企業を成長させるために運転および投資のための資金を調達しようにも、銀行の審査に落ちてしまい融資を受けられないというのはよくある話です。
融資担当者である銀行マンも自らの営業成績を上げるために融資先の企業を選別していますし、銀行にとってメリットがないとみなされた企業であれば審査を通過できないのも当然と言えば当然かもしれません。
そこで今回の記事では銀行の審査に落ちる原因とその対処法について解説します。銀行から信用されなければ融資を受けることもままならないので、銀行の審査をなかなか通過できない覚えのある方はこの記事を読んで審査を通過しやすくする方法について学んでみましょう。
1章 銀行の審査で落ちる原因とは
この章ではまず銀行の審査で落ちてしまう原因について見ていきましょう。銀行マンも営業担当者である以上、企業の経営者として嫌われてしまうと融資を受けたくても受けることができません。ここでは銀行マンに嫌われやすい原因について確認しておきましょう。
1ー1 急な融資を依頼する
銀行の審査には最低でも1ヶ月程度の時間がかかるため、今日もしくは明日の融資を依頼すれば銀行マンから嫌われてしまうのも頷ける話です。そうした急な融資を依頼したところで審査する時間がないため、即座に断られてしまいます。一般的な審査の流れとして以下のようなものがあると思えば、銀行マンのその判断も妥当であることがよく分かります。
①銀行マンが競合他社・業界の動向を調査したり企業の情報収集をする
②調査を終えた銀行マンが稟議書を提出する
③支店内で役職の人間が回覧する
④支店長がその稟議書を決裁する
⑤本部の融資部門が改めて審査する
⑥本部役員がそれを決裁する
こうした流れを踏むため数日以内での審査は難しく、担当者である銀行マンからすれば無理な融資を依頼する経営者のために有利な稟議書を用意するだけ無駄に思えてしまうのです。
また緊急で融資を依頼するとそれだけ資金繰りが苦しく経営状態が悪化しているのではないかと勘繰られてしまい、銀行からの信用は地に落ちてしまいます。
1ー2 融資担当者を飛ばす
融資を希望する経営者の中には銀行マン相手では話にならないと考え、銀行マンよりも更に上の上司や支店長に交渉しようとする方も実際にいます。ただ支店長ともなると銀行にとって利益につながる上位20社程度の情報しか把握していないため、それ以外の企業の経営者から話をされたところで融資を前向きに検討してくれることはまずありません。
融資担当者の銀行マンからすれば面目丸潰れですし、その上で上司や支店長から顧客管理がまるでなっていないと叱責されてしまうのです。そうなればその銀行からの融資を受けられる可能性がさらに低くなることは想像に難くありません。
1ー3 税理士や会計士に融資を依頼させる
企業の経営者でもお金の流れに疎い方はそれなりに多いですが、いくら分からないからといって第三者である税理士や会計士に融資の依頼をさせることはあまり良くありません。
自社の税理士や会計士であれば話は別ですが、銀行側としても融資するからには企業の代表者に話を聞きたいと考えています。そんな大事な席に経営者がいないと企業の経営にまるで責任感がないのかと疑われても仕方ありません。特に中小企業の場合であれば第三者の人間には任せず、経営者自らが融資を依頼することが信頼関係構築のための第一歩です。
1ー4 融資の使用目的を明確にしていない
銀行の融資を希望する以上、企業側としても明確な意図をもってそれだけの大金を運用することになるはずです。そうであるにもかかわらず融資を依頼するに足る使用目的が判然としなければ、銀行側としても融資を真剣に検討することはできません。
1ー5 企業の成長に貢献する使い道ではない
たとえ融資の使用目的が明確であったとしても、その使い道が企業の成長に貢献すると判断されない場合でも審査で落ちる可能性は高くなります。融資を運用するからには利益率を上げるための施策がそこにあり、安定的に利益を出し続けられる運用計画がなければ意味がありません。
1ー6 必要書類がきちんと揃っていない
銀行によっても審査に必要とする書類は微妙に異なりますが、必要書類に不備がある状態では銀行側としても適正な判断を下すことが難しくなります。また事前に用意するべき書類を伝えられていたにもかかわらず書類に不足があれば、話を聞く側の銀行マンとしてもこの経営者は信頼できないと判断せざるを得ません。
1ー7 融資を希望する金額が不明瞭
細かく運用計画を立てる経営者であればいくらの融資があればどういった成長を見込めるかを思い描くものですが、経営者の中には「借りられるだけ借りたい」という一言でその融資金額を濁す方もいると言います。経営者としては運用資金が多ければ多いほどいいと考えがちですが、融資担当者の銀行マンからすれば「無計画に融資を申し込んでいる」と悪い印象を与える結果にしかなりません。こうなれば審査してもらうこと自体が厳しくなることも想定されます。
こうした原因があると審査に落ちやすくなることはもちろんですが、原因が多少なりと分かっていれば対処のしようもあります。次章ではその対処法について解説します。
2章 銀行融資に落ちた際の対処法とは
前章で銀行の審査で落ちやすい原因を把握したところで、この章では次に審査を通過するための対処法について解説していきます。銀行マンもまた同じ人間である以上は、好印象の経営者として覚えてもらえるかどうかが審査通過の重要なカギとなります。銀行マンに好かれやすくなるための一例を紹介しておきます。
2ー1 銀行マンとの信頼関係を築く
銀行側も安定的に利益を上げ続けるために企業と長期的な関係を築きたいと考えています。そのため銀行側と信頼関係を築けるかどうかが重要であり、つまりは銀行の融資担当者である銀行マンに信頼してもらえるよう対応を改める必要があります。
経営者としての信頼を得るためには、例えば以下のような行動を心がけるといいかもしれません。
・銀行に融資を依頼する際には、十分な時間を用意しておく
・定期預金や投資信託でも、その銀行を利用する
・企業の経営状況の変化について、銀行側に随時報告する
こうした些細な部分から印象操作をしておくだけでも、銀行マンの印象はずいぶんと変わってきます。
2ー2 審査の必要書類は事前に集める
銀行からの融資を受けるためには事前に審査を通過する必要があることはもちろんですが、そのためには事前に用意しておかなければならない書類一式を頭に入れておくこともまた必要かもしれません。具体的には以下のような書類が必要とされます。
・損益計算書の過去3期分
・貸借対照表の過去3期分
・事業計画書
・資金繰り表、借り入れ表の一覧
・印税証明書
・借り入れ申込書
・印鑑証明書など
主にはこうした書類が必要なのですが、事業計画書では融資の使用目的を明記することになるため今後の展開に期待できるような内容に仕上げることが不可欠です。また書類の中身に誤字脱字が目立つようでは仕事ぶりを疑われかねないため、提出前にはきちんとその内容を確かめておく必要があります。
2ー3 融資の依頼時期を考慮する
基本的に銀行からの融資を依頼するタイミングは企業側が資金繰りに困った時というのが一般的な話ではありますが、あえて銀行側が融資を積極的に決裁しやすいタイミングに合わせるのも一つの方法です。
一年の中で具体的に挙げれば3月、9月、12月が銀行側にとって絶好のタイミングと言えるでしょう。例えば3月であれば年度末決算期、9月では中間決算の時期となるため銀行側もこの時期は営業利益を伸ばすために融資を積極的に行いたいと考える傾向にあります。また12月では銀行側というより企業側がボーナスの支払いや仕入れなどの影響で融資を受けたいと考えることが増えてくるので、結果として融資の依頼件数が他の月よりは多くなります。
こうした月に急きょ審査を受けようとしても用意するべき書類の段取りが整わず、結局は徒労に終わることは目に見えています。審査を通過しやすい時期に合わせるように数ヶ月前から綿密に準備を整えておくことが大切です。
2ー4 税金の支払いを滞納させない
企業を経営する上で疎かにしがちなこととして税金の支払いがありますが、この点を疎かにしていては銀行側から「支払い期日を守らない企業」というレッテルを貼られることにもなりかねません。そうなればもちろん審査に落ちる可能性が高くなるため、日頃から税金が滞納していないかどうかを注意しておく必要があります。
2ー5 書類の内容に一貫性を持たせる
これまでであれば融資の返済能力だけを問われていましたが、近年では融資で得た資金をどういった目的で利用するのかも重要視されるようになっています。例えば企業としての方針を明記する事業計画書の内容と融資後の運用資金の流れを記した資金繰り表の内容とがちぐはぐであれば、話を聞く側の銀行マンはほぼ確実に「主張に一貫性がない」という風に判断を下します。提出書類の時点で一貫性がなければ審査を通過することは困難になるので、書類の内容にはきちんと一貫性を持たせるように心がけましょう。
2ー6 事前に信用情報を確認しておく
最近ではCICやJBAなどで事前に信用情報について確認できるため、銀行の審査に通過できるかどうかの最終確認で利用することもおすすめです。こうした機関は銀行が企業へと融資する際に契約内容に無理がないか、返済能力が備わっているかを確認する意図から利用されるものです。また企業の負債がどういう状態になっているかを知る上でも利用できるので、知っておいて損はありません。
まとめ
銀行から融資を受けるためには審査が厳しいことはもちろんですが、銀行側から嫌われにくい企業としての振る舞いを心得れば審査に通過できる銀行もいずれ出てくる可能性があります。銀行のご機嫌伺いをしろという意味ではありませんが、企業なりの処世術として銀行に好かれる振る舞いは覚えておくとその後の信頼関係を築く上でも役に立つでしょう。
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