で申し込んではいけません。仮に受給が決定した場合であっても、後から書類の不備や虚偽の内容が見つかった際には不正受給とみなされてしまいます。通常の場合では返還の義務はありませんが、不正受給ともなると返還の義務が発生します。無論会社としての信用度も失墜するので、いくら助成金が欲しいからといって書類の内容を偽ることはやめておきましょう。

まとめ

社労士に依頼すると報酬の支払いが別途発生しますが、もちろんその対価に見合うだけの仕事をしてくれます。また特定の社労士と顧問契約することで、経営者の方の仕事が減りより経営に集中できる状態へと持っていけます。
助成金の申請を真剣に検討しているのであれば、特に初回に限っては社労士を雇ってみてはいかがでしょうか。一度社労士の方に整備してもらえれば、後は該当する助成金を申請するだけで貰えるのでメリットは大きいと言えるでしょう。